影に咲く恋、光に散る命【シナリオ】

光「私のことが好きだと言ってくれただろう?」
ベットの上で唯菜に覆いかぶさり、光は距離を詰めた。唯菜の唇に自分の唇を押さえつけると、着物の中に手をすべらせ、片手で帯をほどく。
唯菜「ん…。」
光は微笑んだ。
光「…もう怯えないのだな。」
顔を赤くする唯菜。光が首筋に唇を移した、その時だった。
安江「坊ちゃまー!」
突然の安江の登場に光は顔を上げる。
光「間が悪い。」
不機嫌そうに、でも仕方がなしに起き上がる光。
唯菜の胸の高鳴りは消えず、それでも先があったらと想像してしまう自分がいて、何だか恥ずかしくなってくる。
安江「満さまのご学友である、雅さまが先程いらっしゃったそうです。」
光「雅?誰だそれは。私は知らない。」
安江「西園寺家の当主だそうです。家宝の影生みの刀と姫那さまを引き取られにきたとか。でも、唯菜さまにも興味を持っておられるようで…。」
光「唯菜は何も関係ないだろう。」
安江「雅さまは、唯菜さまが光の守姫であることを既にご存知なのです。」
光「それに何の関係がある。要件をはっきり言え。」
安江「私の口からは…。とにかく、今、満さまが雅さまと面談を行っている最中なのですが、光さまも唯菜さまも同席して頂きたいと満さまから仰せつかっております。」
光はため息をつく。
光「とことん面倒臭い家なのだな、西園寺家とは。」
乱れた胸元をただしながら、唯菜は上半身を起こす。
光「唯菜、気が進まなければ必ず同席しろとは私は言わない。父上の命であっても、私の口から断ってもかまわない。どうする?」
唯菜「…同席します。」

雅は確かに神楽の父親のようだった。一つに束ねた癖のある長い黒髪に、片眼鏡をかけた容姿は親子といえるだけあって似ている。テーブルを前に、満と向き合うように雅と姫那が座っていた。二人が部屋に入った瞬間、姫那は声を上げて光に抱き着く。
姫那「光さま!今の私の旦那様は貴方ですよね!?」
光は冷たい視線を送っていたが、姫那はそうでしょと言わんばかりに瞳を輝かせる。
雅が苦笑する。
雅「息子が不憫でしょうがないな。あんなに君を愛し尽くしていたのに。」
姫那「私は神楽さまのことを思って、影生みの刀を鷹山家に預けたんです!影生みの刀がなければ、あの方はもっと長生きできる。」
雅「いやいや、それ以前の問題で君と夫婦の契りを結んだ時点で、命の代償は君が払うことになってたんだよ。それは神楽から聞いているだろう?本当に、自分が見えていないようだね。神楽は君を愛していたから、君の望むものは何でも買い与えていたというのに。」
満「彼女の散財ぶりは、我が家に来ても相変わらずでしたよ。」
やれやれと満がため息をつく。
雅「影生みの刀と影の守姫である姫那は、西園寺家に引き取らせて頂きます。」
姫那「はあ!?」
信じられないといった様子で姫那は怒りをあらわにする。
雅「君は既に死んでいる。逆にいうと、西園寺家の中でなら生きられる。」
姫那「…は?」
その場が凍り付く。
唯菜からすれば、姫那は死んでいるようには見えなかった。姿かたちもはっきりしているし、今もこうして普通に会話をしているのだから。
唯菜「あの…姫那は、本当に死んでいるんですか?」
雅「そうだよ。」
即答する雅に、
姫那「そんなわけないでしょ!」
と姫那は声を荒げる。
満「影生みの刀は、山の中の社に祀ってあります。影の守姫と一緒に、とっとと帰っちゃって下さい。」
雅「この度は世話をかけました。」
頭を下げる雅に、姫那は納得のいかない様子。
姫那「私は光さまと一緒に生涯を終えるのよ!光さまもそれを望んでいるんだから!」
光「私は唯菜を妻に迎えるつもりでいる。」
姫那「…は?お姉ちゃんは鷹山家の女中でしょ!?」
雅は興味深げに唯菜に視線を向ける。
雅「まだ正式に床入りの儀は済ませていないようには見えますが。」
満「ほぉ。君は守姫が契りを結んだかどうか区別がつくのか。」
雅は思わず笑みを漏らす。
雅「よ~く見れば分かりますよ。それで、安心しました。唯菜さん?でしたか。一度、西園寺家に来て頂けませんか?というか、二度目ですね。今度は屋敷の中にも入って頂きたい。」
光「何故そんな真似を唯菜がせねばならない。」
光の表情が険しくなる。
雅「姫那さんのせいかもしれないんですが、神楽の体調がここの所優れないんです。それに光の守姫である唯菜さんなら、姫那さんを救える可能性はまだあると思うんですよ。」
唯菜「私に、そんな才能が?」
雅「ええ。」
にっこりと微笑む雅に対し、光は反対のようだった。
光「唯菜、惑わされるな。そのようなことを唯菜がする必要はない。」
雅「可愛い妹の為だ。そう思わないかなと私は思ったんですが。」
当の姫那は、
姫那「私が死んでる?そんなはずはない、そんなはずは…。」
と顔を青くしていた。その様子を見た唯菜は、姫那の手を取って握りしめた。
唯菜「姫那、いつだって貴方は私の妹よ。」
姫那「お姉ちゃん…。」
姫那の目には涙が滲んでいた。
姫那「死にたくない。死にたくないよ、お姉ちゃん…。」
どんなに憎く思われようとも、血の繋がった姉妹だ。
唯菜「私は西園寺家に行きます。」
と唯菜は宣言した。