天界物語①『女神アフディーの初恋』

「私は愛を司る女神、アフディー。これ少年よ、何をそう血相を変えて騒いでいるのですか」

 少年は、一瞬たじろぎましたが、目の前の少女と足元の巨大な貝殻を交互に見返すと。深いため息をつくなり、吐き捨てるように言葉を返しました。

「ばっかじゃないの、お前。女神なんかいる訳ないだろう」

 アフディー様の表情は、みるみる怒りに震え出します。
 見下す少年に怒りを覚えました。

 何か懲らしめる魔法をと指が天を差しましたが、実際それほど、驚かせるような魔法が使えず困っていました。

 しかしあることが、頭に浮かぶのです。天界の獣。それらを見せれば怯え腰を抜かすと思ったのです。

「これ少年。あまり女神を愚弄するものではないぞ、さもなければ、私を守護する召喚獣が容赦せぬのじゃ」

 少年は唾を飲みました。

「しょ、召喚獣なんて怖くないぞ」

 アフディー様は不敵に口元を歪めると、天を仰いで声をこだませました。

「いでよ。我が忠実なる召喚獣よ」

 少年はたまらず、怯えるようにぎゅっと目をつむりました。

 彼の頭の中では、三つの首を持つ地獄の番犬や、炎をまとって羽ばたく巨大な鳥が、今まさに大地を揺らして現れる光景が広がっていました。