◇◇
「……うわっwwやなモンとすれ違っちゃったわ〜ww」
「あ〜あの噂の金魚のウンチ君か。どんま〜い♬」
クスクスと笑いながらすれ違っていく男子生徒達。
見たことがない顔だったので、知らない相手だと思うのだが……なぜかあっちは俺の事を知っている様だ。
「?なんなんだ?一体……。」
一度か二度なら、誰かと間違えたんだろうと思うのだが、実はこれが最初じゃなくて、日を追うごとに多くなっている。
しかもどう考えても好意的じゃないんだよな……。
光輝といる時はないのだが、一人でいる時を狙ってやってきては、俺を見てあからさまにヒソヒソ何かを噂し合ったり、今みたいにすれ違いざま聞こえるように変なあだ名を言ってきたりと、中々騒がしくなってきた。
よく分からない現象に首を傾げながらも、俺は自分のクラスへと向かう。
そして、クラス内に入ってからも、ちょっとだけ変な雰囲気で……それが更に疑問に拍車をかけた。
「…………?」
キョロキョロと周囲を見渡しても、皆なんとなく気まずそうに視線を逸らすだけ。
これは本当におかしいなと思ったが、サッパリ覚えがない。
「……ま、いっか。」
考えても分からないので、気持ちを切り替えて自分の席に着席すると、少し遅れて中野がクラスの中に入ってきた。
そして俺の後ろの席に座ると、やはり周囲の様子がおかしい事に気づき、ハァ……とため息をつく。
「なんか日を追うごとに酷くなってね?お前、本当になんかした覚えないわけ?」
「あ、あぁ……。普通に過ごしていると思うんだけど……。」
困ってしまって頭を掻くと、中野は「だよな〜。」と言って、納得した様に何回か頷いた。
光輝といる以外の学校生活は、ほぼ中野と一緒であるため、俺が特に変わらず生活している事は中野が一番よく知っている。
だからこそ、中野も不思議がっているというわけだ。
「こっちの一般クラスはそこまでじゃないけど……特進クラスだな、あからさまにお前の事睨んでるの。
しかも、俺達と同学年だけじゃないみたいだ。
教室も離れてて接点なしなのに一体なんだんだ?。」
「あのあまり顔を見たことがない奴らは、全員特進クラスの奴らか。
そうなんだよ、話した事もないのに、何でだろう?」
二人揃って”お手上げ!”とばかりに、肩を大げさに竦めていると、突然クラスメイトの女子生徒数人がおずおずと近づいてきた。
「あのさ……ちょっといい?」
「?う、うん。いいよ!」
数人の女子生徒達は、お互い顔を見合わせた後、ポツポツと喋り始める。
「実は……黒井君の変な話が、特進クラスの方を中心に凄く広がっているみたいだよ。
特進クラスの友達から、直接話を聞いたから間違いないよ。」
「えっ!お、俺の話……?」
全てが平均を飛び出せないTHE・モブの俺が噂の的に……?
始めての経験にニッコリ笑う俺を押しのけ、中野がその話に食いついた。
「どんな噂?」
「あ……え、え〜と……。」
女の子達は言いにくそうに口ごもったが、意を決した様子で口を開く。
「『黒井君が嫉妬から日野君を奴隷の様に扱ってる』。『花園さんと良い雰囲気なのを邪魔している』。」
「────はぁぁぁ〜?」
全然覚えのない噂話に目を丸くしていると、女子生徒は『やっぱり……』といった様子で、ホッと息を吐き出した。
「その反応だと、やっぱり嘘だったんだ。
あとは、花園さんにストーカーみたいに言い寄っているとか、告白を断った事を逆恨みしてるとかも……。」
「してないしてない!そもそも、接点自体ないよ!」
真実が一つもない事に驚き、思わず机に手を置いて立ち上がると、周りでこっそり聞いていた他のクラスメート達も口を出し始める。
「俺らの所には、わざわざ特進クラスの奴らが言いに来たぜ。
『お前らのクラスにいる黒井は、花園さんに嫌がらせをしている。』って言ってた。」
「それで、花園さんが精神的に参っているから、仕返しに黒井を集団で無視して孤立させてやれって……。
黒井がそんな事をするのって物理敵にも不可能じゃないかって分かっていたから、おかしいとは思っていたんだ。
でも、どうにも言い方や雰囲気作りが上手くて……俺達もどうしたらいいか分からなくなっちまった。」
「今まで黙っててすまん。やっぱりどう考えても、嘘だもんな。
お前が悪口言ってんの見たことないし、それに日野があれだけくっついてたら……なぁ?」
どうやら特進クラスの奴らが、随分と大嘘を周りに吹き込んでいたらしい。
それを聞いて、やっと最近周りが俺を見る目がおかしい理由を知った。
「い、いや、別にそれはいいんだけど……。そもそも、なんで俺がそんな嘘の話を言いふらされるんだろう?」
特に人に恨まれる様な事は何もしてない!と理不尽さに怒りを見せると、女子生徒達がう〜ん……?と考え込みながら答える。
「多分、日野君に自分の存在をアピールするためじゃないかな?
