翌日。
瑠璃は貴弥に連れられて、郊外の一軒家を訪ねていた。
「この羽織紐にケガレが付着していた可能性が強い、と」
座布団の上に足を伸ばして座った男性が、貴弥から受け取った羽織紐をまじまじと眺める。足にぐるぐると巻かれた包帯が痛々しい。
彼こそが、貴弥と共に三春屋を訪れた祓い師、貴弥の「目」を担っていた茅木憲久だ。
年齢は二十代半ばくらい。人好きのしそうな顔をしている。
別件で怪我をしてしまい、今は自宅で療養中。杖を使えば歩けるものの、基本的には安静が必要だという。
迎えてくれた憲久は元気そうだったけれど、足の様子を見る限り、まだ復帰には時間がかかりそうだ。
「ああ。滝本工房というこういった着物のための小物を作る工房があるんだが、そこで作られた物らしい」
貴弥が集めた情報を説明する。瑠璃と貴弥は憲久の布団の側に並んで正座をし、憲久の様子を伺っていた。
憲久が見つめているのは「ケガレを祓ってもらったお礼」として昨日の男性からもらった物だ。もちろんもうケガレが残っていないことは確認済だ。
「問屋でケガレを祓った羽織紐と、ケガレに倒れていた人間が身につけた羽織紐、どちらも同じ工房で作っていた。しかも、三春屋の若旦那もこの工房の羽織紐を手にしていた。疑うには十分だろう」
「それはたしかにそうだな」
「これを作った人間についての情報も聞いた」
昨日、ケガレを祓った男は、工房の人間と顔見知りだった。貴弥が男に聞いた情報を口にする。
――板垣慎二。
それが、羽織紐を作った男の名前だ。二十代半ばの男で、半年ほど前に滝本工房に入ったそうだ。なかなか斬新なものを作る、と工房主のお気に入りだったとか。
ただ、ここ最近、姿を見かけないらしい。
「勘づいて逃げた可能性もあると思っている。あんたなら情報を集められるだろう?」
憲久は独自に情報網を持っており情報収集が得意らしい。今日彼を訪ねたのも、報告がてら情報収集をお願いするためだった。
「わかった。引き受けた。必ず見つかるとはいいきれないが、できるだけ探してみるよ」
「悪い」
「いや、本当は俺も関わっていないといけなかった案件だからな。これくらいは手伝うよ。俺が動けなくても情報は集められる」
そう言って、憲久は貴弥に紐を返した。
「これは、タエに渡しておいてくれないか。このことを話しておいてくれ」
タエというのは憲久の助手の名だ。貴弥も慣れているのだろう。真面目な顔でうなずいた。
「わかった。瑠璃は――」
「ここで待っていればいい。少し彼女と話をしたいんだ」
瑠璃の代わりに答えたのは憲久だった。貴弥は何か言いたげだったものの、結局わかった、と言って部屋を出て行った。
瑠璃は貴弥に連れられて、郊外の一軒家を訪ねていた。
「この羽織紐にケガレが付着していた可能性が強い、と」
座布団の上に足を伸ばして座った男性が、貴弥から受け取った羽織紐をまじまじと眺める。足にぐるぐると巻かれた包帯が痛々しい。
彼こそが、貴弥と共に三春屋を訪れた祓い師、貴弥の「目」を担っていた茅木憲久だ。
年齢は二十代半ばくらい。人好きのしそうな顔をしている。
別件で怪我をしてしまい、今は自宅で療養中。杖を使えば歩けるものの、基本的には安静が必要だという。
迎えてくれた憲久は元気そうだったけれど、足の様子を見る限り、まだ復帰には時間がかかりそうだ。
「ああ。滝本工房というこういった着物のための小物を作る工房があるんだが、そこで作られた物らしい」
貴弥が集めた情報を説明する。瑠璃と貴弥は憲久の布団の側に並んで正座をし、憲久の様子を伺っていた。
憲久が見つめているのは「ケガレを祓ってもらったお礼」として昨日の男性からもらった物だ。もちろんもうケガレが残っていないことは確認済だ。
「問屋でケガレを祓った羽織紐と、ケガレに倒れていた人間が身につけた羽織紐、どちらも同じ工房で作っていた。しかも、三春屋の若旦那もこの工房の羽織紐を手にしていた。疑うには十分だろう」
「それはたしかにそうだな」
「これを作った人間についての情報も聞いた」
昨日、ケガレを祓った男は、工房の人間と顔見知りだった。貴弥が男に聞いた情報を口にする。
――板垣慎二。
それが、羽織紐を作った男の名前だ。二十代半ばの男で、半年ほど前に滝本工房に入ったそうだ。なかなか斬新なものを作る、と工房主のお気に入りだったとか。
ただ、ここ最近、姿を見かけないらしい。
「勘づいて逃げた可能性もあると思っている。あんたなら情報を集められるだろう?」
憲久は独自に情報網を持っており情報収集が得意らしい。今日彼を訪ねたのも、報告がてら情報収集をお願いするためだった。
「わかった。引き受けた。必ず見つかるとはいいきれないが、できるだけ探してみるよ」
「悪い」
「いや、本当は俺も関わっていないといけなかった案件だからな。これくらいは手伝うよ。俺が動けなくても情報は集められる」
そう言って、憲久は貴弥に紐を返した。
「これは、タエに渡しておいてくれないか。このことを話しておいてくれ」
タエというのは憲久の助手の名だ。貴弥も慣れているのだろう。真面目な顔でうなずいた。
「わかった。瑠璃は――」
「ここで待っていればいい。少し彼女と話をしたいんだ」
瑠璃の代わりに答えたのは憲久だった。貴弥は何か言いたげだったものの、結局わかった、と言って部屋を出て行った。
