「——っ! うぅ……」
「アルトっ!?」
出征部隊が出発してすぐ、俺は強い眩暈に見舞われた。
理由は単純。
一つの脳で二人分の情報を整理しなくてはならないからである。
特に分身側でも話しながら、本体側でも別のことを話すと言うのがかなり厳しい。
すぐに自分が何を言っているのかが分からなくなってしまう。
そしてそれを理解しようと必死に脳を回転させた結果、座ってすらいられないほどの強い眩暈に襲われ、今は意識を分身の方にのみ集中して、本体の俺は寝室のベッドに横になっている。
いつかうまく扱えるようになりたいところだが、今日の所はおとなしく安全な場所から分身を見守ることに留めることとした。
いや、半強制的にロロにそうさせられてるという方が正しいかもしれないが、まあ、良いだろう。
目を閉じて、分身の方へ意識を集中させる。
◇◇◇
——分身側視点——
世界樹の森の雰囲気は変わらない。
巨木、ロロに言わせれば枝な木々の端から、光源不明の灯りが差し込み、幻想的な雰囲気を醸し出している。
だが、今日の森はそんな雰囲気は変わらずとも、何だか寒いような気がしていた。
なんて、俺が森の気候を気にしていれば、
「アルト様、本当にご無理はされていませんか?」
俺の体調をロロに負けんばかりに気にかけてくれるクルセド。
しかし……
「クルセド、あなたが第一騎士団団長で、アルト様の護衛だから気に掛けると言うのは理解できます。ですが、今は救出任務中。アルト様自ら行かれると行って、この手段を取られたのだからこれ以上は口を挟むべきではないわ」
「トワレの言う通りね。集中なさい」
第三騎士団の団長であるトワレと第二騎士団の団長リスタからそう詰められていた。
今回同行させている騎士団のうち、第一騎士団は普段は俺の護衛を務めている騎士団で団長は『鋼鉄の盾』のクルセド。
他にも守るのが得意なスキルの所持者で構成されている。
第二騎士団は『魔術師』のリスタを始めとした、魔術、遠隔攻撃の得意な舞台で構成されており、第三騎士団は『雷槌』と言う、母さんの『氷結の刃』のような属性武器の上位スキルを持つトワレの下、雷の属性武器スキル持ちで固められていた。
騎士団結成の際に、俺は全ての騎士団の戦力が均等になるように振り分けようと思ったのだが、騎士団の出身者や周りから、目標をニーズヘッグとするならば、同種類の力を持つ者たちで騎士団を作り、連携や対応力を高めて行った方がいいのではないかと言う意見が上がり、現在の構成となった。
確かに、ニーズヘッグとの戦闘は間違いなく総力戦になる。
その際に必要なのは器用な立ち回りではなく、有効な一撃となるだろう、と俺も納得している。
「クルセド、心配には感謝する。だが、この任務では俺以上に第四騎士団を優先せよ。確かに俺は俺の外見をしているが、これはあくまで分身なのだ。ロロによれば、感覚の共有こそ為されているが、ダメージなどが直接本体に届くことはないそうだ。今のお前たち第一騎士団の任は俺の護衛ではなく第四騎士団の救出であることを胸に刻め」
二人の言葉に乗るようにして、俺もクルセドを言い含める。
クルセドは忠誠高いが、何よりも俺を優先し過ぎようとするところが玉に瑕だった。
「はっ、ですが、御身をないがしろにすることは、例え分身であろうとできません。……とは言え、ご命令にも逆らいませんので、どちらも優先して守らせていただきます」
「どちらも優先って……それじゃ優先になってないぞクルセド」
いや、玉に瑕と言うより、玉ではなくその瑕こそクルセドの本体と言うか本文なのかもしれない。
リスタとトワレもこんな調子のクルセドには呆れたのか、それぞれの騎士団の方へと離れて行ってしまった。
と、そんな話をしながらも、足早に進む行軍は出発から数時間ほどで第四騎士団が調査に来ていたであろう場所までやって来ていた。
「予定地はこの辺りね」
地図を持ったリスタがそう呟き、行軍停止の合図を送る。
そうして行軍を一時停止した部隊から離れ、俺の元に集まった騎士団長が作戦会議を始めた。
「一先ず、辺りに何か痕跡が残っていないかを探しましょうか」
「そうだな。アルト様の護衛を数人残して、騎士団ごとに辺りを探索しよう」
「では、護衛には私が残るわ。クルセド、あなたの騎士団から数人借りるわね」
「ああ、分かった」
「では、第三騎士団は一足先に調査を開始します」
ロロの負担が大きいという言葉のおかげだろうか?
