本人にそのつもりはないだろうけれど、何かお礼がしたいな。


あの時殺されていたら、私がカラダを見つける事ができなかったから。


「俺のおかげって……俺、何かしたのか? 『赤い人』に追いかけられただけなんだけど……」


「家政学室に来てくれた時、あと少しで『赤い人』に見つかる所だったんだよ。翔太が来てくれなきゃ、私は殺されてたよ」


学校に行く準備を済ませて、家を出た私は、伊勢からのメールの返信を待ちながら道を歩いていた。


ひとつとは言え、カラダを見つけた達成感があるけど、逆にカラダをひとつ見失ったという負い目もある。


うれしそうにメールを送っても、褒めてはくれないかな?


携帯電話を気にしながら、通学路を歩いていると……。


「お、おはよう美雪。あれからどこにいたんだ?」


いつもは私の前を歩いているはずの翔太が、背後から声をかけて来た。


「あ、おはよう。昨日は翔太のおかげで助かったよ」


隣に並んだ翔太に、まだ慣れない笑顔を向ける。