天界物語①『女神アフディーの初恋』

 喧騒が遠ざかり、静寂が戻った教室。

 一人残された女教師は、西日に照らされた教壇の前に、彫像のように佇んでいました。

 彼女は知っていました。 アフディーがアロンに「会わなかった」のではない。 二度と「会えなかった」のだということを。

 あの時アフディーはアロンと共に、いろいろな形の「愛」を知るのですが、それ以外にも強く抱いてしまった、罪深き感情を知るのです。

 それは「恋」でした。

 相手を思いやる「愛」に対し、女神として知ってはならない、見返りを求める「恋」を抱いてしまった……。

 アフディーはそのことに胸を苦しめたのです。

 相手の存在をただ温かく見守るだけの無償の愛であれば、老いて消えゆく彼の時間を、ただ愛おしく眺めることもできたでしょう。

 けれど、あの日、泥だらけになって共に笑い合った瞬間に宿ったのは、このまま時が続けばいいと思う、身勝手な『恋心』でした。

『この人と同じ時間を生きたい』『ずっと自分のものとして傍にいたい』と願ってしまう、身勝手で愛おしい独占欲――。

 不老不死である自分が、有限の時を生きる彼に憧れ、抱いてしまった狂おしいほどの熱情に、いずれアロンだけ、自分と同じように過ごせせればいいと思ってしまう自分が怖かったのです。

 初恋という名の罪を知り、アロンを求めるあまり、顔を合わせることができなかった。

 女教師は、そんな切ない微笑みを浮かべました。