水族館に行く約束の土曜日の前夜
俺は布団に入ってから何度もスマホを確認していた
明日、日向と二人で、学校外で丸一日過ごす
想像するだけで心臓がうるさい
夜の十時を回った頃、待ち望んでいた通知が鳴った
『明日、午前九時半に駅前で。飯は水族館でな。見たい生き物とかあるか?』
簡潔で、いつも通りの日向らしいメッセージだ。それでも、俺の指は震えた
『わかった! 水族館、楽しみにしてるね。俺は、ペンギンとクラゲが見たいな。あ、イルカショーも!」
そう送るとすぐに返信が来た
『ペンギンとクラゲな。了解。 イルカショーは濡れるのは勘弁だぞ。他に何かあったら言えよ』
メッセージなのに、日向の声が聞こえてくるようだ
俺の心の弱点を、決して見逃さない
でも、その厳しさが、今の俺にはたまらなく心強かった
『うん、わかった!濡れるのもいいけど俺も勘弁(笑)日向は、何か見たいのあるの?』
数分間、既読がついたままだった。もしかして、もう寝る時間だっただろうか
少し後悔し始めた頃、新しいメッセージが届いた
『そうだな。水族館にいる時のお前の顔かな』
「えっ……⁉︎」
俺は慌てて布団に顔を埋めた。顔が熱い
日向は、俺をからかっているのだろうか?それとも、これはこの前の笑顔を褒めてくれたときの続きなのだろうか?
『えっ、それってどういう意味……?』
既読がついたまま、なかなか返信が来ない
『そのままの意味だろ。 じゃあ、寝るぞ。明日遅刻すんなよ、凛』
名前で呼ばれるたびに、胸の奥がキュッと締め付けられる
俺のなんでもいいの裏側を探ることから始まった関係が、今はもう、形の違う関係に変わろうとしている
明日、日向の隣で水槽を見る
そして、自分の心に嘘をつかずに、純粋に楽しむ
(日向は、俺のどんな表情を見たいんだろう……)
楽しみと、少しの不安と、そして日向という存在への気持ちの混ざり合い、俺の胸はドキドキと大きく脈打っていた
ベッドで足をバタバタさせてしまい別の部屋にいた母さんから
「凛、明日朝早いならさっさと寝なさい!」
なんて叱られてしまった
眠れそうになかったが、このドキドキごと、全部明日に持っていこうと決めた
次の日の朝、俺は約束の九時半よりも十五分も早く駅の改札前で日向を待っていた
昨日、すでに抑えきれなかったドキドキが、今も胸の奥で大きく脈打っている
制服以外の服で日向と会うのは初めてだ
俺は、クローゼットの前で一時間以上悩んで決めた、普段着慣れた薄いグレーのパーカーにジーンズという無難な格好に、そわそわとしてしまう
そうしていると、こちらに向かって歩いてくる日向の姿が見えた
普段の制服姿も、そのまっすぐな性格と相まって鋭い印象を与えるけれど、今日の彼は全く雰囲気が違った
白のシンプルなTシャツの上に、薄いベージュのオーバーシャツを羽織り、ゆったりとした黒のパンツを履いている。一つ一つ計算されているかのような、大人びて洗練された格好だった
何より、彼の肌を露出している首元や腕に、普段見慣れない男らしい逞しさを感じ、俺の心臓は一気に大きく跳ね上がった
「お、おはよ、日向」
彼はいつも通り、真っ直ぐに俺の目を見て近づいてくる
「悪い、待たせたか?」
「ううん、今来たとこ」
俺は必死で平静を装ったが、視線が日向の私服から離せない
なんで、こんなに格好いいんだろう。なんて考えて顔が熱くなるのを感じた
「なんだよ、人の顔ばっか見て」
日向はニヤリと笑った。いつもの少し意地悪な笑みだ
「……別に、見てないし」
思わず口にした言葉は素直じゃない。日向も嘘だって気づいてる
でも、日向は特にそれを咎めることなく、俺の全身を一瞥した
「てか、お前、その服……お前らしいな。悪くねぇよ」
「えっ」
「シンプルで、落ち着く感じ。いいじゃん」
日向が、少し褒めるような、合格を与えるような口調で言った
この前、俺の笑顔を褒めてくれた時の、あの満足げな目だ
俺は顔が熱くなり、思わず俯いた。日向に私服を褒められるなんて、考えてもいなかった
「あ、ありがとう。日向も、すごく、似合ってる」
「ふっ、知ってる」
日向は素っ気なく返したが、その声には微かに嬉しさが滲んでいた
「よし、行くぞ。チケットは買ってある」
日向は俺の目の前に自分の手を差し出した
「ぼーっとしてないで、早く行くぞ。今日、一日楽しむんだろ、凛」
差し出された手と、また呼ばれた名前に、俺は一瞬戸惑った
手を繋ぐという意味だろうか?
