「──ええ。確かに仰る通り、同業他社でもこの問題を扱っているところはございますが、私はぜひ、“日常の積み重ねをワンランク上に”と開発を続けている御社の理念に共感し、共に働かせて頂きたく思います」

若干前のめりにして勢いを出しつつ、インカメラをしっかり見据える。
頬が引き攣れるほど練習した不自然な笑顔を自然に見せて、リングライトを活用して明るく溌剌と──

で、なんとか取れました。内定。

画面に表示された内定通知書のど真ん中にあるのは他でもない、自分の名前。

高瀬尚(たかせなお)

殊更大きく表示されている気がして、ウィンドウを縮小化したり最大化したりと無駄な操作を繰り返した挙句、結局プリントアウトした。
コミュ障なのによくぞ笑顔で乗り切った。
いやいや、コミュ障だからこそ武装は笑顔ひとつしか残っていなかったのかもしれない。
オンライン面接なんていう誰も直面したことのない、手探りばかりの未曾有の就活。
それでもいつの間にか誰かが編み出した攻略法に乗っかり、オンラインなんちゃらを謳う企業に踊らされ、浮いたはずの交通費は通信費と周辺機器に消えた。