俺の指示を待つでもなく、三人はすぐに作戦を立て、実行に移す。
俺としては、自身も調査に加わりたかったのだが、ここでゴネて時間を無駄にするわけにはいかない。
こうしてあっという間に、リスタと第一騎士団の数名を残し、痕跡の調査が開始された。
残された俺はすることもないため、仕方なく辺りの様子をゆっくりと観察してみたのだが……やはり、森の雰囲気に変わりはなくとも、どこか寒いような、怖気が走って寒気がするとかではなく、物理的に、温度的に寒い気がした。
「アルト様、少し良いかしら?」
すると、神妙な面持ちで、俺の護衛に残ってくれたリスタが話しかけてくる。
「ああ、どうかしたか?」
振り返るとこちらに耳打ちするように身体をかがめながら、リスタは小声で言った。
「もしかしたら気が付いているかもしれないのだけれど、この辺りで、氷系のスキルが使われた気配があるわ」
「——!」
その言葉に俺は妙な納得感を覚える。
この微妙に感じられる気温の低さはそう言う理由だったのか、と。
だが、同時に不可思議な点もあった。
第四騎士団は第三騎士団と同じように同属性、火に関係するスキル所持者によって固められている。
氷系スキルを使えるはずはない。
「これはただの憶測だけれど……」
思案中の俺の横でリスタが呟く。
「ここに、私たち以外の勢力がいるんじゃないかしら?」
「……そう、だな」
リスタの発言とほぼ同タイミングでその結論に辿り着き、何とか取り乱さずに済む。
だが、俺たち以外にスキルを使える存在がいると言うのはあまりにも危険な情報だ。
リスタが声を潜めて報告してくれてよかった。
魔獣の使う魔法と、人間の扱うスキルには微妙な違いがある。
傍目には分かりにくいが、『魔術師』のスキル、スキルの中では魔法に似た力を持つリスタだからこそ分かったのだろう。
この辺りで使われたのが、魔法ではなくスキルであると。
そしてリスタはほぼ確信しているのだろう。
ここに俺たち以外の勢力がいることを。
それに、その勢力はかなりの力を持っているということも同時に確信している。
つまりそれは、これから起こる可能性のある戦闘が、魔獣との乱戦ではなく、指揮の取れた軍隊との戦いになる可能性があるということ。
スキルが使われた跡からでは、相手の規模などを窺うことは出来ない。
だが、もし、その勢力に第四騎士団がやられていた場合その力はかなりのもので間違いない。
「——アルト様!」
森の奥を睨むように見つめていると、北東方向へ調査に向かっていた第三騎士団のトワレが駆け足でこちらへ戻って来る。
「何か見つかったか?」
「はい。こちら、なのですが……」
トワレはそう言いながら、手の中に握った何かを見せてくれる。
「これは……」
それは、水晶のように濁りのない、綺麗に透き通った氷の欠片だった。
それを見た瞬間、俺とリスタは頷き合う。
『世界樹権能:指揮形態』
俺はすぐに指揮棒を樹具化させ、調査中の全員に連絡を取る。
『調査中の騎士団各位、一度集合せよ』
「アルト様……」
指揮棒を振った俺に、トワレがまだ何かを言いたそうに名前を呼ぶ。
「なんだ?」
「この他にも、巨木に焦げたような跡も見つかっております」
「……そうか」
間違いない。
第四騎士団は魔獣ではなく、何かしらの勢力との戦闘で敗北し、連れ去られている。
この氷の欠片と巨木に残った焦げ跡がその証拠だ。
足音がこちらへ集まってくるのが聞こえる。
さて、ここからが本番だ。
敵対勢力がどういう者たちか分からない以上、慎重に、だが、第四騎士団のことを考えれば、なるべく早く救助しなければならない。
相手が魔獣ではない以上、話が通じれば良いのだが……。
皆が集まって来るのを待つ間に、念のため、ロロに確認をしておこう。
以前からこの世界樹の元に俺たち以外の勢力がいたのかについて……。
◇◇◇
——アルト本体視点——
「ロロ」
俺はベッドから身体を起こし、ロロを呼ぶ。
「どうかしましたかっ!?」
すると、すぐ隣で俺の様子を見守ってくれていたらしいロロが、急に起き上がった俺に驚きと心配の表情を浮かべながらも、駆け寄って来た。
「いや、俺に何かがあったわけじゃないよ。でも、一つ気になることが起きたんだ。ロロ、この俺たちが今いる世界に、俺たち以外の人間やスキルを使える存在っている?」
「スキル、ですか? ここにいるのは世界樹になった方と害の少ない魔獣のみのはずです。ニーズヘッグの例があるので断言はできませんが、アルトの声に応え、目覚めたイグドラシルの民以外にスキルを使える方がいるとは……」
思えません、と言う前にロロは言葉を止める。
その表情はまさか、と言う色をしていた。
その顔に俺は一つの可能性を見た。