そんなこと、できるわけがない
だが、この日向のリードを、拒否してしまいたくない
俺は自分の手が震えているのを感じながら、日向の掌に触れないように、彼のTシャツの袖を、そっと掴んだ
日向は一瞬、掴まれた袖を見下ろしたが、何も言わず、ただ満足そうに一歩前へ踏み出した
彼の大きな背中を追いかけながら、俺は今日が、二人の特別な時間であることを確信した
電車に乗り込み、並んで座る
車内は空いていて、日向は俺が窓際に座れるよう自然に促してくれた
座っている間、日向はスマホで水族館の情報を熱心に調べていた
その横顔を見ていると、俺の心臓はさらにうるさくなる
昨日のトーク履歴が頭の中で何度もリフレインしていた
「おい、凛」
不意に名前を呼ばれ、俺は肩を震わせた
「何、見てんだよ」
「え、あ……ご、ごめん、ぼーっとしてた」
日向はスマホから顔を上げ、俺の目を見て言った
「別にいいけど。さっきから、お前、楽しそうだな」
「え……」
「顔。口角上がってんぞ。そんなに俺と水族館行くのが嬉しいのか」
日向のストレートな言葉に、俺の顔は耳まで熱くなった
その通りだ。前までいろんなことを諦めていた俺が、日向という光を得て、こんなにも無邪気に、明日を楽しみにできるようになったんだ
俺は俯く代わりに、日向の目を見つめ返した
「うん。嬉しいよ。日向と一緒だから、すごく嬉しい」
俺が自分の嬉しいという感情を自分の言葉で伝えきると、日向は満足そうに目を細めた
「そっか。よかったな」
日向はそう言うと、俺の頭に軽く手を置いた
「迷子になんなよ」
俺は小さく笑って頷いた
窓の外の景色が海に近づき、水族館の最寄り駅のアナウンスが流れる
日向の隣で過ごす、初めての夏休みの一日が、今、始まろうとしていた
改札を出ると、潮風の香りと共に、家族連れやカップルで賑わう活気あふれる声が聞こえてくる
「チケットはこれだ」
日向がスマホを取り出し、電子チケットを見せる
その手際よさに、俺はまた少し、彼が大人びて見えた
「凛。ぼーっとすんなよ」
日向はそう言いながら、人混みを避けて入口へと歩いていく。俺ははぐれないようにその背中から目を離さなず着いていった
水族館の中は薄暗く、巨大な水槽から差し込む青い光が幻想的だ
最初に見えた大きな水槽には、無数の魚が悠々と泳ぎ、その神秘的な光景に、俺は思わず息を飲んだ
「すごい……」
「お前、本当に楽しそうな顔してるな」
その言葉に俺は慌てて顔を覆い隠したが、日向は
「行くぞ。ペンギン見るんだろ」
と笑いながら、先に進んでいく
俺たちはペンギンコーナーへ向かった
ヨチヨチと歩くペンギンたちが、水の中に入った瞬間、猛スピードで泳ぎ出す様子に、俺は思わず声を上げて笑った
「泳ぐの速っ!」
「ペンギンってあんな速く泳ぐんだな」
「見て、日向!あの子、こっち見てる!」
日向も楽しそうに水槽を眺めている。俺はその横顔をそっと盗み見た
普段の鋭い目つきではなく、穏やかな光を湛えた彼の横顔は、新鮮で、とても魅力的だった
次にクラゲのエリアへ。無数のクラゲが、照明の色が変わる水槽の中を、ふわふわと漂っている
「うわあ……」
俺は立ち止まり、その幻想的な光景に見入った。まるで夢の中の世界みたいだ
周囲の喧騒が遠ざかり、クラゲと自分だけの空間にいるような感覚になる
「日向も、これ、きれいだと思わない?」
「あぁ、すごく綺麗だ」
昼食を済ませ、次のエリアへと向かう途中だった
「あ、ちょっと待って、日向!あそこのお土産、ちょっと見ていってもいいかな?」
俺はクラゲの小さなキーホルダーが目に入り、日向の手を引いて立ち止まった
頷いた日向を横目に俺はキーホルダーを手に取った。すごく綺麗だから、日向に今日のお礼で……
日向に喜んでもらえることを願って二つのキーホルダーを持ってレジへ向かった
数分後、キーホルダーをカバンにしまいながら戻ると、日向の姿がどこにもなかった
「日向……?」
俺は慌てて周りを見渡す。館内は人が多く、日向の長身は簡単に見つけられるはずなのに、どこにも見当たらない
(どうしよう。置いて行かれた?いや、そんなはず……)
