天界物語①『女神アフディーの初恋』

 アフディー様が天高く腕を突き上げると、草原の空気が一変……するかと思いきや、ぽかぽかとした陽だまりの中に、三つの影が頼りなく現れました。

 固く目をつむり、恐ろしい怪物の咆哮を覚悟していた少年でしたが――聞こえてきたのは、「クピクピ」という愛らしい鼻を鳴らす音と、頼りない羽ばたき音だけだったのです。

 おそるおそる目を開けた少年の前に整列していたのは、一心不乱に菜の花を咀嚼(そしゃく)し続ける「食いしん坊のうさぎ」その肩には、なぜかおしゃれなポシェットが揺れています。

「ああッ、アフディー様! 私を人間界に呼んでいただけるとは、人生最高なる幸せにございます!」

 歯の浮くようなお世辞を並べ立てるのは、同色のハットを被った「情熱的な青い鳥」

 そして、呼び名だけはやたらと不気味な「さよならを告げるカタツムリ」見た目はどこからどう見ても、ただのカタツムリです。

 蝶の舞う、穏やかな陽だまり。少年は呆然と彼らを見渡しました。

 うさぎは遠くの一点を見つめたまま、機械のように菜の花を食べ続けています。

 青い鳥はこれ見よがしに羽を広げ、「私が貴方の盾となり、お守りし続けましょう!」と止まる気配もなく喋り倒しています。

 そして、一見普通のカタツムリ。

(……いや、待てよ。きっとこいつには、何か恐ろしい秘められた力があるはずだ)

 少年は期待を捨てきれず、生唾を飲み込んでじっと見つめました。