「ロロは言ってたよね。ここはアスガルドとは違う層の世界なんだって。そして、そんな世界はアスガルド以外にも存在しているって」
「……はい」
疑問が、段々と答えの形をとっていく。
「もしかしたら、『世界樹の王』は俺だけでも、他の世界から世界樹の呼びかけに応えて、その世界で世界樹化した人を起こせる存在が他にもいる可能性はある?」
「そう、ですね。その可能性はあり得ます。ごめんなさいアルト。そんなことを考えたこともありませんでした」
「いや、ロロに謝ってもらうことじゃないよ。それに、同じ世界樹の呼びかけに応えた存在なら、もしかしたら対話が出来る可能性だってあるかもしれない」
そうだ。
世界樹の恩恵に預かる国、世界は一つではないんだ。
俺と似たような力を持つ存在が、この世界樹の危機に呼ばれていても何もおかしくはない。
だが、ロロとの会話のおかげで希望が見えた。
完全な敵対勢力ならば、戦闘は免れなかったが、もし目的が同じならば、対話をして協力することだってできるかもしれない。
もちろん、この存在が第四騎士団を倒したならば、相応の責任は支払わせなければならないが、遭遇戦でこちらから攻撃した可能性だってある。
落ち着け、俺。
ここからは判断を間違う訳にはいかない。
一度、大きく深呼吸をして、ロロを見る。
「じゃあ、ロロ、俺はまた分身の方に集中するから、俺の身体を任せるよ」
「はい、くれぐれもお気を付けて、アルト」
◇◇◇
——分身視点——
再び意識を分身側へと集中させれば、既に三騎士団は集合し、整列も完了していた。
「第一騎士団、全員集合いたしました!」
目の前でクルセドが敬礼をしながら、そう報告してくれる。
良かった。
どうやら、皆を待たせるようなことにはなっていないらしい。
「分かった」
クルセドを下がらせ、一歩前に出る。
「騎士団員各位、調査ご苦労だった。調査の結果だが、第四騎士団は我々とは別の勢力に連れ去られている可能性が高いことが判明した!」
そして俺は、トワレの持ってきた証拠やリスタ、ロロとの話で導き出した結論を迷うことなく伝える。
「ロロに確認を取った結果、ここには俺たち以外の人間も同じように集まっている可能性があるということだった。おそらく第四騎士団はその勢力と接触し、遭遇戦になったのであろう」
俺の言葉を聞いて、その勢力へ憤る騎士も見える。
「しかし、遭遇戦であった可能性がある以上、相手側のみに責を押し付けることはまだ出来ない。これから我々はその勢力の痕跡を辿るが、良いか? もし、急な遭遇があったとしても、絶対にこちらから攻撃することは許さん! もし攻撃を受けても、第一騎士団を中心に防御に徹し、対話を試みる。憤る気持ちも分かるが、俺たちの今回の目的は第四騎士団の救出、そして最終目標はニーズヘッグの討伐だ。余計な憂いを増やす必要はない」
「「「「「はっ」」」」」
多少の反発も覚悟しての言葉。
だが、言い終えてみれば、先ほど憤る姿勢を見せていた騎士も、敬礼で返してくれている。
よし、皆、落ち着いているな。
「では、これから再び行軍を開始する。隊列を整えよ!」
俺の指示に騎士たちは迅速に動き出す。
そうして俺たちはトワレたちが見つけて来た戦闘痕の残る方向へ再び、行動を開始した。
◇◇◇
しばらく進めば、段々肌に感じる寒さが強くなっていく。
目に映る景色も心なしか青白くなっているようで、その色は先に見た氷の欠片を思わせた。
すると、先ほどより慎重な行軍が完全に足を止めた。
そして、前方から一人の騎士が俺のいる部隊の中心まで駆け戻って来る。
「報告! 前方に巨大な遺跡のような建物を確認しました!」
遺跡? その勢力の作った建物だろうか?
「分かった。俺も確認したい。行軍はこのまま一時停止、クルセド、リスタ、トワレ。ついて来い」
「「「はっ」」」
報告に来た騎士について隊列の最前線まで歩いて行くと、木々の隙間から確かに何かの遺跡のような物が見える。
「あれは……なんでしょうか?」
トワレがぼやくが、その言葉には俺も納得だった。
今俺たちの目に見えている遺跡のような物は、遠目には確かに遺跡に見えるが、よく目を凝らしてみると、乱雑に折り倒したこの辺りの巨木を気持ち程度に組み合わせて作られた風よけ? のような建物にしか見えない。
資材化などの加工の跡もなく、本当にただ、折り倒した巨木で影を作っているだけの巨大な建物。
あんな建物では、落ち着いて休息をとることも難しいだろうに……と言うか、一体どうやってくみ上げたのだろうか?
いくら『怪力』のようなスキル所持者がいても……物理的に届かない距離には積み上げることは出来ないだろうに……。
と、興味深くその遺跡を観察していた時だった。
——ズシン!