突然の孤独感と、人混みの喧騒に、俺の胸は一気に冷たくなった。手のひらが汗でじっとり濡れる
過去にクラスで孤立した時の、あの呼吸ができないような感覚が蘇ってきた
(俺、俺……迷惑かけた、かな……)
誰にも迷惑をかけないようにしていた頃の自分に戻ってしまいそうで俺は上手く声が出ないまま
「日向、……ひなた、」
誰にも届かないほどの声で、言葉を紡いだ
「おーい、凛。何突っ立ってんだよ」
聞き慣れた、まっすぐな声が聞こえた。ハッと顔を上げると、少し離れた場所で、日向が心配そうな顔で立っていた
「ひ、日向!」
俺は一目散に駆け寄り、今度は遠慮なく日向のシャツを両手で強く掴んだ
「どこ行ってたんだよ!俺……」
「悪い。お前が夢中になってる間、飲み物でも買っとこうと思って自販機行ってた。戻ったらお前がパニックになってるからびっくりした」
日向は俺の頭を優しく抱き寄せた。背中に腕が回される温かさと、彼の体の香りに、緊張が一気に緩んだ
「勝手にいなくなって悪かったな。お前のそういうとこ、まだ治ってないのに離れてごめん」
日向の目はいつもの何倍も優しかった。俺を離すと、今度は日向から俺の手に指を絡ませて歩き始めた
さっきよりずっと強い力で、俺の手を握っている
「迷子になったお前の顔、すげぇ間抜けだったぞ」
「うるさい!」
「でも、ちゃんと俺の名前呼ぼうとしてたろ。偉いよ、凛」
日向の言葉に、凛はまた顔を赤くした
迷子になっても、誰かのせいにするのではなく、日向を探そうとした自分を肯定してくれた
「よし、じゃあ気を取り直して。一番後ろの席で、イルカショー見るか。最前列は流石にずぶ濡れになりそうだからな」
「うん!」
日向と手をつなぎ、俺は水族館の一番奥、イルカショーの会場へと向かった
ショーが始まると、俺は夢中になった。イルカがジャンプするたびに、拍手をし、声を上げた
日向は、時折スマホでイルカの写真を撮りながらも、時折、俺の方を見て楽しそうに笑っていた
ショーが終わり、水族館を出る頃には、夕方の太陽が西に傾きかけていた
「楽しかったね、日向」
「ああ。お前が終始笑顔だったから、連れてきた甲斐があった」
その言葉が、心に深く染みた
この特別な一日は、日向が俺のために作ってくれたものだということが、改めて胸に響く
電車に乗り込み、行きと同じように並んで座る
夕方の混雑はまだ始まっておらず、俺たちの周りには静かな空間があった
疲れたのか、日向は窓の外を見つめながら、少し目を細めている。その横顔は、水族館で見た穏やかな横顔よりも、もっと無防備に見えた
俺はそっと、土産屋で買ってカバンに忍ばせていたキーホルダーを取り出した
「あのさ、日向」
声をかけると、日向は目だけを俺のほうに向けた
「なに」
「これ、今日のお礼。もらってくれないかな」
俺は、自分の手のひらに載せていた二つのキーホルダーを日向のほうへ差し出した
一つは日向に。もう一つは俺が持つ
二つ並んでいると、水槽の中でふわふわと漂っていたクラゲのように、幻想的で綺麗だった
「これ、お前がさっき土産屋で見てたやつか」
日向は、俺とキーホルダーを交互に見比べた。その目が、少しだけ驚きに見開かれているのがわかる
「うん。すごく綺麗だから。今日、楽しかったし、その、日向が友達として遊んでくれたお礼」
友達として。そう言いながらも、俺は、友達の証として渡すには、これは少し重いかもしれない、という不安に襲われていた
日向はフッと笑うと、俺の手からクラゲを一つそっと取り上げた
「俺はこっちな」
そう言って、自分のリュックのファスナーに、迷いなくそのキーホルダーを付けた。
俺は息をのんだ。あんなに一瞬で、俺の贈り物を、当たり前のように受け入れてくれるなんて、思ってもみなかった
「ありがとう、日向」
俺は嬉しくて、泣きそうになった
「ありがとうは、こっちだろ。お前、こういうの選ぶの、好きだったんだな」
日向は俺の頭をぽんと叩いた
「てか、これ、凛が選んだもんだろ?自分の欲求に素直になった証拠じゃん。よくやった」
俺の行動は、単なる贈り物ではなく、「自分の気持ちを隠さない」という、日向との練習の成果として受け入れられた
「これで、もう『なんでもいい』なんて言わなくなるな」
