新世界旅団の中枢メンバー。それはすなわちいまここにいるケルヴィンくんとセルシスくんを除いた面々のうち、さらに自身を差し引いた4人であるとモニカ教授は言う。
 爽やかで美しいんだけど、どこか胡散臭い感じもする微笑みを見せつつ僕らを手で指し示していく。

「プロジェクト"ニューワールド・ブリゲイド"発起人にして主催者たるシアン団長。そして真っ先にその計画に乗ったナンバー2、サクラ副団長。加えて新世界旅団の、あらゆる組織からの干渉を受けない、自由という信念を象徴するソウマくんとレリエ」
「いつの間にやらレリエさんも象徴だって。お揃いー」
「どうしてそんなことに……えぇ……?」
「まあ、あれこれちょっかい出されそうな二人ではござるからなあ」

 知らない間にレリエさんも僕同様、新世界旅団の掲げる"あらゆる国家、組織から独立している冒険者パーティー"という信念の象徴みたいな扱いになってたよー。
 しがらみを忌み嫌い自由でいたい、そんな信念を体現してるんだってさ僕ら二人が。前から一応聞かされてたしそのくらいは担がれてあげようと思ってた僕だけど、レリエさんについては初耳だ、スゴいねー。

 もっとも当の彼女は思い切り手を両手に振って、イヤイヤないないって否定してるよー。
 元々一般団員のつもりだったみたいだしねー。実際、僕が案内したから入団したってだけの人ではあるし。それがたまたま古代文明人だっただけな話で。

 そんなつもりでいた彼女も、振って湧いた話に慌てふためき困惑していた。そりゃそうだいきなりパーティーの象徴パート2だって指名されてるんだから、なんのつもりなんだか分からなくてビックリするよね。
 そんな視線をも受け止めつつ、教授は彼女に答えて言った。

「スラム民と古代文明人だからね、政治的かつ社会的なメッセージも込めての立場とご理解いただきたい。さて、新世界旅団とは畢竟、この4人こそがオリジンなんだ。私も入団した以上、そこを履き違えるつもりは絶対にないよ」
「つまり、教授殿の提案はあくまで新世界旅団のためだけのものってことでござるか。調査戦隊復活など目論んでいない、と」
「そういうこと! 案ずるのは分かるけど、私だって3年も前に終わりを迎えた連中をいつまでも引きずってなんていないよ」

 そう言って紅茶を飲み干す。喉を潤しながら宣言したのは、教授が今や調査戦隊メンバーである以前に一人の人間、そして新世界旅団のメンバーであるということだ。

 この3年、杭打ちくんのメンテってことで教授とは定期的に会ってたけど、調査戦隊に対しての気持ちの切り替えはたしかにできていたように思うよー。
 レジェンダリーセブン全員勧誘する! なんて乗っ取り目指してるのー? って言われても仕方ないけど、そういうつもりがないらしいのはいい加減伝わってくるところではあるねー。

 僕が頷くと、シアンさんはそれを見てどこかホッとしたように、肩の力を抜いて話す。

「……まあ、そもそも勧誘に応じない人のほうが多いでしょうね。レジェンダリーセブンがわざわざ、新人冒険者のパーティーに入る理由もない」
「そこはそうだね。私だってレジェンダリーセブン全員が全員、新世界旅団に加入してくれるとはさすがに考えていないよ。いいとこ一人二人引っかかれば御の字ってとこかな? 現実的に言うとさ」
「すでにパーティーを組んでる者達も多いでござろうしなあ」

 レジェンダリーセブンをそもそも全員、仲間に引き入れられる保証だってどこにもないんだよね。
 すでに自分の道を見つけて歩んでるんだろうし、中にはパーティーを組み、率いている者だっているし。

 そんな彼らが揃ってうちのパーティーに! なんてのは実のところ、可能性は低いと思うよ。
 だからといって最悪を想定しない理由はどこにもないけれど、そればかりを前提にすべきでもないよねー。

 教授もその辺には理解を示しつつ、けれどと言った。
 勧誘が失敗したとしても、それはそれでそれなら次善の策に移ればいいってね。

「とはいえ、すでに別の所属先があるという場合でもソウマくんとは再度友誼を結ぶだろうから、それはそれで人脈構築に大きなプラスになるよ」
「ふむ……たとえばやはり、レイア・アールバド。ウェルドナー・クラウン・バーゼンハイム。ああ、"戦慄の群狼"なんてパーティーを自前で率いているリューゼリア・ラウドプラウズもありえますか」
「協力関係の構築、かあ。向こうがソウマくん目当てにわざわざこの町までやってくるって言うなら、団員に引き込めなくてもその辺の人間関係は手に入るかもってわけね……」
 
 極論、このリューゼともしも縁を結び直せた場合、彼女らのカリスマ、彼女らの戦力にも縁ができるしね。
 最低限、どう転んでも得るものがあるように──なんて。いかにも教授らしい、一石で、二鳥にもなり得る策だよー。