犯人は絶対花園さんだと思う。
だって、いつもその手で狙っている男子を味方につけて、ちゃっかりゲットしてるから。」
「誰かに自分が意地悪されたって相談されると、男って馬鹿だから守ってあげたい!とか思っちゃうんだろうね。
あの女、加護欲を引き出すのが抜群に上手くて、更に口が上手いから、それが本当の事の様に皆信じちゃうって、被害にあった人達は全員言ってたよ。
わかりやすい悪役を作って自分を上げる、それが常套手段なんだよ。ホント最低。」
鼻息荒く語る女子生徒達は怖かったが、その被害は酷いモノだった様で、その中で実際にその被害に合った女の子が、青白い顔で口を開いた。
「何もしてないのに、いつの間にか自分が悪役にされてるんだ。
何を言っても誰も信じてもらえなくて、皆、『花園さんに意地悪したお前が悪い!どうせ花園さんが可愛いから嫉妬してるんだろ!』って……。
まるで自分が、正義のヒーローに断罪される悪役になったみたいで、凄く怖かったよ。」
「……うわっwwやなモンとすれ違っちゃったわ〜ww」
「あ〜あの噂の金魚のウンチ君か。どんま〜い♬」
クスクスと笑いながらすれ違っていく男子生徒達。
見たことがない顔だったので、知らない相手だと思うのだが……なぜかあっちは俺の事を知っている様だ。
「?なんなんだ?一体……。」
一度か二度なら、誰かと間違えたんだろうと思うのだが、実はこれが最初じゃなくて、日を追うごとに多くなっている。
しかもどう考えても好意的じゃないんだよな……。
光輝といる時はないのだが、一人でいる時を狙ってやってきては、俺を見てあからさまにヒソヒソ何かを噂し合ったり、今みたいにすれ違いざま聞こえるように変なあだ名を言ってきたりと、中々騒がしくなってきた。
よく分からない現象に首を傾げながらも、俺は自分のクラスへと向かう。
そして、クラス内に入ってからも、ちょっとだけ変な雰囲気で……それが更に疑問に拍車をかけた。
「…………?」
キョロキョロと周囲を見渡しても、皆なんとなく気まずそうに視線を逸らすだけ。
これは本当におかしいなと思ったが、サッパリ覚えがない。
「……ま、いっか。」
考えても分からないので、気持ちを切り替えて自分の席に着席すると、少し遅れて中野がクラスの中に入ってきた。
そして俺の後ろの席に座ると、やはり周囲の様子がおかしい事に気づき、ハァ……とため息をつく。
「なんか日を追うごとに酷くなってね?お前、本当になんかした覚えないわけ?」
「あ、あぁ……。普通に過ごしていると思うんだけど……。」
困ってしまって頭を掻くと、中野は「だよな〜。」と言って、納得した様に何回か頷いた。
光輝といる以外の学校生活は、ほぼ中野と一緒であるため、俺が特に変わらず生活している事は中野が一番よく知っている。
だからこそ、中野も不思議がっているというわけだ。
「こっちの一般クラスはそこまでじゃないけど……特進クラスだな、あからさまにお前の事睨んでるの。
しかも、俺達と同学年だけじゃないみたいだ。
教室も離れてて接点なしなのに一体なんだんだ?。」
「あのあまり顔を見たことがない奴らは、全員特進クラスの奴らか。
そうなんだよ、話した事もないのに、何でだろう?」
二人揃って”お手上げ!”とばかりに、肩を大げさに竦めていると、突然クラスメイトの女子生徒数人がおずおずと近づいてきた。
「あのさ……ちょっといい?」
「?う、うん。いいよ!」
数人の女子生徒達は、お互い顔を見合わせた後、ポツポツと喋り始める。
「実は……黒井君の変な話が、特進クラスの方を中心に凄く広がっているみたいだよ。
特進クラスの友達から、直接話を聞いたから間違いないよ。」
「えっ!お、俺の話……?」
全てが平均を飛び出せないTHE・モブの俺が噂の的に……?