日向はそう言って、再び俺の手を掴んだ
前よりもっと強い力で、しっかりと指を絡ませてきた
この手がある限り、俺はもう一人ではない。俺たちの特別は、まだ始まったばかりだ
日向の隣で俺はそっと目を閉じた。日向の隣は、もはや形容できないほど安心感が強かった
お盆が過ぎ、夏休みも終盤に差し掛かった頃
俺は約束通り、日向と二人で駅前の小さな夏祭りへ向かうことになった
今日着ている薄い水色のシャツとネイビーのチノパンは、昨日、鏡の前で散々悩んで決めた勝負服だ
改札から、人目を引く浴衣姿の日向が歩いてくるのを見て、心臓がまた大きく跳ね上がった
「よ、凛。待たせたな」
日向は濃紺の浴衣に袖を通していた
私服の時よりも大人っぽく見えて、その姿に俺は一瞬息をのむ
「い、いや、俺も今来たところだよ。ゆ、浴衣、すごく似合ってる」
「知ってる。お前もそのシャツ、似合ってるよ」
日向は微笑んで行くぞといい歩き出した
「そういや、学校の課題、どうした?まさか、まだ終わってねぇとかないよな」
「一昨日、全部終わらせたよ。日向との予定に響いたら嫌だから、ちゃんと計画立てた」
俺が少し得意げに言うと、日向は満足そうに頷いた
「偉いな。そりゃよかった。ひまは今頃、母さんに怒鳴られてるだろうが」
「陽葵ちゃん?」
「ああ。ぽんすけと遊んでばっかで、自由研究に手をつけてなかったらしい。朝から『ぽんすけが代わりにやってくれればいいのに!』って叫んでたわ。代わりにやれるかっつの」
その様子が目に浮かんで、俺は思わず笑ってしまった
日向も苦笑いしながら陽葵ちゃんが怒られている話を続けた。日向の妹や家族の話を聞くと、彼との距離がさらに縮まったような気がして、胸の奥が温かくなる
駅前から続く参道は、すでに浴衣姿の人で溢れかえり、祭りの高揚した熱気に包まれていた
金魚すくい、射的、たこ焼きの屋台の匂い
賑やかな喧騒の中、日向が先導して人混みをすり抜けていく
「すごい人だね」
「迷子になるなよ、凛」
「うん、ありがとう」
「何食う?なんでもいいは却下だぞ」
日向のまっすぐな目に促され、俺は真剣に考えた。なんでもいい、という言葉は、もう喉まで出かからなかった
「た、たこ焼き食べたい!あとりんご飴も」
「りんご飴なんて、子どもかよ。俺はわたあめにしよっかな」
「日向もだいぶ子どもっぽいの選んでるじゃん」
そうツッコむと日向は悪戯っぽく笑いながらも、すぐにたこ焼きの屋台に手を引いてくれた
たこ焼きを受け取り、俺は片手にリンゴ飴を持ち、日向もわたあめを持ち、二人でゆっくりと人波の中を進んでいく
「おい、凛。口の周りにソース付いてるぞ」
日向はそう言いながら、何気ない仕草で俺の口元を拭ってくれた
突然のことに心臓が大きく跳ね上がる
「あ、ありがとう……」
「お前は本当にぼーっとしてるな」
そう言いつつも、日向の視線は優しく、咎めるような色はなかった
「あ、射的があるよ、日向!」
俺が指さすと、日向は目を細めた
「射的か。あんまり得意じゃねぇけど、やってみるか。凛、何か欲しいものあるか?」 「え、俺?うーん、じゃあ、あの角にある、小さなクマのぬいぐるみ!」
日向は五回分の弾を買い、的を狙ったが、二回外した
「ちっ。うまくいかねえ」
「日向でも外すんだね」
「うるさい」
でも、彼は三回目で見事にクマのぬいぐるみを落とし、俺に差し出した
「ほら。お前が欲しいって言ったからな」
「ありがとう、日向!すごい!」
俺はクマのぬいぐるみを受け取り、日向は満足そうに笑った
この一連のやり取りが、俺にとっては何よりも特別だった
「そろそろ花火だな。いい場所探すぞ」
日向はそう言い、俺の手を強く引き、祭りの喧騒から少し離れた、高台になっている神社の裏手へと向かった
高台からは、夜の街を一望できた。ここなら、花火もよく見えるだろう
日向は、手摺にもたれかかり、夜空を見上げた。俺もその隣に立つ
「今日、すごく楽しいよ、日向」
俺は素直にそう告げた
「そっか。よかったな」
日向は振り返らずにそう答えたが、俺の手を握る力が強くなった
俺は勇気を出して、日向に聞いてみたかったことを言葉にしようと、日向に声をかけた
