「おっ! いいですねぇ!」
レヴィアも珍しく嬉しそうな声を上げた。どうやら行きつけの店があるらしい。神的存在たちにも馴染みの店があるというのは、なんだか不思議な話だった。
「じゃ、レヴィア、僕らを乗せてひとッ飛びヨロシク!」
シアンはポンポンとレヴィアの肩を叩く。まるで友人にタクシーを頼むような気軽さで。
「は? わ、我が運ぶん……ですか?」
レヴィアは渋い顔で口を尖らせた。
「何よ? こいつらにもあんたの『本当の姿』見せておいた方がいいんじゃないの?」
シアンは意味ありげに微笑んだ。
「いや、でも、ここ、渋谷ですよ?」
レヴィアは困惑した声を上げた。
「いいじゃない渋谷だって。それにこいつらあんたのこと『ちんちくりんの女子中学生』だと思ってるよ? ねぇ?」
シアンはレオンに振った。その碧い瞳が悪戯っぽく輝いている。
「ち、ちんちくりんだとは思いませんが、可愛い女の子……じゃないんですか?」
レオンは困惑した。確かにレヴィアは小柄で幼い容姿をしている。ポテトチップスを抱えて転がり出てきた姿はどう見ても女子中学生だった。けれど「本当の姿」とは一体どういう意味なのだろうか?
「ふんっ! まぁ、そういうことなら……」
レヴィアは何かを決意したように頷いた。その緋色の瞳に矜持の炎が灯る。ちんちくりん呼ばわりなど許すまじ、とでも言いたげな表情だった。
そしてピョンと宙に飛び上がった。小さな身体がすうーーっと夜空に舞い上がる。まるで重力など存在しないかのように軽やかに。
刹那。
ズン!
レヴィアが爆発した。
轟音と共に爆煙が渋谷の上空に広がっていく。衝撃波がレオンたちの髪を激しく靡かせ、ウェディングドレスの裾が大きく翻った。
「うわぁ!」「えっ!?」「ば、爆発ぅ!?」
レオンたちは思わず身を縮めた。何が起きたのかまったく分からない。レヴィアはなぜ自爆などしてしまったのか――?
やがて夜風が灰色の幕を払い、その向こうに何かが見えてくる。巨大な何かが――――。
「な……っ!」
レオンは言葉を失った。
現れたのは巨大な影だった。旅客機ほどもある巨体が悠然と宙に浮かんでいる。それも漆黒の鱗に包まれた、恐ろしげな姿で。翼を優雅に広げ、長い首をもたげ、一行を見下ろしている。
龍だ。
伝説にのみ語られる神話の生き物。大陸では千年に一度現れるかどうかという究極の存在。そのつややかな漆黒の鱗は眼下に広がる夜景の煌めきを映し込んで、神秘的に輝いていた。まるで夜空そのものが形を持ったかのように。
「ま、まさか……これがレヴィア……さん?」
レオンは声を震わせながら呟いた。巨大な緋色の瞳がまるでルビーのように光を放っている。その色は紛れもなく、先ほどまでの少女と同じだった。
あのポテトチップスを抱えていた女子中学生。あのアニメを取り上げられそうになって必死にしがみついていた少女。その正体がこの神話の龍だったのだ。世界は本当に、何が起こるか分からない。
巨大な翼がゆったりと羽ばたき、その度に強風が吹き荒れた。
「ほわぁ!」「す、凄い……」
少女たちが恐怖と驚愕に目を見開いた。ウェディングドレスの裾が激しくはためく。恐ろしい。けれど同時に美しかった。圧倒的な存在感。神々しいまでの威厳。これが真の龍の姿なのだ。
ギョワァァァ!
腹の底に響く重低音の咆哮が渋谷一帯に響き渡った。ビルの窓ガラスがびりびりと震え、大気そのものがその威圧感に慄いている。街を歩く人々が一斉に空を見上げた。悲鳴を上げる者、立ち尽くす者、スマートフォンを構える者。渋谷の街が一瞬にして混乱に包まれた。
「我こそが真龍レヴィアである。小僧ども、分かったか! カッカッカ!」
その声は先ほどまでの少女の声ではなかった。大地を揺るがすような重厚な響き。先ほど「ちんちくりん」呼ばわりされた鬱憤をここぞとばかりに晴らしているようだった。
「可愛い奴だろ? きゃははは!」
シアンは楽しそうに笑った。そして指先をくるっと動かす。淡い光が圧倒されているレオンたち一行を包み込んだ。温かく、けれど逆らえない力。五人の身体がふわりと宙に浮かび上がった。
「うわぁ!」「ひょえぇぇ!」
いきなり無重力状態となって空中に巻き上げられる。足元から地面が消え、身体が勝手に上昇していく。そのまま龍の背中へと運ばれていった。
「そーれっと!」
シアンが軽やかに声を上げた。次の瞬間、五人は龍の背中に乱暴に放り投げられた。
「うわっとぉ!」「ひぃ!」「キャァッ!」「いやぁぁ!」「もぅっ!」
ウェディングドレスがふわりと広がり、純白の花びらが舞い散るように五人が龍の背に着地した。
「いててて……」
レオンはしりもちをついた。そして思わず漆黒の鱗に手をついて、その感触に目を見開いた。硬い。けれど不思議と温かい。まるで日向で温められた岩のような感触。その下で巨大な心臓が脈打っているのが分かる。ドクン、ドクンと。
生きている。この巨大な存在は確かに生きているのだ。
巨大な背中は十人以上が乗っても余裕がありそうだった。漆黒の鱗の間からところどころ鋭い突起が生え、それがまるで手すりのように乗り手を支えている。
レヴィアも珍しく嬉しそうな声を上げた。どうやら行きつけの店があるらしい。神的存在たちにも馴染みの店があるというのは、なんだか不思議な話だった。
「じゃ、レヴィア、僕らを乗せてひとッ飛びヨロシク!」
シアンはポンポンとレヴィアの肩を叩く。まるで友人にタクシーを頼むような気軽さで。
「は? わ、我が運ぶん……ですか?」
レヴィアは渋い顔で口を尖らせた。
「何よ? こいつらにもあんたの『本当の姿』見せておいた方がいいんじゃないの?」
シアンは意味ありげに微笑んだ。
「いや、でも、ここ、渋谷ですよ?」
レヴィアは困惑した声を上げた。
「いいじゃない渋谷だって。それにこいつらあんたのこと『ちんちくりんの女子中学生』だと思ってるよ? ねぇ?」
シアンはレオンに振った。その碧い瞳が悪戯っぽく輝いている。
「ち、ちんちくりんだとは思いませんが、可愛い女の子……じゃないんですか?」
レオンは困惑した。確かにレヴィアは小柄で幼い容姿をしている。ポテトチップスを抱えて転がり出てきた姿はどう見ても女子中学生だった。けれど「本当の姿」とは一体どういう意味なのだろうか?
