芳乃さんが起きないのをいいことに、彼女の眼鏡を手に取る。


赤いフレームの眼鏡を、
起こさないよう慎重に、芳乃さんにかけてみる。




「ん。」



長い睫毛が少し揺れたが、芳乃さんは目覚めない。



俺はまた、静かに笑みを零す。

こんな子供じみた一人遊びまでやるなんて重症だな。





芳乃さんに覆いかぶさると、ベッドがギシリと音を立てた。


耳元に、唇を寄せて囁く。



「愛してますよ。」





起きていたら、きっと頬を赤く染めるであろう芳乃さんを想像する。


仕事では大人なのに、少女のような顔をするから可愛くて堪らない。


だから、からかったり、イジメてやりたくなる。




俺は曖昧に笑って、適わねぇな、と呟いた。






貴女には適わない。

俺は貴女でいっぱいだ。














“今度の休みは二人で海に行きましょう?”




芳乃さんが起きたら、そう言おう。



青い空、青い海、白い砂浜、夏の海。



“出来れば水着で”、
なんて言ったら、きっと文句を言いながら狼狽えるんだろうな。






芳乃さんが目を覚ますまで、もう少し。




もう少しだけ、このままで。


貴女の隣で眠ろうか。









俺は、その細い肩にキスを一つ落として、
朝焼けの中で瞳を閉じた。































――――〈 end 〉**




















はじめまして!の方も、

そうでない方も、

こんにちは*



水野ユーリです。














『27年後の王子様』を最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


今年の2月から更新を開始して、やっと完結まで辿り着くことができました。


ここまで来るのに、予想以上の長い時間がかかってしまいましたが、読者の皆様の存在があったからこそ書き上げられたのだと思っております。




『27年後の王子様』は、
“上司と部下で三角関係”を書いてみたいなぁ、という気持ちから生まれました。


恋愛経験ゼロで仕事に情熱を傾ける、生真面目かつ優柔不断な芳乃。

二重人格でイマドキのドライな若者だった佐倉くん。

そして、ずっと芳乃を見守り続けてきた理想の上司・路木さん。


三人の恋模様を中心に、仕事や人間関係についても書いてみました。


芳乃の優柔不断さには私自身も四苦八苦…かなりスローラブな物語になったような気がしています(汗)




また、芳乃の性格や仕事、人に対する接し方は、私が思う理想の上司だったりします。


なかなか芳乃のような上司には出会えないのが現実ですが、こんな上司がいたらいいなぁと思いながら書いていました。


ちなみに、芳乃と佐倉くんの職場でもある駄菓子屋『みかづき屋』。

私の駄菓子屋バイト経験から芳乃たちの職場として選びました。





さて、長々と書いてしまいましたが、
言い訳がましくなってきそうなので、このくらいに致しましょう。




反省ばかりの拙い作品を、ここまで読んでくださった皆様に心からお礼を申し上げます。


全ての読者さまに感謝を込めて。

ありがとうございました*








2011年6月17日


水野ユーリ





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