ブランコやら、滑り台やらを通り過ぎて、さらに公園の奥へと進む。
整備された散歩道の先に広場がある。
右を見ても、左を見ても、桜、桜、桜。
それほど込み合っているわけではないけれど、花見を楽しむサラリーマンや大学生らしいグループがいくつか。
……ヤバッ!中学の時のアズキ色ジャージで来ちゃったよ…。
左胸には、しっかり『川野』と刺繍までされている。
美男子と歩く、ジャージ女………一体、他人の目には、どう映るんだろう。
……少なくとも、“ペットとご主人サマ”とは誰も思わないな。
「ツバサちゃん、あっちにしない?」
「え?」
ジンが指し示した方向には、小高い丘の上に桜の木が一本だけ。
華やかさには少し欠けるけど、人気はないようだった。
「ゴメンね。俺、人が多いところって苦手でさ。」
ジンは苦笑した。
本当に人の多い場所が苦手なだけなのか、それとも人目をちょっぴり気にした私に気がついてくれたのか。
どちらにしても、ジンのそういうさりげない優しさに私は弱い。