放課後の食堂には、誰もいなかった。


あたし達は入り口近くの席に向かい合って座る。


カップを手にしているものの、熱くてなかなか飲むことができないあたしを

イッペー君は「猫舌~」ってからかう。


「だって、普通アイス買うと思うじゃん! なんでこの季節にホット? 意味わかんないし。てか、自分だけ、冷たいの買ってズルいよ」


あたしは氷が入ったイッペー君の“牛乳屋さんのコーヒー(アイス)”を恨めしげに眺めた。


「サクラちゃん」


なぜにちゃん付け?

不思議に思って顔を上げた。

イッペー君は、頬杖ついてにんまり笑う。


「冷たい方が良かったんやったら、ちゃんと言わなあかんで。思ってるだけでは何も伝わらへん。伝えたいことは、はっきりと言葉にせな。だから言葉は大事。よって国語も大事」


「でも、この場合、国語教師ならむしろ、あたしの心情を汲み取って欲しかった」


「おー。言うなぁ」


「先生、そんなお説教じみたことするために、あたしにコレ買ったの?」



ということは、あえてのホット?