「とりあえず、いま沸かすんで、お風呂入ってください。風邪ひかれて、責任だの、何だのってなると面倒なんで。」
振り返ってそう言うと、男は呆然として部屋の中を見渡していた。
「……ここ、君の部屋?」
「えぇ、そうですけど。」
私の答えに、男は驚いたようだった。
「……女の子の、部屋だよね?」
それまで何を不思議がっているのか分からなかった私も、その言葉で察しがついた。
まぁ、確かに……私の部屋を一言で表現するなら“ゴミ屋敷”。
これ程ピッタリな言葉はないと、自分でも思っている。
テーブルがあった、ソファーがあった、と思われる(たぶん…)場所に衣類の山。
下着も含めたそれに、すっかり埋もれている。
床は足の踏み場もなく、マンガや雑誌。
私の足元には、なぜそこにあるのか自分でも分からなくなったフライパンが転がっている。
そんな部屋の中で座り込んだままの男は、目を点にしていた。
その視線の先に、ベランダ。
スペースが広く、開放的なデッキテラスのような造り。
だが、高級で広い部屋も、洒落たベランダも、生かすも殺すも自分次第なわけで…………。