ケガをしたあと、なんとなくサトに会いづらくなって、家に行ってない。
 学校で会っても避けられている感じがした。
 俺を見てくれなくなった。
 絵を描いているようにも見えなかった。
 何があったんだろう。
 あの日。
 風邪をひいた日。
 熱のせいで、不機嫌になっているだけだと思っていたのに。
「亮太、ケガ大丈夫?」
 前の席に座り、橋本が話しかけてくる。
「ああ。しばらく部活は休みだな」
「残念だったな……」
 沈黙になる。
 落ち込んでいるわけではない。試合に負けたのは悔しい。ケガをしたことも。
 だけど、次に向けて前向きに考えられている。
 部活も無理をしないで程度に参加している。
 一番前の席で、顔を机に突っ伏して寝ているサトを見る。
 溜息が漏れた。
 「今日さ、俺とデートしない?」
 橋本が、元気付けるように大きな声を出した。
 ぴくりとサトの肩が揺れたような気がした。
「わかった。どうせ、どこか行きたいところあるんだろう」
「バレた」とおどけたあと、チャイムの音で、自分の席に戻って行った。


 学校帰りに訪れたのは、市主催の美術展だった。