踵を踏み潰した上靴が、時々脱げそうになった。

手紙には素っ気無く書いたけど、本当はすごく、すごく嬉しかったんだ。


絶対誰にも言わないけれど、今、死ぬほど嬉しい!


私は、この日をずっと待っていた。


「また会おう」と別れたあの冬からずっとずっと待っていた。


転げ落ちそうな勢いで階段を降りていると、泥だらけのユニフォ―ムを着た弘人が、後輩と談笑しながら上がって来た。


「弘人!! 陸は?」


「陸? 帰ったけど……なんでそんな焦ってんだよ、お前」


口をへの字に曲げて弘人が眉間にしわを寄せた。

「分かった! ありがとう!!」と早口でお礼を言うと、弘人の横を通り過ぎて再び駆け下り出す。