と、大地が揺れる。
「なん……だっ!?」
だが、急に起こった地震に驚く暇もないうちに、俺たちの視界に衝撃の存在が映り込んだ。
その体躯は遠目でもはっきりとわかるほどに巨大。
皮膚はこの辺りの景色のように青白く、一歩歩くごとにこちらまで揺れが伝わってくる。
視界の先、遺跡の影から現れたのは、おとぎ話にしか聞いたことのない巨人だった。
「——っ! アルト様!」
そんな巨人に目を奪われていると、俺の視界を遮るようにクルセドが前に立ち『鋼鉄の盾』を展開する。
——ガゴンッ!
と、鈍い接触音がしたかと思えば、
「……グゥッ」
羊たちの突進を物ともしていなかったクルセドが苦悶の声を上げた。
「クルセド! 攻撃か……」
クルセドの足元には砕けた氷の欠片が広がる。
間違いない。
あの巨人たちが、第四騎士団を連れ去った勢力だ。
「全軍、防御態勢! クルセドを先頭に、俺たちはもう少し距離を詰めるぞ!」
苦しそうなクルセドには悪いが、まだこの距離では第二騎士団の攻撃は届いても俺の声は届かない。
俺たちの目的は戦闘ではない。
そうアピールするためにも、もう少し物理的に近づく必要があった。
「クルセド、いけるか?」
「無論です! お任せを!」
力強く頷いて見せるクルセドに先頭を任せ、俺たちはゆっくりと青い巨人へと近づいて行く。
「クルセド、次、来るぞ!」
クルセドと盾の真後ろに隠れる俺には見えないが、俺の両脇を固めるトワレとリスタには次の攻撃が見えたのだろう。
どちらからともなくそう叫び、クルセドが少しずつ進む足を止め、攻撃に備える。
だが、次の瞬間——
「戦士ヨ! 攻撃止メ!!」
空間の狭い洞窟内で叫んだかのような大声が辺りに木霊し、来るはずだった衝撃はこちらに訪れなかった。
「アルト様」
三人が俺を振り返る。
どうやら三人とも、今の声に相手に明確な敵意がないと判断したらしい。
俺はそんな三人の判断を信じ、クルセドと盾の影から一歩進み出た。
すると、恐らく先の命令を出したであろう巨人が、真っすぐにこちらを見ていた。
俺が五人並んでようやく目線が合うほどの巨体の迫力は、今までに見て来た何よりも凄まじい。
だが、俺が気圧されるわけにはいかない。
「攻撃停止に感謝する! 我は世界樹の国イグドラシルが王にして、この世界樹の王、アルト・アンドレアルだ!」
敵意がないことをアピールするために両手を広げながら、大声で名乗りを上げる。
すると、それを聞き取った巨人も同じく名乗りを上げた。
「コチラモ、突然ノ攻撃ヲ詫ビサセテモラウ。 俺ハ、ヨトゥンヘイムノ大戦士ニシテ世界樹ノ戦士、霜ノ巨人族ノ、グラディオラスダ!」
世界樹の戦士……やはり、俺と同じようなスキルの所持者のようだ。
「戦士グラディオラスよ! こちらに我が騎士団は来ていないだろうか? 我らは消息を絶った仲間の救出にここまで来たのだが……」
相手も名乗りを上げてくれた以上、余計な小手先の会話は不要だと、俺はいきなり用件を切り出す。
「アア、ソノ者タチナラバ……」
グラディオラスは一度後ろを振り返り、何か合図を出す。
するとすぐに、グラディオラスの半分ほどの体躯の巨人が何かを抱えるようにして、建物の影から顔を出した。
「オソラク、コノ者タチダロウ。スマナイ、戦士タチガ炎ニ反応シ、怪我ヲ負ワセテシマッタ」
クルセドと俺の丁度二人分ほどの体躯の巨人が、こちらへ進み出て、俺の前に十七名の騎士たちを並べる。
それは間違いなく、第四騎士団の全員だった。
「リスタ、トワレ」
「「はっ」」
俺が指示を出せば、二人はすぐに十七人の心肺機能を確かめ、
「全員休眠状態に入っているものと思われます」
「以前のアルト様と同じ症状ね。それ以上に重症かどうかは、ここでは判断が難しいでしょう」
そう報告してきた。
「そうか……」
だが、見た所大きな外傷は負っておらず、このまま数百年目覚めないという結果にはならなそうだった。
「全員を確認した。だが、これからのためにも何があったのか、詳細な話を聞きたい。ここは一つ、話し合いの席を設けては貰えないだろうか?」
俺はグラディオラスに向けて、そう要求する。
こちらに責があったとしても、現状、一方的に被害を被っているのはこちら。
巨人側としても、断るわけにはいかないだろう。
「……ワカッタ。イグドラシルノ王アルトヨ。シバシ、待テ」
「アルトっ!?」
