陸の隣で日本代表のユニフォームを着た悠太のおじちゃんが、食い入るようにスクリーンを見つめていた。


「おじちゃん、ものすごい緊張してんな」


陸がこそっと耳打ちしてきた。


「うん……」


おじちゃんの額から流れる尋常じゃない汗を見つめながら頷いた。


隣に座っている悠太のおばちゃんが「お父さん、緊張し過ぎよー」と笑った。


「母さん、これちゃんと録画してきたんだろうな?」


「あら? お父さんが録画しておいてくれたんじゃないの?」


あっけらかんとしたおばちゃん対して、おじちゃんの顔が真っ青になった。


「ま、まぁ何だ……録画なんかしたってな……」


「いやだぁ、録画忘れちゃったの!?」


「結局はリアルタイムで見ることに意味があると言うか……」


それまで無言だった陸がおじちゃんの腕を小突く。


「おじちゃん、国歌斉唱だよ!」


「お、おおう! ほら母さんも見なさい」


思わずぷっと吹き出してしまった。

日本の国歌斉唱が始まると、順々に選手が映し出された。

スクリーンに穴が開きそうなくらいに見つめる。



「悠太」おじちゃんが呟いた。


またもや体育館では声援が巻き起こる。


「ぅわぁ……」


陸が間抜けな声を出した。