会計時、 やはり金額より多めに支払うと、釣りも受け取らなかった。 会員証で見た少年の名前は『花本千早(はなもと・ちはや)』。 俺はまだ10分前にも関わらずタイムカードを切ると、身仕度を整えて、慌てて少年の後を追いかけた。 ツレのギターも、背負って。 俺の夢は、きっと、 まだまだ捨てたモンじゃねぇ。 そう思える希望に出会えたのだ。 見失うわけにはいかなかった。 まだ明けきらない真冬の空は、薄紫色に滲んでいる。