あれは緑が眩しい新緑の季節。


1学期の中間テストの結果が出てすぐのこと。


あたしはイッペー君から呼び出しをくらった。


放課後の職員室。

イッペー君はイスをクルリと回してあたしの方を向いた。



「サクラはぁ、国語、苦手?」


あたしの現国のテスト結果は、赤点こそ免れたもののかなりスレスレといった感じだった。

他の科目は……古典ですら結構できる方だ。

それなのに、よりによってイッペー君が担当している現国だけは苦手だった。

それを気にしたイッペー君は、話がしたいと、あたしを呼び出したのだ。


「……苦手っていうか……嫌いっていうか……」


「んんんー? 嫌い? なんでや?」


イッペー君は手持ち無沙汰なのか、さっきからライターの蓋をカチカチと開けたり閉じたりしている。


――タバコ吸うんだ。

なんとなく意外。

校内は禁煙しなきゃいけないから、結構ツライんじゃないかなぁ……なんて、今考えなきゃいけないこととは別のことを、あたしは考えていた。