瑠璃たちが訪ねたのは、小物を扱う問屋だった。
半襟や帯留めなど、着物と合わせて身につける品物が置いてある。
貴弥が声をかけると、店の奥からひょろりとした中年男性がやってくる。
「あんたが話があった祓い師さんか。……と、三春屋さんところの瑠璃ちゃん」
「お久しぶりです」
瑠璃はぺこりと頭を下げた。
割り込むように貴弥が問屋の主人に対して問いかける。
「一週間前に三春屋の佐吉さんが訪ねてきただろう? そのときのことを聞きたい」
「ああ。かまわないが」
貴弥が佐吉の行動を聞いている間、瑠璃はぼんやりと店の様子を眺める。
(なんとなく、さっきからなんとなく嫌な感じがするのよね)
ケガレが近くにあるとき覚える感覚だ。
問屋の主人が自ら買い付けたという品物が所狭しと並び、どこか店は雑多としている。
女性向けの品物が多いが、男性用の羽織紐や半襟も置いてあった。
(あ)
瑠璃は思わず息を呑む。羽織紐のあたりに黒い靄が見えた。
(そういえば、倒れる前に若旦那様も羽織紐を新調したって言っていた)
佐吉は、気に入った品物を売り出す前に自分で身につけることも多かった。
(とにかく、貴弥に知らせないと)
ケガレをまとう品物を放置するわけにはいかない。こういうときのために瑠璃はわざわざ貴弥についてきたのだ。
くいくいと目立たないように瑠璃は貴弥の羽織の袖を二回引っ張る。
貴弥がケガレを見ることができないのは秘密だ。なので、あらかじめ瑠璃がケガレを見つけたときの合図を決めていた。
貴弥はちらりと瑠璃に視線を送ると、問屋の主人に向かって言う。
「ご主人。少しいいか。この店の中にケガレがある。祓ってもかまわないか?」
「ほ、本当ですか? た、助かります」
主人があからさまに動揺した姿を見せた。まあ、普通そうだろう。
ケガレはあまりよくないものというのは常識だ。見つけたらすぐ祓うべし、と言われている。そのための祓い師だ。
「羽織紐のあたり、ですね」
瑠璃がケガレの方をみながら言うと、貴弥がうなずいた。
これでケガレの場所は伝わったはず。
「ああ。その通りだ。瑠璃。少し下がってもらえないか? 主人も」
貴弥は瑠璃と問屋の主人が少し離れたことを確認して、手をひらいて、右手をまっすぐに伸ばした。
ケガレを祓うには、霊力を源とする術を使う。
「ケガレよ、散れ」
貴弥の言葉に反応するように、彼の手の平から白い光が周囲に広がっていく。瑠璃はまぶしくて目を細めた。
ケガレが見えない問屋の主人にも、その光は見えたらしい。目を見開いている。
羽織紐にひっついていたケガレが、白い光にとけて――なくなった。
半襟や帯留めなど、着物と合わせて身につける品物が置いてある。
貴弥が声をかけると、店の奥からひょろりとした中年男性がやってくる。
「あんたが話があった祓い師さんか。……と、三春屋さんところの瑠璃ちゃん」
「お久しぶりです」
瑠璃はぺこりと頭を下げた。
割り込むように貴弥が問屋の主人に対して問いかける。
「一週間前に三春屋の佐吉さんが訪ねてきただろう? そのときのことを聞きたい」
「ああ。かまわないが」
貴弥が佐吉の行動を聞いている間、瑠璃はぼんやりと店の様子を眺める。
(なんとなく、さっきからなんとなく嫌な感じがするのよね)
ケガレが近くにあるとき覚える感覚だ。
問屋の主人が自ら買い付けたという品物が所狭しと並び、どこか店は雑多としている。
女性向けの品物が多いが、男性用の羽織紐や半襟も置いてあった。
(あ)
瑠璃は思わず息を呑む。羽織紐のあたりに黒い靄が見えた。
(そういえば、倒れる前に若旦那様も羽織紐を新調したって言っていた)
佐吉は、気に入った品物を売り出す前に自分で身につけることも多かった。
(とにかく、貴弥に知らせないと)
ケガレをまとう品物を放置するわけにはいかない。こういうときのために瑠璃はわざわざ貴弥についてきたのだ。
くいくいと目立たないように瑠璃は貴弥の羽織の袖を二回引っ張る。
貴弥がケガレを見ることができないのは秘密だ。なので、あらかじめ瑠璃がケガレを見つけたときの合図を決めていた。
貴弥はちらりと瑠璃に視線を送ると、問屋の主人に向かって言う。
「ご主人。少しいいか。この店の中にケガレがある。祓ってもかまわないか?」
「ほ、本当ですか? た、助かります」
主人があからさまに動揺した姿を見せた。まあ、普通そうだろう。
ケガレはあまりよくないものというのは常識だ。見つけたらすぐ祓うべし、と言われている。そのための祓い師だ。
「羽織紐のあたり、ですね」
瑠璃がケガレの方をみながら言うと、貴弥がうなずいた。
これでケガレの場所は伝わったはず。
「ああ。その通りだ。瑠璃。少し下がってもらえないか? 主人も」
貴弥は瑠璃と問屋の主人が少し離れたことを確認して、手をひらいて、右手をまっすぐに伸ばした。
ケガレを祓うには、霊力を源とする術を使う。
「ケガレよ、散れ」
貴弥の言葉に反応するように、彼の手の平から白い光が周囲に広がっていく。瑠璃はまぶしくて目を細めた。
ケガレが見えない問屋の主人にも、その光は見えたらしい。目を見開いている。
羽織紐にひっついていたケガレが、白い光にとけて――なくなった。
