「『青年は思わず息を呑んだ。
まだ幼さの残る彼の眼差し、些細な仕草の一つでさえ、自分を掴んで放さない。
泉のように沸き上がる欲望に青年は戸惑っていた。
無理もない、なぜなら青年は未だ誰とも肉体関係を結んだという経験がないのだから。
初めて知る自分の男の』」


「や・め・ろ!!」



俺は不快感を丸出しにして、香住を睨みつける。


「いちいち文章起こすな、変態作家。それに俺は童貞じゃねぇ!」


香住は苦笑する。




「でも、さっきから新入りクンをガン見してたのは事実だし、ボクらが知るかぎりイッチーに浮いた話ってないよねぇ〜。」


無邪気にリョウが口を挟む。





俺は、もうツッコむ気力すら失せてしまった。



コイツら、人の気も知らねぇで…。






テーブルを囲んで好き勝手な会話が進む中でも、花本千早は食い物以外に興味がないらしい。



香住がデザートに出した、スイカを器にしたフルーツポンチに夢中だった。






……どんだけ飢えてたんだよ。