天界物語①『女神アフディーの初恋』

 彼は慌てて、努めて明るい声を張り上げました。

「アフディー明日も会えるだろう。俺たち友達になったんだ。そうだ。今度は川に遊びに行こう。俺が魚釣りを教えてやるよ」

 アフディー様は「さよならを告げるカタツムリ」を「食いしん坊のうさぎ」に手渡すと無理に作った笑顔で首を軽く降ります。

「なんでだよ。このままこの町いろよ。 もうすぐ秋祭りだってあるんだ。一緒に踊ってさ。きっと楽しいぜ」

 アフディー様は、夕陽に溶け込み、消えてしまいそうな声で話します。

「無理だよ。私はアロンと共には生きられない。不老不死である神々は、地上の生き物と共に年を重ねることはできない。これでさよならだよ」

「なんでだよ……」

 アロンの叫びは、彼女の表情を見た瞬間。切なく夕闇の中へと消えていきました。

 唇をきつく結び、声を押し殺して耐える女神の瞳から、大粒の涙が溢れ出し、夕日に光る頬を濡らしていたからです。

 情熱的な青い鳥も、静かに羽音を立てて彼女の隣に降り立ちます。

「さよならだ、アロン。私は今日という日を忘れない。ずっと、ずうっと……決して忘れないわ」

 泣きじゃくりそうな自分を必死に抑え、アロンは絞り出すような声で呟きました。

「忘れるなよ。……絶対だからな」

「ええ。約束するわ」

 悲しくも気高い約束を交わすと、アロンは先ほど拾い上げた孔雀の羽根を、彼女の手へと差し出しました。

「これ、やるよ。……俺たちの、友情の証だ」

 アフディー様はその羽根を、壊れ物を扱うようにそっと受け取りました。
 胸の奥に宿った、神々さえも知らない切なくて温かな感情。

 それを抱きしめるようにして、彼女は真珠色の光の中に溶け込み、静かに姿を消していったのでした。