「来ねぇな……って、まだ早すぎるか?」


留美子と理恵を背に、避難口誘導灯の緑の光に照らされている高広が呟いた。


健司らしき人影が、工業棟の方に向かった事はわかっていたが、なるべく時間をかけたくないという思いが高広にはある。


なぜなら、健司がいつ泰蔵に、身体を乗っ取られてしまうかがわからないから。


「赤い人」を探す時間が長引けば長引くほど、その確率は上がるのだ。


高広は元々、幽霊だとか呪いだとかいう話を信じてはいなかった。


だからこそ、「カラダ探し」を始める前には、皆の事をバカにしていたのだ。


しかし、それが本当に起こってしまい、高広は考え方を変えた。


自分がバカだという事は、理解している。


こんな「呪い」に巻き込まれて、できる事を自分なりに考えた結果、導き出した答えはひとつ。


「明日香を守るために、最善を尽くす」


そう考えていたからこそ、今までの「カラダ探し」で、パニックを起こさずに、冷静でいられたのだ。


格好悪い所は見せられない。


約束は守る。


「赤い人」を前にしても、6人の中で誰よりも冷静でいられた理由はそこにあった。