笑わない皇子と金平糖

あれから手紙はもとより自ら刺繍した香袋など贈ってみた。
しかし、理仁のお渡りがあるどころか花の一本も返ってこない。

「もしかして私に、女としての魅力がないとか……?」

小袖を着た状態で自分の身体を見下ろしてみる。
しかし、そもそも女の魅力というものがわからない。

「いいから早く着替えてください」

考え込んでいる華子を無視し、朝顔は強引に袴を穿かせた。

「……なんか短くない?」

いつもは足よりも長く踏んで歩くほどなのに、今日は爪先が見える。

「服装の改めがあったそうで。
今日から普段着はこの袴に小袿を羽織るだけでいいそうです」

そう言いつつ朝顔が羽織らせた小袿も床につかないほど短かった。

「そうなんだ」

なんだかいつもより身軽で、ついくるくる回ってしまう。

「はい。
あ、でも、お后様からお招きされたとき等は今までどおりです」

「ふーん。
でもいいわ、ずっと古くさい衣装を着せられるのは嫌だったし。
朝顔もこっちにすればいいのに」

華子が視線を向けた朝顔は相変わらず、長い袴に何枚も重なった着物を着ており苦しそうだ。

「いえいえ。
私はもうこれに慣れておりますので」

「慣れ……」

微妙な気持ちになり、華子は自分の着物を見つめていた。

昼餉の時間までせっせと理仁への贈り物を作る。
今は髪紐を組んでいた。

「理仁様、使ってくださるかしら……」

彼を想い、リズミカルに玉を動かしていく。
華子の手の動きにあわせて、濃い藤色に銀の線の入った髪紐が少しずつ組み上がっていく。
悩みに悩んで理仁に似合いそうだと選んだ藤色は、旧姓である藤小路もかけてあった。

昼餉のあとは支度をし、皇后宮殿へと向かう。
今日はお后からお茶に招待されていた。

「えっと……」

案内されたのは西洋風の部屋で戸惑ったが、すぐに平静な顔を作る。
初めての椅子にどう座っていいかわからず困惑しながら腰を下ろすと、すぐに朝顔がさりげなく袴と小袿を整えてくれて安心した。

お茶会ももちろん西洋式で、ケーキやスコーンが目の前に並ぶ。

(母上。
なぜ西洋式の作法を花嫁修業で教えてくれなかったのですか!?)

などと今、訴えたところでどうにもならない。

とにかく粗相がないようにと周りを見たが皆、やはりこのような形式のお茶会は初めてのようで目を白黒させており、ほっとした。