「またまたイッチーは相方にフラれちゃったんだってさ!」
デカい手鏡を片手に、リョウは好き勝手に言っている。
「これで何回目だっけ?バンド解散したのって?」
「…9回。」
「いよいよ2ケタ来るよぉ〜!」
この腹黒ホストに、俺はいちいちイラつく。
「まぁ、いいじゃないですか。壱はまだまだこれからですよ。」
香住はパエリアを運んできて言った。
テーブルには、
シーフードのパエリア、ほうれん草とベーコンのキッシュ、トマトクリームスパゲティ、スペアリブ、ローストビーフ、生ハムとクリームチーズの生春巻。
「いくら歓迎パーティーだからって豪華すぎね?」
「デザートもありますよ。スイカを器にしたフルーツポンチです。」
「……そうか。」
香住はいい主婦みたいだ。
だが、白いフリルのエプロンをつけているあたり、やはり王子の仮面を被った変態に思えてならない。
鏡の中の自分にうっとりとしていたリョウは、思い詰めたように呟く。
「新入りってさぁ、ボクよりイケメンかなぁ。あー、やだなー。」
……知らねぇよ!つか、どうでもいいよ!