「やっぱり、そうだ!
1組でも話題になってたんだよ!3組のキレた学級委員・蒼井さん!」
そう言って、男子は笑った。
素直すぎる、というか……あまりにも真っすぐな笑顔だったから、あたしは一瞬どきりとした。
笑った時に、八重歯が見える。
「あっ!蒼井ちゃんも罰掃除?」
呼び方が急に“蒼井ちゃん”になった事には突っ込まず、あたしは頷いた。
「そっかぁ。俺もさぁ、全校集会で教頭のヅラ取ったら罰掃除でさ。」
知ってるよ、と思ったけど口にはしなかった。
「あっ!そうだ!
俺、百瀬 透。クラスの奴からは“モモ”って呼ばれてるから、蒼井ちゃんも“モモ”って呼んで。」
一方的に喋り続ける百瀬を無視して、あたしは手にしていたデッキブラシで掃除を始めた。
「でも、ひでぇよな。
ヅラ取って、せっかくウケたのに罰掃除って。」
人懐っこい笑顔だと思った。
たぶん、クラスの人気者タイプ?
でも、そんな事はどうでもいい事だった。
プールサイドに放り出されたままのデッキブラシ。
コイツは、掃除をする気がないらしい。
「蒼井ちゃん、下の名前は?」
「………エリ。」
「エリかぁ……。
じゃあ、“エリー”って呼ぶわ。」
……まただ。
つーか、コイツもだ。
イライラする。