放課後、俺は魔法の練習を終えて、中庭を歩いていた。
今日はレオンが先生に呼ばれていて、練習はいつもより早く終わった。
せっかくだし、アレンとカイルがいるか探してみよう。
そう思って中庭の奥へ向かうと、木陰に二人の姿が見えた。
「あれ? アレンとカイルだ」
声をかけようとした、そのとき。
「……カイル」
アレンの声が聞こえた。
いつもより少し小さくて、真剣な声だった。
「どうした?」
「えっと……その……」
アレンは落ち着かない様子で、カイルを見上げていた。
「恋人になってから、ずっと考えてたことがあって」
「……何だ?」
「カイルと、もっと近くなりたいなって」
…………。
俺はその場で固まった。
え?
ちょっと待って。
今、アレンが何て言った?
もっと近くなりたい???
これは……これは、もしかして……!!
「……俺もだ」
カイルが静かに答えた。
アレンが顔を上げる。
「本当?」
「ああ。お前と一緒にいると、もっとそばにいたいと思う」
「……カイル」
「ただ……」
カイルは少しだけ視線をそらした。
「こういうことには、慣れていない」
「……僕もだよ」
アレンが照れくさそうに笑う。
「だから、一緒に少しずつ慣れていこう?」
その言葉に、カイルは優しく目を細めた。
「ああ」
二人はそっと手をつないだ。
アレンが一歩近づく。
カイルも、逃げずにその距離を受け入れた。
「……カイル」
「ん?」
「キスしても、いい?」
…………。
………………。
…………………えええええええ!?!?!?
俺は口を両手で押さえた。
アレンから!?
アレンから聞いた!?
待って待って待って!!
心の準備が!!
いや、俺の心の準備なんてどうでもいい!!
二人の大切な瞬間なんだから!!
カイルは驚いたように目を見開いた。
けれど、すぐにアレンの手を握り直した。
「……ああ」
その声は、いつもよりずっと優しかった。
アレンはゆっくりと顔を近づけた。
カイルも少しだけ身をかがめる。
二人は一度、照れくさそうに目を合わせた。
そして――。
そっと、唇を重ねた。
ほんの一瞬。
触れるだけの、優しいキスだった。
離れたあと、二人とも真っ赤になっていた。
「…………」
「…………」
しばらく、どちらも何も言えない。
先に口を開いたのはアレンだった。
「……えへへ」
「……何だ、その笑い方は」
「だって……嬉しくて」
アレンはつないだ手をぎゅっと握った。
「カイルと恋人になれて、本当によかった」
カイルは少し困ったように眉を下げた。
それでも、アレンの手を離さなかった。
「……俺もだ」
そして、小さく付け加える。
「これからも、そばにいろ」
アレンは満面の笑みでうなずいた。
「うん!」
…………。
………………。
尊い。
もう、それ以外の言葉が見つからない。
俺は木の陰で、静かに天を仰いだ。
推しカプが恋人になり、手をつなぎ、ついに初キスまで……。
前世の俺、聞いてくれ。
お前が好きだった物語は、今、最高の瞬間を迎えているぞ……!!