日向が俺の手を握る力が強くなったのを感じ、俺は勇気を出して、ずっと聞きたかったことを口にした。
「あのさ、日向」
日向は夜空を見上げたまま
「なんだよ、改まって」
と答えた
「どうして、俺を気にしてくれたの?本当にただ、ムカついたから、それだけだった?」
俺の問いに、日向はすぐに答えなかった。夜空から俺のほうへゆっくりと顔を向ける
その瞳は、暗い中でもまっすぐで、ごまかしが効かない
「ムカついていたのは、本当だよ」
日向は少し時間をおいて、言葉を続けた
「お前が『なんでもいい』って言って、自分で自分を苦しめてるのが、見てて心底腹が立った。だから、ほっとけないと思って声をかけたのも、事実だ」
俺は息を詰めて、日向の次の言葉を待った
「でもな。それには、理由があるんだ」
日向はそう前置きすると、少しだけ遠くを見るような目をした
「今でこそ、あれだけ元気だけど、あいつが……ひまが幼稚園に通ってた頃の話だ」
日向は遠くを見たまま続ける
「陽葵は、同じクラスの男子三人組に、一時期いじめられてたんだ」
日向の口調は静かだが、その話の内容に俺は目を見開いた
いつも明るくて元気な陽葵が、いじめられていたなんて想像もできない
「本人たちは、好きの裏返しでいじめていたらしい。小学生にもなってねぇガキの言うことなんて、そんなもんだ。でも、当時の陽葵は、自分が嫌われていると思い込んで、一時期、幼稚園に行きたくないって号泣していた。いじめられてる自分が情けないって、幼いながらに葛藤して、俺たちにもいじめを言い出せなかった」
その時の陽葵の姿を思い出したのか、日向は一度言葉を切った
「いざいじめがバレて、親とか先生に問い詰められた男子たちは、慌てて嘘で誤魔化そうとするんだ。『遊んでただけだ』って」
日向は強く奥歯を噛みしめる
「それを見て、俺はムカついたんだ。陽葵みたいに、嘘や建前で自分が傷つくことを厭わない奴にも。そいつらみたいに、嘘をついて自分を守ろうとする奴にも」
日向は顔を俺に向けた
「お前を見て、過去の陽葵と姿が重なったんだ。お前は、嫌われるのが怖いから嘘をついて、自分自身を傷つけている。その嘘を、俺は見ていられなかったんだよ。それが、俺がお前に関わり始めた理由だ」
日向はそう結論づけたが、すぐに柔らかい表情に戻った
「だがな、今では、違う」
日向は俺の手に絡ませた指を強く握りしめた
「凛を知るうちに俺はわかった。お前はただの臆病な嘘つきじゃねぇ。意外と強気なところがあるし、たまに少しわがままな一面だって見れた」
優しく口角をあげて微笑む日向から目が離せない
「俺は、お前が意思を持った言葉を見つけていくのが、見ていて楽しかった。そして、誰に対しても嘘がない素の俺で、凛と関わっている時間が、一番落ち着くようになっていた」
日向は、夜空から花火が打ち上がる直前の、静まり返った街を見下ろした
「だから、俺はお前とこうして出かけたり話したりしたいと思えるようになった。ただ、俺の願いだ」
その瞬間、夜空に一発目の花火が打ち上がり、大きな音と共に、俺たちの周りを色鮮やかに照らした
「……日向」
俺の心臓は、花火の音よりもずっと大きく脈打っていた。日向の手の温かさと、彼が語ってくれた過去、そして今の素直な気持ち。すべてが、俺の胸に流れ込んできた
「俺も、日向といると、すごく安心する。日向が、俺の隣にいてくれることが……嬉しい」
俺は俯くことなく、花火の光に照らされた日向の目を見つめ返した。日向は満足そうに笑うと、俺の頭を抱き寄せた
「知ってるよ、凛」
この高揚感、この鼓動、この安堵感。
(ああ、そうか)
花火の光に照らされた日向の横顔を見て、凛は自分の気持ちの正体を、はっきりと自覚した
俺は、日向が好きだ
俺の心臓は、花火の音に負けないくらい、強く、大きく脈打っていた
この想いを、今この場で、好きという言葉にして日向に伝えたら、日向はどんな反応をするだろうか
知りたい
日向の驚いた顔、喜んだ顔、困った顔
その全てを見たい
しかし、その言葉を口に出す直前、恐れが押し寄せてきた
(もし、この関係が変わってしまうことが、日向にとって迷惑だったら?)
