【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 いきなり風が、止んだ――。

 それは、あまりにも唐突だった。つい先ほどまで頬を焼いていた熱風が、まるで見えない手に(さえぎ)られたかのように、ピタリと動きを止めたのだ。音も、匂いも、空気の流れも、すべてが凍りついたかのように静止している。

「……え?」

 ルナが怪訝そうに首を傾げた。赤髪がもう風に靡かない。熱気が消えている。まるで世界そのものが息を止めてしまったかのような、不気味な静寂が辺りを支配していた。

 ズゥゥゥン……。腹の底が揺れる不気味な振動音が辺り一帯に響き始める。

 そして――焦土から立ち上っていた煙が、奇妙な動きを始めた。

「な、なに……これ……」

 ミーシャの声が震えた。煙が止まっている。いや、違う。逆流している。天に向かって立ち昇っていたはずの煙や陽炎が、まるで時間が巻き戻されているかのように、地表へと吸い込まれていく。ゆらゆらと揺れていた蜃気楼が地面に向かって流れ落ち、やがて大地に溶けるように消えていった。

「え……?」

 エリナが息を呑んだ。耐え難いほどの灼熱に包まれていた空間が、一瞬にして肌を刺すような冷徹な空気に変わっている。真冬の夜明けに放り出されたかのような、いやそれよりもさらに深い、魂まで凍てつくような冷気。

「さ、寒い……!」

 シエルが思わず自分の腕を抱いた。風も、熱も、煙も、音も、この空間からあらゆる動きが奪われていた。世界が息を呑んでいる。何かが来る。何か途方もないものが、この場所に近づいている。

「こ、これは……な、何だ……?」

 レオンが周囲を見渡したその時、脳内に無機質な電子音が響いた。

 ピロン!

「……!!」

 目の前に、冷酷な文字が浮かび上がる。

【運命創造用状況探索――失敗】
【上位存在に関する運命は創造できません】
【運命創造は安全のため機能を停止します】

 レオンは自分の目を疑った。五人の運命を懸けて手に入れた、神話級のスキル。それが無効化された。まるで子供の玩具を取り上げるかのように、あっさりと。

「じょ、上位存在!? いったい何が起こってるんだ!?」

 レオンは頭を抱えた。上位存在――人間を超えた、神に近しき者。そんな存在が今、この場所に近づいているというのか。ここから先はもはや人間の立ち入れる領域ではないのかもしれない。レオンの足が小刻みに震え始めた。

「レ、レオン……?」
「あなた……」

 少女たちが不安げにレオンの腕を取り、服の裾を掴んだ。四人とも恐怖に震えていた。

 直後、世界が揺れた。

 ビリビリと空気が不気味に振動している。それは地震などではなかった。空間そのものが震えているのだ。まるでこの世界の基盤(きばん)が軋んでいるかのように、現実の根底から何かが崩れようとしている。

「みんな、気をつけて……!」

 レオンは少女たちをかばうように前に出た。翠色の瞳が必死に周囲を見渡す。そして――見つけた。空に。クレーターの遥か上空に、音もなく一点の光が出現していた。

 それは星だった。青空に輝く、あり得ないはずの星。眩いほどの強烈な青い輝きが、天空に穿たれた穴のように煌めいている。神々しく、しかしどこか禍々しい光。

「な、なんだあれ……!」

 レオンの声がかすれた。心臓が激しく脈打ち、本能が警鐘を鳴らしている。逃げろ、と。あれに関わってはいけない、と。けれど足が動かなかった。圧倒的な威圧感に、身体が(すく)み上がっていた。

 その光の中心から、ゆらりと影が現れた。

 ゆっくりと、優雅に、まるで水の中を沈降していくように滑らかに降下してくる、一つの人影。青い髪の若い女性だった。ショートカットの髪がこの世のものとは思えない青い光を放ち、ゆらりと揺れるたびに星屑が散る。

 碧く輝く瞳は挑戦的で、どこか楽しげで、すべてを見透かすような深淵を湛えていた。纏っているのは銀色のボディスーツ。近未来的なデザインは鎧のようでもありドレスのようでもあり、この世のどんな衣装とも似ていなかった。

 そして彼女の周囲を、青いエーテルが渦巻いていた。上空の光点から青い光が絶えず溢れ出し、それは彼女の身体を包み込みながら、やがて巨大な川となって地上へと流れ落ちてきた。


       ◇


「う、嘘……」

 ミーシャが呆然と呟いた。

 青い光の川。天から地へと注がれる神秘の奔流。それは赤茶けた焦土に注がれる一筋の巨大な流れ。

 青いエーテルがクレーターへと流れ込み、広大なクレーターの底に青く輝く湖が生まれた。エーテルの湖。神秘の光を湛えたこの世ならざる水面。どこまでも澄み渡る深い青が、死の大地の中心に出現した奇跡の宝石のように輝いている。

「ほわぁ……」「おわぁ……」

 五人はただ見惚れることしかできなかった。言葉を失い、息をすることさえ忘れて、目の前で繰り広げられる神話の光景に圧倒されている。

 やがて青い髪の女性がゆったりと降りてきた。その優雅な動きに一行は息を呑む。そしてその足先がエーテルの湖面に触れた瞬間――。

 パキィィィン!

 澄んだ音が静寂を切り裂いた。接触点から爆発的に結晶化(けっしょうか)が始まり、青い光が波紋のように広がっていく。液体だったエーテルがみるみるうちに固体へと変化し、まるで氷のような青い結晶が湖面を覆い尽くしていく。