出征部隊が出発してすぐ、俺は強い眩暈に見舞われた。
理由は単純。
一つの脳で二人分の情報を整理しなくてはならないからである。
特に分身側でも話しながら、本体側でも別のことを話すと言うのがかなり厳しい。
すぐに自分が何を言っているのかが分からなくなってしまう。
そしてそれを理解しようと必死に脳を回転させた結果、座ってすらいられないほどの強い眩暈に襲われ、今は意識を分身の方にのみ集中して、本体の俺は寝室のベッドに横になっている。
いつかうまく扱えるようになりたいところだが、今日の所はおとなしく安全な場所から分身を見守ることに留めることとした。
いや、半強制的にロロにそうさせられてるという方が正しいかもしれないが、まあ、良いだろう。
目を閉じて、分身の方へ意識を集中させる。
◇◇◇
——分身側視点——
世界樹の森の雰囲気は変わらない。
巨木、ロロに言わせれば枝な木々の端から、光源不明の灯りが差し込み、幻想的な雰囲気を醸し出している。
だが、今日の森はそんな雰囲気は変わらずとも、何だか寒いような気がしていた。
なんて、俺が森の気候を気にしていれば、
「アルト様、本当にご無理はされていませんか?」
俺の体調をロロに負けんばかりに気にかけてくれるクルセド。
しかし……
「クルセド、あなたが第一騎士団団長で、アルト様の護衛だから気に掛けると言うのは理解できます。ですが、今は救出任務中。アルト様自ら行かれると行って、この手段を取られたのだからこれ以上は口を挟むべきではないわ」
「トワレの言う通りね。集中なさい」
第三騎士団の団長であるトワレと第二騎士団の団長リスタからそう詰められていた。
今回同行させている騎士団のうち、第一騎士団は普段は俺の護衛を務めている騎士団で団長は『鋼鉄の盾』のクルセド。
他にも守るのが得意なスキルの所持者で構成されている。
第二騎士団は『魔術師』のリスタを始めとした、魔術、遠隔攻撃の得意な舞台で構成されており、第三騎士団は『雷槌』と言う、母さんの『氷結の刃』のような属性武器の上位スキルを持つトワレの下、雷の属性武器スキル持ちで固められていた。
騎士団結成の際に、俺は全ての騎士団の戦力が均等になるように振り分けようと思ったのだが、騎士団の出身者や周りから、目標をニーズヘッグとするならば、同種類の力を持つ者たちで騎士団を作り、連携や対応力を高めて行った方がいいのではないかと言う意見が上がり、現在の構成となった。
確かに、ニーズヘッグとの戦闘は間違いなく総力戦になる。
その際に必要なのは器用な立ち回りではなく、有効な一撃となるだろう、と俺も納得している。
「クルセド、心配には感謝する。だが、この任務では俺以上に第四騎士団を優先せよ。確かに俺は俺の外見をしているが、これはあくまで分身なのだ。ロロによれば、感覚の共有こそ為されているが、ダメージなどが直接本体に届くことはないそうだ。今のお前たち第一騎士団の任は俺の護衛ではなく第四騎士団の救出であることを胸に刻め」
二人の言葉に乗るようにして、俺もクルセドを言い含める。
クルセドは忠誠高いが、何よりも俺を優先し過ぎようとするところが玉に瑕だった。
「はっ、ですが、御身をないがしろにすることは、例え分身であろうとできません。……とは言え、ご命令にも逆らいませんので、どちらも優先して守らせていただきます」
「どちらも優先って……それじゃ優先になってないぞクルセド」
いや、玉に瑕と言うより、玉ではなくその瑕こそクルセドの本体と言うか本文なのかもしれない。
リスタとトワレもこんな調子のクルセドには呆れたのか、それぞれの騎士団の方へと離れて行ってしまった。
と、そんな話をしながらも、足早に進む行軍は出発から数時間ほどで第四騎士団が調査に来ていたであろう場所までやって来ていた。
「予定地はこの辺りね」
地図を持ったリスタがそう呟き、行軍停止の合図を送る。
そうして行軍を一時停止した部隊から離れ、俺の元に集まった騎士団長が作戦会議を始めた。
「一先ず、辺りに何か痕跡が残っていないかを探しましょうか」
「そうだな。アルト様の護衛を数人残して、騎士団ごとに辺りを探索しよう」
「では、護衛には私が残るわ。クルセド、あなたの騎士団から数人借りるわね」
「ああ、分かった」
「では、第三騎士団は一足先に調査を開始します」
ロロの負担が大きいという言葉のおかげだろうか?