(せっかく友達として傍にいられるようになったのに、また一人に戻ってしまうのが怖い)
口を開きかけたが、好きという、あまりに重すぎる、そしてこの関係を終わらせてしまうかもしれない最後の言葉を、まだ、花火の光の中に溶かすことはできなかった
俺は花火を夢中で見つめる日向の手を握りしめた。それは、今はまだ、傍にいさせてほしいという、精一杯の願いだった
花火が終わると、空に漂っていた煙が月明かりに照らされていた
周囲の歓声は、名残惜しむようなざわめきに変わっている
「帰るか、凛」
日向は俺の手を握ったまま、高台から下りる階段へと歩き出した
俺は頷き、彼の大きな背中を追う
賑わう参道を抜け、駅前の人混みから離れたところで、二人は足を止めた
時刻は九時を回り、慌ただしさが漂い始めている
「今日はサンキューな。楽しかった」
日向は、繋いでいた俺の手を離そうとした
別れの瞬間だ。この特別な時間が終わってしまう。
心臓がドクンと大きく脈打った。頭の中に言いたいはずの言葉が渦巻くが、それは喉の奥に引っかかって出てこない
だが、その代わりに、昨日までなら絶対に言えなかった、素直すぎる感情が口をついて出た
「日向、……寂しい」
声は小さかったが、凛とした夜の空気の中ではっきり日向に届いた
日向の動きが、ぴたりと止まる。彼は目を見開き、驚いた顔で俺を振り返った
「は?寂しいって……お前らしくねぇな」
日向は困惑しているようだったが、その驚きの表情はすぐに消え、まっすぐな視線に戻る
「今日ずっと笑ってたじゃねぇか。楽しかったんだろ?」
「楽しいから、終わるのが嫌なんだ」
俺は俯き、日向の目を見れなかった
日向はしばらく沈黙した後、フッと小さく息を吐いた
「……そっか。そうだよな」
日向はもう一度俺の手を掴むと、今度は両手で包み込むように握った。それに顔を上げると、日向はしっかり俺を見つめていた
「夏休み、あと二週間くらい残ってるだろ。水族館もお祭りも、凛の行きたい場所だった。だがな、俺の行きたいところ、まだ全然行ってねぇだろ」
日向は少し意地の悪い顔でそう言うと、俺の頭をくしゃりと撫でた
「次、俺のわがままに付き合えよ。もっと遊んでやるしもっと連絡する。お前が一人で寂しくなる暇なんか、作ってやんねぇよ」
俺は、その言葉に安堵し、胸に込み上げる熱い感情を抑えられなかった
「うん!わかった、日向の行きたいところ、行こう!」
「よし。じゃあな、凛。明日、連絡する」
「うん、また明日、日向」
日向の大きな背中が夜の駅の改札に消えるまで、俺はその場を動けなかった
寂しさはまだ残っているが、次に会う約束という新しい光が、その寂しさを上書きしていた
賑やかな駅前を離れ、凛は一人、夜の住宅街を歩いていた
日向と別れたばかりだというのに、彼の大きな手の温もりが、まだ自分の手に残っているような気がした
(日向といると、すごく安心する。日向が、俺の隣にいてくれることが嬉しい)
先ほど花火の下で自覚したばかりの感情が、胸の中で脈打っている。それは、水族館のクラゲのように、静かで幻想的な美しさを伴う、「好き」という感情だった
ふと、凛の足が止まった。
今まで、誰かを特別に意識したことなどなかった。友人や家族への好意はあっても、胸を締め付けるような、あの熱を伴う感情は知らなかった
漠然と、恋愛対象は女性だと、何の根拠もなく思い込んでいた
世間一般と言われる形式に、自分がそうあるべきだと勝手に当てはめていただけかもしれない
それなのに、今、凛の心を占めているのは、紛れもなく男性である日向だ
(なんで……)
困惑が頭の中を渦巻く。自分自身がこんなにも戸惑っているこの感情の正体、この「好き」がどういう意味を持つのか、性別という壁が立ちはだかり、冷静な判断を鈍らせる
「……自分でさえ、こんなに混乱しているのに」
日向に伝えたら、どれほど困らせてしまうだろうか。日向は、自分のムカつく気持ちに嘘がつけないから、嘘でごまかしたりはしないだろう
だが、その正直な感情が、もし戸惑いや困惑であったら?
あるいは、もう二度と友達として関われないという拒絶であったら?
