たった今、十七年の人生で初めて分かったことがある。
 
カラオケで熱唱している最中に、店員さんが飲み物を持って部屋に入ってくる瞬間。それは、個人的に気まずいと感じる状況、ベスト5に入るということ。
 
しかも、私が普通のカラオケとは違う歌い方をしていたせいで、余計に気まずい。
 
ノックの音ですぐに歌うのをやめたけど、絶対に聞かれてたよね……。
 
「お待たせしました」

どんな顔をしていればいいのか分からない私は、とりあえず相手を見ないようにうつむいた。

アイスティーをテーブルに置く店員さんの手が、ちらっと視界に入る。人差し指にはめているシンプルなシルバーの指輪が光った。

「あ、ありがとうございます……」

きっと、変な奴だと思われただろうな。

とにかく早く部屋を出てほしいのに、下げた視線の先に見える赤と黒のいかついスニーカーは、なぜか全然動こうとしない。

もしかして、『ちゃんとカラオケを流して歌ってください』とか、注意されるのかも。

でも、私が〝こういう歌い方〟をしたのは、最初に歌うと決めていた曲がカラオケに入っていなかったから、仕方なく……。

「見つけた」

……え?

今、何か聞こえたような……。

そう思って恐る恐る顔を上げた瞬間――。


「命を救うと思って、あたしのために歌ってくんない!?」


店員さんはいきなりそう言って、私の手を両手でガッチリと握ってきた。

突然の出来事に戸惑いながら(まぶた)を激しく上下させた私は、目を見開いた。

ちょ、ちょっと待って。

この店員さんは……――。