俺の指示を待つでもなく、三人はすぐに作戦を立て、実行に移す。
俺としては、自身も調査に加わりたかったのだが、ここでゴネて時間を無駄にするわけにはいかない。
こうしてあっという間に、リスタと第一騎士団の数名を残し、痕跡の調査が開始された。
残された俺はすることもないため、仕方なく辺りの様子をゆっくりと観察してみたのだが……やはり、森の雰囲気に変わりはなくとも、どこか寒いような、怖気が走って寒気がするとかではなく、物理的に、温度的に寒い気がした。
「アルト様、少し良いかしら?」
すると、神妙な面持ちで、俺の護衛に残ってくれたリスタが話しかけてくる。
「ああ、どうかしたか?」
振り返るとこちらに耳打ちするように身体をかがめながら、リスタは小声で言った。
「もしかしたら気が付いているかもしれないのだけれど、この辺りで、氷系のスキルが使われた気配があるわ」
「——!」
その言葉に俺は妙な納得感を覚える。
この微妙に感じられる気温の低さはそう言う理由だったのか、と。
だが、同時に不可思議な点もあった。
第四騎士団は第三騎士団と同じように同属性、火に関係するスキル所持者によって固められている。
氷系スキルを使えるはずはない。
「これはただの憶測だけれど……」
思案中の俺の横でリスタが呟く。
「ここに、私たち以外の勢力がいるんじゃないかしら?」
「……そう、だな」
リスタの発言とほぼ同タイミングでその結論に辿り着き、何とか取り乱さずに済む。
だが、俺たち以外にスキルを使える存在がいると言うのはあまりにも危険な情報だ。
リスタが声を潜めて報告してくれてよかった。
魔獣の使う魔法と、人間の扱うスキルには微妙な違いがある。
傍目には分かりにくいが、『魔術師』のスキル、スキルの中では魔法に似た力を持つリスタだからこそ分かったのだろう。
この辺りで使われたのが、魔法ではなくスキルであると。
そしてリスタはほぼ確信しているのだろう。
ここに俺たち以外の勢力がいることを。
それに、その勢力はかなりの力を持っているということも同時に確信している。
つまりそれは、これから起こる可能性のある戦闘が、魔獣との乱戦ではなく、指揮の取れた軍隊との戦いになる可能性があるということ。
スキルが使われた跡からでは、相手の規模などを窺うことは出来ない。
だが、もし、その勢力に第四騎士団がやられていた場合その力はかなりのもので間違いない。
「——アルト様!」
森の奥を睨むように見つめていると、北東方向へ調査に向かっていた第三騎士団のトワレが駆け足でこちらへ戻って来る。
「何か見つかったか?」
「はい。こちら、なのですが……」
トワレはそう言いながら、手の中に握った何かを見せてくれる。
「これは……」
それは、水晶のように濁りのない、綺麗に透き通った氷の欠片だった。
それを見た瞬間、俺とリスタは頷き合う。
『世界樹権能:指揮形態』
俺はすぐに指揮棒を樹具化させ、調査中の全員に連絡を取る。
『調査中の騎士団各位、一度集合せよ』
「アルト様……」
指揮棒を振った俺に、トワレがまだ何かを言いたそうに名前を呼ぶ。
「なんだ?」
「この他にも、巨木に焦げたような跡も見つかっております」
「……そうか」
間違いない。
第四騎士団は魔獣ではなく、何かしらの勢力との戦闘で敗北し、連れ去られている。
この氷の欠片と巨木に残った焦げ跡がその証拠だ。
足音がこちらへ集まってくるのが聞こえる。
さて、ここからが本番だ。
敵対勢力がどういう者たちか分からない以上、慎重に、だが、第四騎士団のことを考えれば、なるべく早く救助しなければならない。
相手が魔獣ではない以上、話が通じれば良いのだが……。
皆が集まって来るのを待つ間に、念のため、ロロに確認をしておこう。
以前からこの世界樹の元に俺たち以外の勢力がいたのかについて……。
◇◇◇
——アルト本体視点——
「ロロ」
俺はベッドから身体を起こし、ロロを呼ぶ。
「どうかしましたかっ!?」
すると、すぐ隣で俺の様子を見守ってくれていたらしいロロが、急に起き上がった俺に驚きと心配の表情を浮かべながらも、駆け寄って来た。
「いや、俺に何かがあったわけじゃないよ。でも、一つ気になることが起きたんだ。ロロ、この俺たちが今いる世界に、俺たち以外の人間やスキルを使える存在っている?」
「スキル、ですか? ここにいるのは世界樹になった方と害の少ない魔獣のみのはずです。ニーズヘッグの例があるので断言はできませんが、アルトの声に応え、目覚めたイグドラシルの民以外にスキルを使える方がいるとは……」
思えません、と言う前にロロは言葉を止める。
その表情はまさか、と言う色をしていた。
その顔に俺は一つの可能性を見た。
