そして、その中にいた誰かが、このホールに来ると言っている。


それが誰なのかという恐怖はある。


今まで散々「赤い人」を移動させて、私達をもてあそんだ人物だ。


恐怖よりも、皆を消去したという怒りの方が強いかもしれない。


放送室からここまでなら、3分もあれば来る事ができる。


せめて皆の分、殴ってやらないと気が済まない。


その人物が来る間、私の頭の中では、この数日間の事がいろいろと思い出されていた。


初日に生徒玄関で全員殺された事、二日目に翔太が仲間を犠牲にして、私達の関係にヒビが入った事、健司が山岡泰蔵に取り憑かれた事……本当にいろんな事があったけど、皆がいたからそれを乗り越える事ができた。


……高広に告白されたけど、返事をまだしていない。


こんな事になるのなら、あの時に返事をしておけば良かったと後悔しても、もう遅いんだよね。


恐怖、怒り、悲しみ、後悔……負の感情だけが私を支配して、それが徐々に憎しみへと変わっていく。


ホールの西側の入り口を見ながら、その人物を待っていると……。






キュッ、キュッ、という、上履きが床にこすれる音と共に、その人物の黒い影が廊下の奥に見えたのだ。


いよいよ私の前に、放送室の中の人が姿を現そうとしている。