天界物語①『女神アフディーの初恋』

 二人が森を進み続けると、やがて目の前に小さな川が現れました。

 そこには一本の古びた丸太が、頼りなげに橋として架けられています。

 表面には青々とした苔が生え、今にも足を滑らせそうな危うさに、アフディー様は思わず足踏みをなさいました。

 アロンは内心の恐怖を必死に押し殺すと、お手本を見せるように、慎重に丸太を渡りきります。

 向こう岸でホッと安堵の息をつくと、何事もなかったかのように、得意顔で声をかけました。

「ほら、早く来いよ」

 ですが、震える足先をそーっと差し出すアフディー様を見て、アロンはやっぱり放っておけなくなります。

 心細い表情を浮かべながらも、片手で傍らの大木をがっしりと掴むと、もう片方の手を真っ直ぐ、アフディー様へと差し出しました。

 女神の手が、少年の掌(てのひら)に触れようとした、その瞬間。頭上の「情熱的な青い鳥」が、翼を胸に当てお門違いに歌い始めました。

「ああ! なんと美しい。二人の魂が手を取り合い、荒波を越えようとしてるではないか。これはなんなのか? 友情なのか? いやこれはシェイクスピアでも表現できなかった『愛』の形ではないだろうか」

 意識させすぎるその言葉に、アフディー様の顔はみるみる「りんご」のように真っ赤に染まりました。

「う、うるさいっ。 このバカ鳥」

 彼女は悔し紛れに叫びましたが、繋ごうとした指先は、さらに激しく震えてしまうのでした。