「仕方ないよ、二階から行くしかないよね」


留美子はそう言うけれど……。


二つ目の異変が問題だった。


「待って、翔太の声が聞こえない。きっと、今頃二階の廊下を走ってるよ」


そう、一階から行けないとなると、生産棟に行くには、二階の渡り廊下から行くしかない。


だけど……その二階には、翔太と「赤い人」がいるのだ。


「ちょっと! それじゃあどうするのよ! 上に行ったら『赤い人』を見るかもしれないんでしょ!? なら、こっち側の一階しか調べられないって事じゃないの!?」


せっかく翔太が囮になってくれているのに、こちら側だと、校長室以外は、事務室、保健室、会議室、職員室と各教室。


生産棟にある部屋と比べれば、部屋数は圧倒的に少ない。


翔太の事を考えると、カラダのひとつも見つけたい。


そう、思っていた時だった。


「じゃあ、翔太と『赤い人』が廊下を走った後に階段を上がって、生産棟まで走る。生産棟に入ったら、すぐにある階段を下りればいいだろ?」


「ちょっと高広、それ本気なの!? 失敗したら……こっちに来るかもしれないんだよ!?」


留美子のいう通りだ。そんな危険な賭けをするくらいなら、こちら側の教室を調べた方が良い。