「ロロは言ってたよね。ここはアスガルドとは違う層の世界なんだって。そして、そんな世界はアスガルド以外にも存在しているって」
「……はい」
疑問が、段々と答えの形をとっていく。
「もしかしたら、『世界樹の王』は俺だけでも、他の世界から世界樹の呼びかけに応えて、その世界で世界樹化した人を起こせる存在が他にもいる可能性はある?」
「そう、ですね。その可能性はあり得ます。ごめんなさいアルト。そんなことを考えたこともありませんでした」
「いや、ロロに謝ってもらうことじゃないよ。それに、同じ世界樹の呼びかけに応えた存在なら、もしかしたら対話が出来る可能性だってあるかもしれない」
そうだ。
世界樹の恩恵に預かる国、世界は一つではないんだ。
俺と似たような力を持つ存在が、この世界樹の危機に呼ばれていても何もおかしくはない。
だが、ロロとの会話のおかげで希望が見えた。
完全な敵対勢力ならば、戦闘は免れなかったが、もし目的が同じならば、対話をして協力することだってできるかもしれない。
もちろん、この存在が第四騎士団を倒したならば、相応の責任は支払わせなければならないが、遭遇戦でこちらから攻撃した可能性だってある。
落ち着け、俺。
ここからは判断を間違う訳にはいかない。
一度、大きく深呼吸をして、ロロを見る。
「じゃあ、ロロ、俺はまた分身の方に集中するから、俺の身体を任せるよ」
「はい、くれぐれもお気を付けて、アルト」
◇◇◇
——分身視点——
再び意識を分身側へと集中させれば、既に三騎士団は集合し、整列も完了していた。
「第一騎士団、全員集合いたしました!」
目の前でクルセドが敬礼をしながら、そう報告してくれる。
良かった。
どうやら、皆を待たせるようなことにはなっていないらしい。
「分かった」
クルセドを下がらせ、一歩前に出る。
「騎士団員各位、調査ご苦労だった。調査の結果だが、第四騎士団は我々とは別の勢力に連れ去られている可能性が高いことが判明した!」
そして俺は、トワレの持ってきた証拠やリスタ、ロロとの話で導き出した結論を迷うことなく伝える。
「ロロに確認を取った結果、ここには俺たち以外の人間も同じように集まっている可能性があるということだった。おそらく第四騎士団はその勢力と接触し、遭遇戦になったのであろう」
俺の言葉を聞いて、その勢力へ憤る騎士も見える。
「しかし、遭遇戦であった可能性がある以上、相手側のみに責を押し付けることはまだ出来ない。これから我々はその勢力の痕跡を辿るが、良いか? もし、急な遭遇があったとしても、絶対にこちらから攻撃することは許さん! もし攻撃を受けても、第一騎士団を中心に防御に徹し、対話を試みる。憤る気持ちも分かるが、俺たちの今回の目的は第四騎士団の救出、そして最終目標はニーズヘッグの討伐だ。余計な憂いを増やす必要はない」
「「「「「はっ」」」」」
多少の反発も覚悟しての言葉。
だが、言い終えてみれば、先ほど憤る姿勢を見せていた騎士も、敬礼で返してくれている。
よし、皆、落ち着いているな。
「では、これから再び行軍を開始する。隊列を整えよ!」
俺の指示に騎士たちは迅速に動き出す。
そうして俺たちはトワレたちが見つけて来た戦闘痕の残る方向へ再び、行動を開始した。
◇◇◇
しばらく進めば、段々肌に感じる寒さが強くなっていく。
目に映る景色も心なしか青白くなっているようで、その色は先に見た氷の欠片を思わせた。
すると、先ほどより慎重な行軍が完全に足を止めた。
そして、前方から一人の騎士が俺のいる部隊の中心まで駆け戻って来る。
「報告! 前方に巨大な遺跡のような建物を確認しました!」
遺跡? その勢力の作った建物だろうか?
「分かった。俺も確認したい。行軍はこのまま一時停止、クルセド、リスタ、トワレ。ついて来い」
「「「はっ」」」
報告に来た騎士について隊列の最前線まで歩いて行くと、木々の隙間から確かに何かの遺跡のような物が見える。
「あれは……なんでしょうか?」
トワレがぼやくが、その言葉には俺も納得だった。
今俺たちの目に見えている遺跡のような物は、遠目には確かに遺跡に見えるが、よく目を凝らしてみると、乱雑に折り倒したこの辺りの巨木を気持ち程度に組み合わせて作られた風よけ? のような建物にしか見えない。
資材化などの加工の跡もなく、本当にただ、折り倒した巨木で影を作っているだけの巨大な建物。
あんな建物では、落ち着いて休息をとることも難しいだろうに……と言うか、一体どうやってくみ上げたのだろうか?
いくら『怪力』のようなスキル所持者がいても……物理的に届かない距離には積み上げることは出来ないだろうに……。
と、興味深くその遺跡を観察していた時だった。
——ズシン!
