【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 レオンは、幼い頃に聞いた神話を思い出していた。

『光の日、一族はクジラに乗り、この地に降り立った――』

 それは、子供の頃に寝物語(ねものがたり)として聞かされた、おとぎ話。母の温かな声で語られた、遠い遠い昔の物語。暖炉の火が爆ぜる音を聞きながら、毛布に包まって聞いた、あの優しい時間。

 レオンは、それをただの作り話だと思っていた。子供を寝かしつけるための、ありふれたおとぎ話。空想の産物。夢の中だけに存在する、幻想。

 けれど――。

「これじゃん……。おはぁ……」

 あれは、本当だったのだ。

 神話は、真実だった。

 そう、きっとあのクジラに乗って、ご先祖様たちはこの星へとやってきたのだ。何百年……いや、何千年も前に、遠い星から新たな故郷を求めて。広大な宇宙の闇を渡り、無限の星々の間を泳ぎ、この小さな青い宝石のような惑星を見つけて。そこに根を下ろし、命を繋ぎ、今のレオンたちへと血脈を伝えてきた。

 そして今――忘れ去られた頃に、クジラは再び目覚めた。

 五人の魂に呼ばれ、運命に導かれて。末裔たちを守るために、最後の使命を果たすために。何千年もの眠りから覚め、再びこの空を泳いでいる。

 轟音が響いた。

 凄まじい轟音が、空間そのものを震わせた。衝撃波が波紋のように広がり、雲を引き裂き、大気を揺らす。世界そのものが悲鳴を上げているかのような、原初の音。創世の瞬間に鳴り響いたであろう、神々の咆哮。

 巨大なクジラが、レオンのそばを通り過ぎていく。

 その巨体は、圧倒的だった。威圧感という言葉では到底表現しきれない、神々しさすら感じる途方もない存在感。数十キロメートルもの金属の塊が、真っ逆さまに大陸へと墜ちていく。まさに神話の世界だった。

 大気圏突入の衝撃はすさまじい。大気が燃え上がり、閃光が(ほとばし)る。天と地を結ぶ炎の柱のように、クジラの軌跡がまばゆく輝いている。何千年もの眠りから覚めた古代の船が、最後の使命を果たそうとしている。長い長い旅路の果てに、ようやく辿り着いた終着点。遥かな星々を巡り、無限の虚空を漂い、そして今――故郷の空に、還ってきた。

 やがて、クジラの表面に大きな亀裂が入る――。

 ミシミシと、金属が軋む音が響く。何千年もの歳月に耐えてきた装甲が、大気圏突入の熱と圧力に悲鳴を上げている。それでもクジラは止まらない。使命を果たすまで、止まれない。

 そして――割れた。ものすごい衝撃音が辺りに響き渡る。

 巨体が二つに裂け、三つに砕け、無数の破片となって散っていく。グルグルと回転しながらさらに分解され、青空に無数の流星を撒き散らしながら墜ちていく。まるで自らの身体を(にえ)として捧げるかのように。末裔たちを守るために、自らを犠牲にしているかのように。

 破片たちは、それぞれが閃光を放ちながら壮大な光のショーを演じていた。盛大な流星群のようでありながら、それよりも遥かに巨大で、遥かに破壊的な、終焉の光。神の裁きのごとき運命の鉄槌。古代の遺産が、今を生きる者たちのために命を散らしている。

 レオンはその壮大な光景を眺めながら、冷や汗をかいた。

「これ……マズくないか……?」

 あの膨大なエネルギーの塊が地面に激突したら、どれほどの破壊をもたらすのか。王都は大丈夫なのか。人々は巻き込まれないのか。不安が胸を(よぎ)る。もし守ろうとした人々を、自分の手で殺してしまったら。救おうとした命を、自分の力で奪ってしまったら。それは、取り返しのつかない罪になる。

 レオンは手に汗を握った。

 けれど――その心配は、杞憂だった。

 破片たちは、まるで意志を持っているかのように、魔物の軍勢だけを狙って墜ちていく。王都には一片たりとも向かわない。農村にも、街道にも、人々の暮らす場所には決して落ちない。邪悪なる者たちだけを、正確に捉えて、狙い撃ちにしていく。

 これが【運命創造】の力なのだと、レオンは理解した。運命そのものを書き換え、未来を望む形に創り変える力。確定していたはずの破壊の軌道を、守るべきものを避けるように書き換える力。

 やがて――最初の破片が、地面に激突した。

 閃光。

 世界が、白い輝きに染まる。まるで太陽がもう一つ生まれたかのような、圧倒的な光。そして――大爆発。巨大なキノコ雲が灼熱を放ちながら天へと吹き上がった。神話に語られる天変地異のような、圧倒的な破壊力。それは終末を告げる審判の炎のようにすら見えた。

 次々と、破片が墜ちていく。次々と、爆発が起こる。

 ドォォォン! ドォォォン! ドォォォン!

 連続する爆発音が、大気を震わせ、大地を揺るがす。それはまるで神々の怒りが地上に降り注いでいるかのようだった。天からの裁き。世界の終わりを告げる、最後の審判。

 魔物たちの大軍が、完全に殲滅されていく。

「マジかよ……」

 レオンは呆然と呟いた。声が震えている。これが、自分たちが起こした奇跡。五人の命を懸けた、起死回生の一撃。五人の寿命二百年分を代償にした、世界を救う力。