いや、それよりも、体育館の中にカラダがあって良かった……。


「その事なんだけどさ……どうして明日香だけ名前を呼ばれたの? あんな事されたら、あっと言う間に死んじゃうじゃん、反則だよ、あれはさ」


そうだ、この事は皆に教えなければならない。


放送室には誰かがいて……そこに入ろうとすれば、「赤い人」を背後に呼び寄せられてしまう事を。





「おいおい、それ、マジかよ……」


「そんなの、放送室にカラダがあったら、絶対探せないじゃん」


放送室の事を話して、ふたりの率直な感想がその言葉だった。


留美子の言うように、もしもそこにカラダがあれば、私達は「カラダ探し」から、永久に抜け出す事ができないかもしれない。


そんな話をしながらしばらく通学路を歩いて、理恵とも合流した。


「皆、おはよう」


元気そうに見せてはいるけど、高広から離れて歩いている。


やっぱり、健司に襲われた事がショックだったのだろう。


意識して、男子を避けているように見える。


そして……また、あの猫が目の前に現れた。


これから自分が車にひかれて死ぬなんて思ってもいないだろう。