【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 レオンの意識は、急に高度を上げていく。まるで見えない糸に引かれるように、天へ天へと昇っていく。

 魔物の軍勢が、小さくなっていった。あれほど恐ろしかった黒い波が、蟻の行列のように見えてくる。森が緑の絨毯のように見え、川が銀色のリボンのように蛇行し、山々が眼下に広がっていく。

 雪を頂いた峰々が白い宝冠のように輝き、その(ふもと)には円形の構造物が見えてきた。

 王都だ。

 あの巨大な城壁も、こんな上空から見るとまるでおもちゃのように小さく見える。けれどあそこには何十万もの人々が暮らしている。笑い、泣き、愛し合い、時に憎み合いながら、それでも懸命に生きている人々。その全てがあの小さな円の中に詰まっている。その全てを、守らなければならない。絶対に。何があっても。

 さらに、さらに高度を上げていく。

 空が、徐々に変わっていった。青かった空が濃い青になり、やがて紺色になり、そして――黒くなっていく。まるで昼から夜へと時間が移り変わっていくかのように。

 いや、違う。これは空の色ではない。空を超えた、その先の色だ。

 地平線が、弧を描き始めた。まるで、世界が丸いかのように。

「な、なんだこれは……」

 レオンは驚愕した。

 今まで自分の世界は、平らな大陸がどこまでも広がっているというイメージしかなかった。地図に描かれた通りの、平面の世界。けれどこんな上空まで来ると、それが球面になっていることが分かる。世界は、丸かった。巨大な球体の上に大陸があり、海があり、人々が生きている。

 そして青空の上には――漆黒の暗闇が広がっていた。永遠に続くかのような、深い深い闇。よく見れば無数の星が点々と光っているのが見える。宝石を散りばめたような、無限の星々。

 美しい。恐ろしいほど、美しい。言葉では表現しきれない、圧倒的な美がそこにあった。

 レオンは、ここで初めて理解する。自分たちの世界は巨大な球体の上にあり、その球体は広大な暗闇――宇宙空間に浮かんでいるのだと。無限の闇の中にぽつんと浮かぶ、小さな青い宝石。それが、自分たちの世界の正体だった。

 レオンはしばしその壮大な光景に見入る。息をすることさえ忘れて、言葉を失うほどの圧倒的な景観。

 人間の営みがあまりにも小さく見える。戦争も、憎しみも、(いさか)いも、全てがこの宇宙の前では塵のように小さい。権力を求める者も、富を求める者も、復讐に燃える者も、皆この小さな球体の上で必死にもがいているだけ。

「愚かな……」

 イザベラもこの景色を見たら――答えは違っていたかもしれない。

 一瞬そう思って、レオンは首を振った。もうそんな悠長なことを言っている場合ではないのだ。

 あの小さな青い球体の上で、懸命に生きている命たち。限られた時間の中で精一杯輝こうとしている魂たち。その全ては、かけがえのないもの。

 守りたい。心の底から、そう思った。あの小さな世界を。あの愛すべき人々を。そして――四人の妻たちを。

 その時だった。

 上の方で、何かが煌めく。

 星ではない。それは徐々に大きくなってくる、他の星々とは明らかに違う異質な輝きだった。

「な、なんだ……あれは……?」

 レオンはその物体を凝視した。目を()らすと、やがてその物体が鈍く赤く光り出すのが見えた。まるで鉄を熱した時のような不吉な赤。灼熱の輝き。地獄の業火を思わせる禍々しい光。その不気味な様子に、レオンは本能的な畏怖を覚えた。背筋が凍りつく。

 きっと、これが【運命創造】につながる何かなのだろう。直感でそう感じた。五人の魂が呼び寄せた、運命の使者。けれど一体それが何なのか、まだ分からない。

 物体はどんどんと大きくなり、閃光を放ち始める。大気との摩擦で赤熱しているのだ。まるで天から降り注ぐ炎のように、神話に語られる天罰の火のように。

 かなり近づいてきて、その形がはっきりと見えるようになってきた時――レオンは息を呑んだ。

「クジラ……? へっ!?」

 信じられないという表情で、レオンは叫んだ。

 そう、それは巨大なクジラだった。全長は数十キロはあろうか。想像を絶する大きさ。山よりも大きい。人間が作ったどんな建造物よりも、遥かに巨大。

 けれど、それは生物ではなかった。

 銀色の(うろこ)のような装甲が、赤熱した光の中で鈍く輝いている。金属で作られた、巨大な構造物。それは――クジラの形をした宇宙船だった。

 神話の中でしか聞いたことのない、伝説の存在。古代文明が残したという、天を泳ぐ箱舟。おとぎ話の中だけに存在すると思っていた幻の遺物が、今まさに炎を纏いながらレオンの眼前に迫ってきている。

 その巨体が大気圏に突入し、摩擦熱で燃え上がりながら降下していく様は、まさに神話そのものだった。天から降り注ぐ、終焉の使者。世界の理を書き換える、運命の鉄槌。

 レオンは理解した。

 これが、【運命創造】の答えなのだと。

 五人の魂が呼び寄せた、この世界を救う奇跡。遥か古代、宇宙を旅していた箱舟が、今この瞬間、レオンたちの願いに応えて目覚めたのだ。

 巨大なクジラが、炎の尾を引きながら落ちていく。その軌道の先には――十万の魔物の軍勢が蠢いている。

 世界の運命が、今まさに書き換えられようとしていた。