私は苦笑しながら、

「動かさないでねぇ。本社で決められてることだから。」

と、やんわりと注意する。



「だってぇ…退屈なんですもん。マリ、知らない曲ばっかりだし…。」


「(退屈って…仕事だからっ!)」


「知ってる曲の方がテンションも上がるし、モチベーションも上がるじゃないですかぁ?」


「(テンション、ねぇ…。)」


「あっ!でも、懐かしの駄菓子屋だからって音楽まで懐メロってこだわりスゴいですよねぇ〜。」


「(分かってるなら動かさないで…。)」




今にも引きつってしまいそうな苦笑を浮かべたまま、いくつかのツッコミを噛み殺す。




耐えろ!私!!


今、口を開いたら、怒鳴ってしまいそうな自分が恐ろしい…。






その時、お客さんの「すみませーん」という声。……助かった。



マリちゃんは甘ったるい声で、は〜い!、と言いながらレジへ向かっていった。









よく頑張った!自分!




有線くらいで十代の子に怒鳴ったら、後に虚しくなるのは自分だ。



だいたい器が小さいじゃない。

せっかく、みんな仲良く働いてる職場だもの。




もっと大らかに!


広い心を持って、ねっ!