「ま、バレたらバレたで……」


いつものように能天気にそう言いながら自転車をこぎはじめるイッペー君。


「適当にごまかせるやろ。
『道端で行き倒れていたサクラさんを救出しました!』とか」

「何それー。ウソつくならもうちょっとマシなウソ考えてよー」


パシンと軽く背中を叩くと

「わはは。ほんまやな。オレ、アドリブ弱すぎやな」って楽しそうに笑う。



「サクラって家どこやっけ?」

「若葉町」

「おっけ」


自転車はどんどん加速していく。


「ちゃんとつかまっとけよー」

「う、うん」


体が揺れて、背中に顔をぶつけそうになった。

いつもの香水の香りがして、ドキドキする。

あたしの緊張が背中から伝わりそうな気がして、慌てて話題を探した。