【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 レオンは静かに胸に手を当て、古の騎士のような優雅さで一礼する。

「後悔はさせません」

 そして、震える老将の手を、若き両手でしっかりと包み込んだ。

 温かい。確かな意志の温もりがガルバンの心に響く。

 レオンが顔を上げ、にっこりと微笑む。それは狂人の笑みではない。未来を見通した者だけが浮かべる、揺るぎない確信の笑顔――――。

 ガルバンは大きくうなずくと、素早くバルコニーに飛び出した。

 ガランガラン! ガランガラン!

 集合の鐘を大きく打ち鳴らす。

 中庭に兵士たちが集まってくるが――その顔は死人のように青白く、瞳には生気がない。槍を杖代わりにして、やっと立っている者もいる。

 覇気を失った三百の魂が、処刑を待つ囚人のように、そこに立ち尽くしていた。

 ガルバンが声を張り上げる。

 五十年の戦歴で鍛え上げられた、戦場に響き渡る声。

「聞け、諸君!」

 三百の兵士が、顔を上げる。

 死人のような目。

「我が軍に――」

 ガルバンは、一呼吸置いた。

 劇的な間。

 全員の注目が、完全に彼に集まる。

「【神】が味方した!」

 ざわめきが、波のように広がった。

 兵士たちは、ポカンと口を開けている。

 何を言い出したのか。

 司令官は、ついに狂ったのか。

 そんな困惑が、中庭を満たしていた。

 ガルバンはミーシャに目配せする。

 ミーシャは内心でニヤリと笑う。

(うふふ、出番ですわね)

 ミーシャは金髪をキラキラと夕日に輝かせながら、優雅な足取りで前に出た。

 白い僧衣が、風もないのにふわりと揺れる。

「皆さま!」

 その声は、まるで天上から響いてくるかのように澄んでいた。

「神は、我々に勝利を約束してくださいました!」

 瞬間――。

 ぶわぁぁぁぁ!

 黄金の神聖力が、太陽が降臨したかのように爆発的に解放された。

 眩い光が、中庭を包み込む。

 兵士たちは、思わず目を細めた。

 でも、その神々しさに目を逸らすことはできなかった。

「おぉぉぉ……!」
「ま、まさか……」
「す、凄い……聖女様だ……!」

 兵士たちの死んだ瞳に、光が宿り始める。

 それは、小さな火種だった。

 消えかけていた命の炎が、再び燃え始めている。

 ミーシャは、完璧な聖女の微笑みを浮かべた。

 慈愛に満ちた、聖母のような表情。

 誰も、それが演技だとは気づかない。

 ミーシャは右手を高々と掲げる。

「明朝、偉大なる神の炎によって――魔物たちは、全て灰と化すでしょう!」

 うぉぉぉぉぉ!

 歓声が、希望の雄叫びが、中庭を震わせた。

 それは、死刑囚に与えられた恩赦のようだった。

 絶望の淵に差し込む一筋の光に、全員が手を伸ばしている。

 ブラッドが前に出て、豪快に拳を天に突き上げた。

「おい! お前らラッキーだな! 神の御業をこの目で見られるなんて、一生に一度あるかないかだぜ!」

「そ、そうだ!」
「奇跡が見られる!」
「俺たちは選ばれたんだ!」

 死を待っていた兵士たちが、まるで祭りの前夜のように騒ぎ始める。

 ガルバンはミーシャの効果に驚きながらも安堵の息を漏らす。気持ちで負けてたら、どんな策も無意味なのだ。

「後ほど、神の力を最大限に活かす作戦を伝える! 各自、全力で遂行せよ!」

 ガルバンはそう叫ぶと大きくこぶしを突き出す。

「イェッサー!」
「イェッサー!」
「イェッサー!」

 三百の敬礼が、力強く揃った。

「我々は神とともにある!!」

「おぉぉぉぉ!」

 地響きのような雄たけび。もう、死人の眼ではない。戦士の眼だ。


 空は、不気味に赤く染まり始めていた。

 魔物の群れが巻き上げる土煙が、夕日を血の色に変えている。

 そんな死の砦に、小さな灯が宿った。

 それは崖っぷちで灯った狂気という名の希望。

 五人の若者が運んできた、最後の光――――。

 エリナが剣の柄を握る。「いよいよ、本番ね」

 ルナが震えながらも杖を抱く。「で、できるよね?」

 シエルが深呼吸する。「大丈夫、レオンを信じよう」

 ミーシャが眉をひそめながら本音を漏らす。「うふふ、面白い賭けですわね」

 レオンはそんな四人を静かに見つめる。

 【運命鑑定】が示す未来は、確かにある。

 でも、それを掴むためには――。

(僕たち全員が、限界を超えなければならないだろう)

 レオンはキュッと口を結んだ。

 向こうの稜線が、完全に黒く染まる。

 明日の朝、この砦は蹂躙されているか。

 それとも、伝説となっているか――――。

 賽は、投げられた。

 もう、後戻りはできない。