せっかく手に入れた、日向の隣という居場所を、この感情一つで壊してしまうかもしれない
そう考えると、自分の臆病さが、今は日向との関係を守るための防衛本能のように感じられた
家に帰って風呂からあがった俺は、今日日向が取ってくれたクマのぬいぐるみを取り出した
ベッドに横になり、クマを抱きしめる。柔らかくてふわふわなその感触は、日向が射的を狙う真剣な横顔と、それを見て笑う自分の感情を思い出させ、静かに目を閉じた
(男とか、女とか、そういうの、関係ないのかもしれない)
日向の隣で笑えたこと。日向の優しさや厳しさに触れたこと。日向の家族やぽんすけを知ったこと。そして、自分の弱さをさらけ出し、それでも日向に受け入れられたこと
「俺は……」
静かな部屋の中で、凛は誰にも聞こえないほど小さな声で、しかし確かな自覚を口にした
「日向だから、好きになったんだ」
性別や形式ではなく、俺を見つけてくれた、鈴井日向という一人の人間に惹かれたのだ
この気持ちの正体が何であれ、それは凛にとって、人生で初めて見つけた、嘘偽りのない本音だった
凛はクマのぬいぐるみを強く抱きしめ、日向とまた会える明日を思いながら、深い眠りへと落ちていった
今までの夏休みで、これほどあっという間で、これほど充実した夏休みはなかったように感じられる
水族館、夏祭り。どれも昨日までは想像すらできなかった、幸せな時間だった
お祭りから帰った夜は、興奮と寂しさが入り混じって、なかなか寝付けなかった
次の日の朝、目が覚めた時から俺はそわそわしていた
午前九時。まだ早い
午前十時。またチェック。なし
午前十一時。なし
昼食を済ませても、状況は変わらない。午後になっても連絡がないと、昨日感じた安心感が少しずつ薄れていくのを感じる
(もしかして、昨日の寂しいって言ったのが、重かっただろうか。俺ばかりが舞い上がっていて、日向はただの友達として、約束を律儀に果たしてくれただけだったのかも)
不安がどんどん膨らみ、胸の奥が冷たくなっていく
あの時、別れを惜しむようなことなんて、言わなければよかった
午後二時半。ローテーブルで、昨日日向が取ってくれた射的のクマのぬいぐるみを眺めていた時、ようやくスマホが震えた
画面には、日向の名前
俺は飛びつくようにメッセージを開いた
『おはよ。連絡遅くなってごめんな。昨日はちゃんと寝れたか?』
『大丈夫!おはよう日向。うん、ぐっすり。日向は?』
『俺はそうでもねぇな。朝から妹の宿題の監視役。宿題終わってねぇのに妹が朝から遊びたいって騒いでる』
日向からの返信はいつも通りだが、その向こうに陽葵ちゃんの元気な声が聞こえるようで、俺は思わず笑ってしまった
『陽葵ちゃん、宿題大変だね』
『大変なのは俺だ。んで、今日はその妹からの伝言だ』
『「凛お兄ちゃんとプール行きたい!」らしい。市民プールだけど、どうだ?』
予想外の誘いに心臓が跳ねる
日向と二人きりじゃなくても、また一緒に過ごせる時間ができることが純粋に嬉しかった
『プール!行きたい!いつ行く?』
『お前が乗り気ならすぐにでも行きたいけど、あいつの課題がな。自由研究が全く終わってなくて、親も巻き込んで大騒ぎだ。だから、あいつが宿題を全部終わらせたら、って条件で許しが出た。夏休み最終日になると思うけど、それでもいいか?』
夏休み最終日。まだ先だけど、確実に日向に会える約束がある
『うん、大丈夫だよ。夏休み最終日、空けておくね。陽葵ちゃんに頑張ってって伝えて!』
『了解。じゃあ、また連絡する。水着とか、準備しとけよ』
『日向もね!楽しみにしてる!』
日向のトーク画面を閉じる
顔が熱い。陽葵ちゃんのおかげだけど、夏休み中にもう一度、日向と特別な時間を過ごせる
(日向と、プール……)
日向とのトーク画面を閉じた後も、俺の胸の高鳴りは収まらなかった
ローテーブルに置かれたままの、日向が取ってくれたクマのぬいぐるみを抱きしめた
ぬいぐるみに顔を押し付けて、その喜びの熱を少しでも冷まそうとする
今年の夏休みは、最初から最後までドキドキしっぱなしなのかもしれない
夏休み最終日の朝、俺は約束の時間より少し早く、日向の家の前に立っていた
リュックには、昨日、準備しておいた水着と上に着るラッシュガードが入っている
玄関のチャイムを押すと、中から賑やかな声が聞こえてきた
「はーい!ちょっと待ってね、凛お兄ちゃん!」
ガチャリと扉が開き、水着の上から服を着ている陽葵ちゃんが飛び出してきた
「凛お兄ちゃん、おはよう!宿題、全部終わらせたんだよ!だから今日プール!」
陽葵ちゃんは誇らしげに胸を張る
その無邪気な笑顔を見ていると、俺の胸の緊張も少し和らいだ
「おはよう、陽葵ちゃん。すごいね、頑張ったね!」
「えへへ!おにいも褒めてくれたんだ!」
陽葵ちゃんに促されて玄関に入ると、リビングから日向が歩いてきた
「おはよ、凛。時間通りだな」
「お、おはよう、日向」
「なんだよ、顔赤いぞ。暑いか?」
「う、うん、ちょっとね」
