唇が離れても、俺は呆然としていた。
だらしないことに、身体に力が入らなくなって、へたりとしゃがみ込んだ。
そんな俺に合わせて、花本千早も屈み込む。
そして、俺の耳元で言った。
「顔、真っ赤。」
ゾクッとした。
瞬間、足元から熱が駆け上がってくるような。
慌てて手で顔を覆うと、花本千早はクスリと笑う。
「もしかして初めてだった?」
「ッ!バッカじゃねぇの!?」
女が男に言うセリフじゃねぇ!!
顔を上げると、花本千早の顔が至近距離にある。
動揺しまくる俺を捕えて離さない、その瞳。
「千、早……。」
俺を嘲笑うように、花本千早は再び俺の耳元に唇を寄せる。
「なぁ、壱?」
「ッ!」
名前を呼ばれただけだ。
それだけだ。
なのに、何だって……。
心臓が飛び跳ねて暴れている。