「留美子、ごめん。そ、それでさ、こうやって出てきた時に廊下の影に気づいて、翔太が入ってきたんだよね。それで校内放送が流れて『赤い人』を背後に呼ばれて……その時に私の後ろにいた結子が私を倒して逃げたの」


説明しながら、倒れるフリをする。


さすがに、本当にトイレの床に倒れたくはないから。


手洗い場の前に、その時のように翔太には立ってもらっている。


「結子役の私は、その横を通って逃げればいいんだよね?」


そう言い、ブラシを持ったまま入り口へと走る留美子。


「お、おい!しぶきが……汚いな!!」


「あ、ごめんごめん」


何も、ブラシを持ったまま演技しなくてもいいのに……。


と、そう考えた時、私の頭の中で何かがつながった。












分かった……結子がどうして「昨日」、当初の目的地とは違う場所に行こうとしたのに余裕だったのか。


そしてそれは、最後のカラダがどこにあるかも示しているのだ。


「ごめんじゃないぞ! 危うくしぶきがかかるところだ!」


「だから、謝ってるじゃん。わざとじゃないんだし……」