【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

「よいしょ! よいしょっとぉ!」

 ルナは元気よく、クレーターのように吹き飛んだ遺跡の崖をよじ登っていく。赤髪が風になびき、小さな身体が軽やかに岩肌を駆け上がっていった。

 さっきまでの恐怖など忘れたかのような、溌剌とした動き。それが彼女らしいと、レオンは思わず微笑んだ。

「これで全部解決よね。ふふっ」

 レオンにそう笑いかけると、ミーシャも嬉しそうにルナの後をついて登っていく。金髪のツーサイドアップが揺れ、白い僧衣の裾が風に(なび)いた。疲労の色は隠せないものの、その空色の瞳には安堵と喜びが満ちている。

「いやぁ、ギリギリなんとかなったよ……」

 レオンは深い安堵の吐息を漏らした。

 本当に、紙一重だった。【運命創造】が目覚めなければ、みんなと結婚できなければ、レベルアップが間に合わなければ……一歩間違えれば、全員があの地下牢で破滅していたかもしれない。けれど、みんなの力を合わせて、なんとか乗り越えることができた。

 この仲間たちとなら、どんな困難も乗り越えられる。

 そんな確信が、胸の中で静かに温かく灯っていた。

「いっち番のりぃ!」

 ようやくクレーターの崖を登り切ったルナが、得意げに叫んだ。

 しかし――――。

「ほへぇ!?」

 その景色を見た瞬間、ルナは素っ頓狂な声を上げた。

 緋色の瞳が、信じられないものを見たかのように大きく見開かれている。

 そこには――見渡す限りの、赤茶けた荒野が広がっていたのだ。

 つい数時間前まで、緑深い広大な森が広がっていたはずの場所。鳥のさえずりが響き、木漏れ日が揺れていた、美しい原生林。

 その面影は、どこにもなかった。

 ただ、ブスブスと煙が立ち昇る、広大な焦土が果てしなく続くばかり。

 大地は焼け焦げ、ひび割れ、まるで古の戦争の跡のように荒れ果てている。所々に巨大なクレーターが穿たれ、その縁からは今なお熱気が陽炎のように揺らめいていた。

 王都の方は地平線の彼方まで、赤と黒と灰色だけが支配する、死の世界。

 そして、吹き付けてくる熱風。

 まるで溶鉱炉の前に立っているかのような、肌を焼くような熱気に、ルナは思わず両手で顔を覆った。

「あっつ……! な、なによこれ……!」

「どうしたのよ? ……。ひぃぃ……」

 続いて登ってきたミーシャも、その光景を目にした瞬間、言葉を失った。いつもの余裕ある微笑みが凍りつき、空色の瞳が驚愕に見開かれる。

「えぇっ? こ、これは……」

「いったい何が……」

 エリナもシエルも、崖の上に立った途端、絶句した。

 二人とも、目の前に広がる終末のような光景を前に、ただ呆然と見つめることしかできなかった。

 風が、熱い。

 空気が、焦げ臭い。

 世界が、変わり果てていた。

「神話に出てくるクジラがね、魔物たちに降り注いだんだ」

 レオンは、静かに口を開いた。

 その声には、畏敬と、感謝と、そしてかすかな哀愁が混じっていた。

「ク、クジラって……?」

 ルナが、怪訝(けげん)そうに振り返る。

「創世の神話に出てくるクジラ? あれ、本当の話だったってこと?」

 ミーシャが、いぶかしげにレオンを見つめた。聡明な彼女の頭脳が、信じがたい可能性を必死に処理しようとしている。

「いやもう、全長数十キロくらいの……とてつもなく巨大な船だったよ……」

 レオンは、遠い目をしながら答えた。

 あの光景は、一生忘れないだろう。

 宇宙の彼方から飛来した、銀色の鱗を持つ巨大な構造物。神話の中でしか聞いたことのなかった、伝説の箱舟。

 それが、大気圏を突き破り、炎を纏いながら墜ちていく様は――まさに、神話そのものだった。

「す、数十キロ!? それが空から?」

 エリナは、その鋭い黒曜石の瞳を大きく見開いた。普段は感情を表に出さない彼女が、隠しきれない驚愕を露わにしている。

「それをボクたちが呼んだ……ってこと?」

 シエルは、眼前に広がる焦土を眺めながら、呆然と呟いた。月光を思わせる銀髪が、熱風に煽られて揺れている。

「そうだね」

 レオンは、静かに頷いた。

「世界を守りたいという、僕たちの願いに……クジラは応えてくれたんだ」

 五人の魂が呼び覚ました、古代の守護者。

 何千年もの眠りから目覚め、子孫たちを守るために、最後の使命を果たした伝説の船。

 その犠牲の上に、この勝利はある。

「ほわぁ……」

 ルナは、目の前に大きく広がる、ひときわ巨大なクレーターを眺めた。

 直径数キロはあろうかという、途方もない穴。その縁からは、まだ熱気が陽炎のように立ち昇っている。

「信じらんないケド……これを見せられちゃうとねぇ……」

 少女は、大きく息を吐いた。

 その緋色の瞳には、驚愕と、畏怖と、そしてどこか誇らしげな光が宿っていた。

 自分たちが、これを成し遂げたのだ。

 五人の絆が、神話を現実に変えたのだ。

 熱風が、五人の髪を(なび)かせる。

 焦土の向こうには、まだいくつもの茸雲が立ち昇っている。

 けれど、その破壊の光景は、同時に希望の証でもあった。

 十万の魔物は滅び、王都は救われた。

 人々の笑顔は、守られたのだ。

 五人は、しばらくの間、言葉もなく焦土を見つめていた。