沢崎さんは、言った。
「君は、俺たちとは住む世界が違う」、と。
その意味が、その言葉の重さが今は分かる。
もう、何もかも遅すぎるのかもしれない。
遠すぎる。遠すぎるよ。
まるで別世界じゃないか。
……後悔ばかりだ。
どうして、私は自分の気持ちを伝えなかったんだろう。
変なことにこだわって、ご主人サマとかペットとか……そんなことに………。
もう会えないかもしれないと分かっていたら、
ちゃんとジンの目を見て話をした。
いなくなると分かっていれば、恥ずかしさなんて簡単に捨てたのに。
……“たら”、“れば”、なんて何の役にも立たない。
ステージで星のように輝く一ノ瀬 仁は、私の愛犬だったジン。
私たちが過ごした日々は、とても短い。
短いけれど、きっと私の生涯をとっても、
あれほど愛しく幸福で濃密な時間は存在しないだろう。