「俺の名前呼んで大騒ぎしてただろ。俺が、ここに居るのも知らないで『帰ってくるー』って。気分はどん底なのに、お前等のはしゃいでる顔見てたら笑えてきたよ」


そういえば、あの時、大騒ぎする私たちの間を冷たい風が吹き抜けたことを思い出す。

こんなに暑い夏なのに、今思えば違和感があった。


あれは……悠太がいたからだったんだ。


「おかしくなって、『相変わらずうるせぇなぁ』って笑ったんだ。そうしたら、お前等驚いた顔して俺の事見ただろう?……俺が一番びっくりしたわ!」


そう嬉しそうに笑うと足元に転がった石を蹴り上げた。

乾いた音を立てて石が落ちる。


「なんでこうなったのかは俺にもずっと分からなかった。それは最期まで分からなかったんだよ」


真剣な表情で悠太が私たち2人に振り向く。


「14日の早朝に俺は死んだ」


悠太の声で初めて聞く“死”という言葉。

胸がつかえて何も言えない。


「志津の前から居なくなったあと、ずっと一人で考えていた。その時、ばあちゃんに言われたことを思い出したよ。俺には伝え残した事があったって事を……」