「ほら、おにいたち、早く行こう!市民プール、早く行かないと混んじゃうよ!」
陽葵ちゃんに急かされ、俺たちは家を出た
市民プールは、夏休み最終日とあって、朝から家族連れや学生で賑わっていた
塩素の匂いと、子供たちの歓声が響いている
俺たちは早速水着に着替え、陽葵ちゃんの熱意に押されて流れるプールへと飛び込んだ
日向の引き締まった体を見て、俺は思わず視線をそらしてしまう
普段のシャツの下に隠されていた彼の逞しさは、俺の心を大きく揺さぶった
陽葵ちゃんは浮き輪につかまり、楽しそうにキャッキャと笑っている
日向はそんな陽葵ちゃんが流れるプールのカーブで壁にぶつからないよう、そっと浮き輪の向きを直してやった
その手つきは優しく、学校での鋭い彼とはまた違う、兄としての穏やかな顔だった。
たっぷり流れるプールを楽しんだ後、陽葵ちゃんは
「ウォータースライダーに乗りたい!」
と目を輝かせた
「じゃあ、並んでくるね!おにいたち、ここで待ってて!」
陽葵ちゃんはそう言い残すと、スライダーの入り口へ勢いよく走っていった。長い列ができている。
その間、俺たちは日陰のベンチで休憩することにした
日向は、自販機で買ったスポーツドリンクを俺に差し出してくれた
「ほら、飲んどけ。ひまは体力バカだから、付き合ってたらお前が先に倒れるぞ」
「ありがとう、日向」
隣に座ると、二人の肌に残るプールの水の冷たさと、夏の熱気が混ざり合う
他の人たちの賑やかな声はBGMのように遠い
俺は意を決して、聞いてみたかったことを口にした
「あのさ、日向って……付き合ってる人とか、いるの?」
口に出してから、質問が直球すぎたかと思い、すぐに後悔した
日向は、スポーツドリンクのキャップを弄りながら、俺をパッと見つめた
「は?いきなりなんだよ」
日向は少し驚いたような顔で俺を見たが、いつものような意地悪な笑みではなく、どこか複雑そうな表情だった
「いや、その……日向、かっこいいから。それに、誰かの本音に、真剣に向き合ってくれる人って、なかなかいないから」
俺は慌てて理由を付け加えた。日向の目を見つめながら、心臓が大きく脈打っているのを感じる
日向はフッと小さく息を吐いた。
「別に、今はいないよ」
俺は安堵した。しかし、日向は言葉を続けた
「去年の今頃は、いたけどな」
その言葉に、俺は少し動揺した。日向に彼女がいたという事実もそうだが、その過去を彼が自ら口にしたことが意外だった
「え、そうなんだ……どうして別れたの?」
俺は、もう聞くのをやめたほうがいいのかと思いながらも、彼の過去を知りたいという衝動を抑えられなかった
日向は、遠くを見つめながら、静かに語り出した
「簡単な話だよ。中学の頃に付き合って、高校が離れて、遠距離になった。そしたら向こうは男遊び。浮気なんてレベルじゃなかったな」
日向の口調は淡々としていたが、その奥にわずかな傷が見えた
「周りにも別のやつを彼氏だって紹介してたらしいし、かと言って問い詰めても嘘つくだけで、もう冷めたから別れた」
日向は俺のほうを向き、少し自嘲気味に笑った
「まぁそんなことがあったから、それ以来正直恋愛って面倒だと思うようになった。嘘をつかれるのも、疑うのも疲れるし傷つく。だから、今はいい。誰にも期待しないほうが、楽だ」
「そっか……日向も、傷ついてたんだね」
俺は、ただそれだけを、できる限り優しく言った
日向は、俺の言葉に一瞬目を見開いたが、すぐに表情を緩め、俺の頭をぽんと叩いた
「なに、憐れんでんのか?」
「違う!ただ、日向にもそういう、誰にも言いたくない過去があったんだなって……」
日向は笑った。その笑顔は、いつもの意地悪さではなく、心からの安堵を含んだ、穏やかな笑顔だった
「そうだな。でも、お前には話してもいいかなって思った」
日向は、俺の隣にいるという事実が、彼にとっても嘘のない、安らげる居場所であることを改めて言葉にしてくれたのだ
俺は日向の手を取って、強く握りしめた
「日向、俺はもう自分にも日向にも、嘘つかない」
俺がそう言うと、日向は目を細めて頷いた
「知ってる。だから、お前は俺の隣にいるんだろ」
その時、スライダーから降りてきた陽葵ちゃんが、こちらに走ってきた
「おにいたち、何話してるの?休憩終わり!今度は三人で流れるプール行こう!」
陽葵ちゃんの声に、特別な時間は終わりを告げ、日常の楽しさが戻ってくる。俺は日向と顔を見合わせ、笑った
(俺は、日向が誰にも話さなかった過去まで知ることができた。この関係を、もう絶対に手放したくない)
「好き」は言えない。今はまだ、この関係を壊すわけにはいかない
だが、日向が恋愛は面倒と感じているなら、俺は面倒じゃない、安心できる存在として、日向のそばにい続ける
日向の寂しさを埋め、過去の傷を癒す存在になる
日向が、恋愛を面倒ではなく楽しいと思える日が来るまで
それが、今の俺にできる、最大の愛情表現だと俺は結論づけた
俺の心は、夏の太陽のように、熱く、強く輝いていた