始めての経験にニッコリ笑う俺を押しのけ、中野がその話に食いついた。
「どんな噂?」
「あ……え、え〜と……。」
女の子達は言いにくそうに口ごもったが、意を決した様子で口を開く。
「『黒井君が嫉妬から日野君を奴隷の様に扱ってる』。『花園さんと良い雰囲気なのを邪魔している』。」
「────はぁぁぁ〜?」
全然覚えのない噂話に目を丸くしていると、女子生徒は『やっぱり……』といった様子で、ホッと息を吐き出した。
「その反応だと、やっぱり嘘だったんだ。
あとは、花園さんにストーカーみたいに言い寄っているとか、告白を断った事を逆恨みしてるとかも……。」
「してないしてない!そもそも、接点自体ないよ!」
真実が一つもない事に驚き、思わず机に手を置いて立ち上がると、周りでこっそり聞いていた他のクラスメート達も口を出し始める。
「俺らの所には、わざわざ特進クラスの奴らが言いに来たぜ。
『お前らのクラスにいる黒井は、花園さんに嫌がらせをしている。』って言ってた。」
「それで、花園さんが精神的に参っているから、仕返しに黒井を集団で無視して孤立させてやれって……。
黒井がそんな事をするのって物理敵にも不可能じゃないかって分かっていたから、おかしいとは思っていたんだ。
でも、どうにも言い方や雰囲気作りが上手くて……俺達もどうしたらいいか分からなくなっちまった。」
「今まで黙っててすまん。やっぱりどう考えても、嘘だもんな。
お前が悪口言ってんの見たことないし、それに日野があれだけくっついてたら……なぁ?」
どうやら特進クラスの奴らが、随分と大嘘を周りに吹き込んでいたらしい。
それを聞いて、やっと最近周りが俺を見る目がおかしい理由を知った。
「い、いや、別にそれはいいんだけど……。そもそも、なんで俺がそんな嘘の話を言いふらされるんだろう?」
特に人に恨まれる様な事は何もしてない!と理不尽さに怒りを見せると、女子生徒達がう〜ん……?と考え込みながら答える。
「多分、日野君に自分の存在をアピールするためじゃないかな?
犯人は絶対花園さんだと思う。
だって、いつもその手で狙っている男子を味方につけて、ちゃっかりゲットしてるから。」
「誰かに自分が意地悪されたって相談されると、男って馬鹿だから守ってあげたい!とか思っちゃうんだろうね。
あの女、加護欲を引き出すのが抜群に上手くて、更に口が上手いから、それが本当の事の様に皆信じちゃうって、被害にあった人達は全員言ってたよ。
わかりやすい悪役を作って自分を上げる、それが常套手段なんだよ。ホント最低。」
鼻息荒く語る女子生徒達は怖かったが、その被害は酷いモノだった様で、その中で実際にその被害に合った女の子が、青白い顔で口を開いた。
「何もしてないのに、いつの間にか自分が悪役にされてるんだ。
何を言っても誰も信じてもらえなくて、皆、『花園さんに意地悪したお前が悪い!どうせ花園さんが可愛いから嫉妬してるんだろ!』って……。
まるで自分が、正義のヒーローに断罪される悪役になったみたいで、凄く怖かったよ。」

