没落令嬢は、再会した年下祓い師の「目」になる

(相変わらず、すごい霊力だわ……)

 おそらく貴弥は霊力をすべて祓う方に使ってしまったのだろう。
 そうとしか思えない強さだ。だって、普通、ケガレが見えない人間には術の光も見えないはずなのに、貴弥の術は違うのだから。
 ケガレを祓ったことは、貴弥も気配でわかるという。
 光が消えると、貴弥は主人に向き直った。

「ケガレは祓われました」

 ぽかんとしていた主人が、その貴弥の声にはっと我に返る。

「あ、ありがとうございます。初めて見たけど、祓い師さんってすごいんだな」

(すごいのは貴弥だからだと思う……)

 感心する問屋の主人に、貴弥は謙遜した。

「いや、そこまですごいわけではない。――それよりも主人、三春屋の若旦那が一週間前にあそこの羽織紐に関係するものを買ったりはしていないか?」

 貴弥の質問に主人がはっとする。

「たしかに、一週間前に三春屋の若旦那は、あそこにある羽織紐と同じ工房の品を手に取っていたな。ただ、あのときは若旦那の気に入った品物は一つしかなくて、新たに仕入れたら連絡するっていう話をした」

 主人の言葉に、思わず貴弥と瑠璃は顔を見合わせた。

 ――意図的にケガレを付着させた品物。

 流通させたいなら、問屋に卸すのはよい手だ。同じことを貴弥も思ったのだろう。うん、とお互いうなずき合う。
 大量に卸すと、問屋がまずケガレてしまうので最初は少しずつ。
 貴弥が問屋の主人に向き合った。

「主人。この品物を作った工房を教えてもらえないか?」
「ああ。滝本(たきもと)工房っていう昔からある工房だよ。場所は――」

 問屋の主人は、地図を取り出して場所を教えてくれた。


 


 教えられた工房の場所は問屋から歩いて行ける距離だった。
 問屋を出た二人は、早速教えられた工房に向かったのだけれど……。

「留守だったわね……」

 そう話はうまく進まない。路地の奥にぽつんとある古い建物には、問屋の主人に教えられた通りの看板がかかっていたのだけれど、中には誰もいなかった。
 人の気配はない。今日は十分だ、と切り上げること選んだのは貴弥だった。
 がっかりする瑠璃に貴弥が慰めるように声をかける。

「急だったし仕方がない。それに、さっきも言ったけど、今日は十分な収穫があった。あんたのおかげでケガレに気づくこともできたし」
「役立てたならよかったわ」
「とっても役立ってる。少し工房について話を聞いてから、今日は戻るか」

 貴弥の提案に反論はない。瑠璃はうなずいた。
 まずは近所に話を聞くのがいいだろう。
 二人で並んでしばらく歩き――瑠璃も貴弥も思わず足を止めた。

 濃いケガレの気配を感じたのだ。