と、大地が揺れる。
「なん……だっ!?」
だが、急に起こった地震に驚く暇もないうちに、俺たちの視界に衝撃の存在が映り込んだ。
その体躯は遠目でもはっきりとわかるほどに巨大。
皮膚はこの辺りの景色のように青白く、一歩歩くごとにこちらまで揺れが伝わってくる。
視界の先、遺跡の影から現れたのは、おとぎ話にしか聞いたことのない巨人だった。
「——っ! アルト様!」
そんな巨人に目を奪われていると、俺の視界を遮るようにクルセドが前に立ち『鋼鉄の盾』を展開する。
——ガゴンッ!
と、鈍い接触音がしたかと思えば、
「……グゥッ」
羊たちの突進を物ともしていなかったクルセドが苦悶の声を上げた。
「クルセド! 攻撃か……」
クルセドの足元には砕けた氷の欠片が広がる。
間違いない。
あの巨人たちが、第四騎士団を連れ去った勢力だ。
「全軍、防御態勢! クルセドを先頭に、俺たちはもう少し距離を詰めるぞ!」
苦しそうなクルセドには悪いが、まだこの距離では第二騎士団の攻撃は届いても俺の声は届かない。
俺たちの目的は戦闘ではない。
そうアピールするためにも、もう少し物理的に近づく必要があった。
「クルセド、いけるか?」
「無論です! お任せを!」
力強く頷いて見せるクルセドに先頭を任せ、俺たちはゆっくりと青い巨人へと近づいて行く。
「クルセド、次、来るぞ!」
クルセドと盾の真後ろに隠れる俺には見えないが、俺の両脇を固めるトワレとリスタには次の攻撃が見えたのだろう。
どちらからともなくそう叫び、クルセドが少しずつ進む足を止め、攻撃に備える。
だが、次の瞬間——
「戦士ヨ! 攻撃止メ!!」
空間の狭い洞窟内で叫んだかのような大声が辺りに木霊し、来るはずだった衝撃はこちらに訪れなかった。
「アルト様」
三人が俺を振り返る。
どうやら三人とも、今の声に相手に明確な敵意がないと判断したらしい。
俺はそんな三人の判断を信じ、クルセドと盾の影から一歩進み出た。
すると、恐らく先の命令を出したであろう巨人が、真っすぐにこちらを見ていた。
俺が五人並んでようやく目線が合うほどの巨体の迫力は、今までに見て来た何よりも凄まじい。
だが、俺が気圧されるわけにはいかない。
「攻撃停止に感謝する! 我は世界樹の国イグドラシルが王にして、この世界樹の王、アルト・アンドレアルだ!」
敵意がないことをアピールするために両手を広げながら、大声で名乗りを上げる。
すると、それを聞き取った巨人も同じく名乗りを上げた。
「コチラモ、突然ノ攻撃ヲ詫ビサセテモラウ。 俺ハ、ヨトゥンヘイムノ大戦士ニシテ世界樹ノ戦士、霜ノ巨人族ノ、グラディオラスダ!」
世界樹の戦士……やはり、俺と同じようなスキルの所持者のようだ。
「戦士グラディオラスよ! こちらに我が騎士団は来ていないだろうか? 我らは消息を絶った仲間の救出にここまで来たのだが……」
相手も名乗りを上げてくれた以上、余計な小手先の会話は不要だと、俺はいきなり用件を切り出す。
「アア、ソノ者タチナラバ……」
グラディオラスは一度後ろを振り返り、何か合図を出す。
するとすぐに、グラディオラスの半分ほどの体躯の巨人が何かを抱えるようにして、建物の影から顔を出した。
「オソラク、コノ者タチダロウ。スマナイ、戦士タチガ炎ニ反応シ、怪我ヲ負ワセテシマッタ」
クルセドと俺の丁度二人分ほどの体躯の巨人が、こちらへ進み出て、俺の前に十七名の騎士たちを並べる。
それは間違いなく、第四騎士団の全員だった。
「リスタ、トワレ」
「「はっ」」
俺が指示を出せば、二人はすぐに十七人の心肺機能を確かめ、
「全員休眠状態に入っているものと思われます」
「以前のアルト様と同じ症状ね。それ以上に重症かどうかは、ここでは判断が難しいでしょう」
そう報告してきた。
「そうか……」
だが、見た所大きな外傷は負っておらず、このまま数百年目覚めないという結果にはならなそうだった。
「全員を確認した。だが、これからのためにも何があったのか、詳細な話を聞きたい。ここは一つ、話し合いの席を設けては貰えないだろうか?」
俺はグラディオラスに向けて、そう要求する。
こちらに責があったとしても、現状、一方的に被害を被っているのはこちら。
巨人側としても、断るわけにはいかないだろう。
「……ワカッタ。イグドラシルノ王アルトヨ。シバシ、待テ」


