あれは、県大会から2ヶ月が過ぎた初雪が降った日のこと。

私は父に頼まれて、悠太の家へ電球を届けに向かっていた。

悠太の家は小さな洋服屋を営んでいる。

今でもはっきり思い出せる。

あのアスファルトに薄く積もった雪の感触。

制服のブレザーの下にセーターを着込み、更にマフラーをぐるぐるに巻いて足早に歩く。


寒い、寒い! そろそろ手袋を出さないとキツイな。

なんて考えながら、ブレザーのポケットにすっかり冷えた手を突っ込む。

街頭が少なくなる商店街の終わりに悠太の家がある。

早く家に入って暖まろうと、急に駆け足になる。