「ふんっ! まぁ、そういうことなら……」
レヴィアは何かを決意したように頷いた。その緋色の瞳に矜持の炎が灯る。ちんちくりん呼ばわりなど許すまじ、とでも言いたげな表情だった。
そしてピョンと宙に飛び上がった。小さな身体がすうーーっと夜空に舞い上がる。まるで重力など存在しないかのように軽やかに。
刹那。
ズン!
レヴィアが爆発した。
轟音と共に爆煙が渋谷の上空に広がっていく。衝撃波がレオンたちの髪を激しく靡かせ、ウェディングドレスの裾が大きく翻った。
「うわぁ!」「えっ!?」「ば、爆発ぅ!?」
レオンたちは思わず身を縮めた。何が起きたのかまったく分からない。レヴィアはなぜ自爆などしてしまったのか――?
やがて夜風が灰色の幕を払い、その向こうに何かが見えてくる。巨大な何かが――――。
「な……っ!」
レオンは言葉を失った。
現れたのは巨大な影だった。旅客機ほどもある巨体が悠然と宙に浮かんでいる。それも漆黒の鱗に包まれた、恐ろしげな姿で。翼を優雅に広げ、長い首をもたげ、一行を見下ろしている。
龍だ。
伝説にのみ語られる神話の生き物。大陸では千年に一度現れるかどうかという究極の存在。そのつややかな漆黒の鱗は眼下に広がる夜景の煌めきを映し込んで、神秘的に輝いていた。まるで夜空そのものが形を持ったかのように。
「ま、まさか……これがレヴィア……さん?」
レオンは声を震わせながら呟いた。巨大な緋色の瞳がまるでルビーのように光を放っている。その色は紛れもなく、先ほどまでの少女と同じだった。
あのポテトチップスを抱えていた女子中学生。あのアニメを取り上げられそうになって必死にしがみついていた少女。その正体がこの神話の龍だったのだ。世界は本当に、何が起こるか分からない。
巨大な翼がゆったりと羽ばたき、その度に強風が吹き荒れた。
「ほわぁ!」「す、凄い……」
少女たちが恐怖と驚愕に目を見開いた。ウェディングドレスの裾が激しくはためく。恐ろしい。けれど同時に美しかった。圧倒的な存在感。神々しいまでの威厳。これが真の龍の姿なのだ。
ギョワァァァ!
腹の底に響く重低音の咆哮が渋谷一帯に響き渡った。ビルの窓ガラスがびりびりと震え、大気そのものがその威圧感に慄いている。街を歩く人々が一斉に空を見上げた。悲鳴を上げる者、立ち尽くす者、スマートフォンを構える者。渋谷の街が一瞬にして混乱に包まれた。
「我こそが真龍レヴィアである。小僧ども、分かったか! カッカッカ!」
その声は先ほどまでの少女の声ではなかった。大地を揺るがすような重厚な響き。先ほど「ちんちくりん」呼ばわりされた鬱憤をここぞとばかりに晴らしているようだった。
「可愛い奴だろ? きゃははは!」
シアンは楽しそうに笑った。そして指先をくるっと動かす。淡い光が圧倒されているレオンたち一行を包み込んだ。温かく、けれど逆らえない力。五人の身体がふわりと宙に浮かび上がった。
「うわぁ!」「ひょえぇぇ!」
いきなり無重力状態となって空中に巻き上げられる。足元から地面が消え、身体が勝手に上昇していく。そのまま龍の背中へと運ばれていった。
「そーれっと!」
シアンが軽やかに声を上げた。次の瞬間、五人は龍の背中に乱暴に放り投げられた。
「うわっとぉ!」「ひぃ!」「キャァッ!」「いやぁぁ!」「もぅっ!」
ウェディングドレスがふわりと広がり、純白の花びらが舞い散るように五人が龍の背に着地した。
「いててて……」
レオンはしりもちをついた。そして思わず漆黒の鱗に手をついて、その感触に目を見開いた。硬い。けれど不思議と温かい。まるで日向で温められた岩のような感触。その下で巨大な心臓が脈打っているのが分かる。ドクン、ドクンと。
生きている。この巨大な存在は確かに生きているのだ。
巨大な背中は十人以上が乗っても余裕がありそうだった。漆黒の鱗の間からところどころ鋭い突起が生え、それがまるで手すりのように乗り手を支えている。