「……アステル」
「ひゃあああああっ!?」
突然、背後から声がした。
飛び上がって振り返ると、そこにはレオンが立っていた。
「レ、レオン!? いつから!?」
「今来たところだ。……何をしている?」
「な、何でもないです!!」
「……そうか」
レオンは俺の視線の先を見た。
その瞬間、木陰にいるアレンとカイルも、こちらに気づいた。
「……ミナト?」
アレンの顔が一瞬で真っ赤になった。
「えっ、もしかして……見てた?」
「…………」
俺はゆっくりと両手で顔を覆った。
「……ごめんなさい」
「い、いや! 謝らなくていいよ!」
アレンは慌てて首を振った。
「でも、その……ちょっと恥ずかしいかな……」
隣でカイルも、耳まで赤くなっている。
「……ミナト。今のことは、できれば内緒にしてくれ」
「もちろん!!」
俺は勢いよくうなずいた。
「絶対に誰にも言わない!! 二人の大切な思い出だから!!」
「……ありがとう」
アレンがほっとしたように笑った。
俺はもう一度、二人を見た。
手をつないで、照れくさそうに笑い合う二人。
昨日までと同じ二人なのに、今は少しだけ違って見える。
恋人として、二人だけの思い出を増やしていくんだ。
……よかった。
本当に、よかった。
「……アステル」
レオンが隣から声をかけた。
「帰るぞ」
「あっ、うん!」
俺は二人に手を振って、レオンの隣に並んだ。
歩きながらも、頭の中はアレンとカイルでいっぱいだった。
「……幸せそうだったな」
レオンがぽつりと言った。
「うん!! すっごく幸せそうだった!!」
俺は笑顔で答えた。
「二人がこれからもずっと幸せでいてくれたらいいな」
レオンは俺を横目で見た。
「……お前は、本当にあの二人が好きだな」
「もちろん!」
即答すると、レオンは小さく笑った。
「……そうか」
そして、ほんの少しだけ声を落とした。
「……お前にも、いつかそういう相手ができるんだろうな」
「えっ?」
俺はきょとんとした。
「俺? いやいや、ないない!!」
「……なぜ言い切れる」
「だって俺、恋愛とか全然分かんないし! 今は二人の幸せを見守るだけで十分だよ!」
レオンは何も言わなかった。
ただ、少しだけ複雑そうな顔をしていた。
俺はそれに気づかず、またアレンとカイルの話を始めた。
けれどレオンの胸には、小さな願いが浮かんでいた。
――いつか、アステルが誰かを好きになるなら。
その相手が、自分だったらいいのに。
今日はレオンが先生に呼ばれていて、練習はいつもより早く終わった。
せっかくだし、アレンとカイルがいるか探してみよう。
そう思って中庭の奥へ向かうと、木陰に二人の姿が見えた。
「あれ? アレンとカイルだ」
声をかけようとした、そのとき。
「……カイル」
アレンの声が聞こえた。
いつもより少し小さくて、真剣な声だった。
「どうした?」
「えっと……その……」
アレンは落ち着かない様子で、カイルを見上げていた。
「恋人になってから、ずっと考えてたことがあって」
「……何だ?」
「カイルと、もっと近くなりたいなって」
…………。
俺はその場で固まった。
え?
ちょっと待って。
今、アレンが何て言った?
もっと近くなりたい???
これは……これは、もしかして……!!
「……俺もだ」
カイルが静かに答えた。
アレンが顔を上げる。
「本当?」
「ああ。お前と一緒にいると、もっとそばにいたいと思う」
「……カイル」
「ただ……」
カイルは少しだけ視線をそらした。
「こういうことには、慣れていない」
「……僕もだよ」
アレンが照れくさそうに笑う。
「だから、一緒に少しずつ慣れていこう?」
その言葉に、カイルは優しく目を細めた。
「ああ」
二人はそっと手をつないだ。
アレンが一歩近づく。
カイルも、逃げずにその距離を受け入れた。
「……カイル」
「ん?」
「キスしても、いい?」
…………。
………………。
…………………えええええええ!?!?!?
俺は口を両手で押さえた。
アレンから!?
アレンから聞いた!?
待って待って待って!!
心の準備が!!
いや、俺の心の準備なんてどうでもいい!!
二人の大切な瞬間なんだから!!
カイルは驚いたように目を見開いた。
けれど、すぐにアレンの手を握り直した。
「……ああ」
その声は、いつもよりずっと優しかった。
アレンはゆっくりと顔を近づけた。
カイルも少しだけ身をかがめる。
二人は一度、照れくさそうに目を合わせた。
そして――。
そっと、唇を重ねた。
ほんの一瞬。
触れるだけの、優しいキスだった。
離れたあと、二人とも真っ赤になっていた。
「…………」
「…………」
しばらく、どちらも何も言えない。
先に口を開いたのはアレンだった。
「……えへへ」
「……何だ、その笑い方は」
「だって……嬉しくて」
アレンはつないだ手をぎゅっと握った。
「カイルと恋人になれて、本当によかった」
カイルは少し困ったように眉を下げた。
それでも、アレンの手を離さなかった。
「……俺もだ」
そして、小さく付け加える。
「これからも、そばにいろ」
アレンは満面の笑みでうなずいた。
「うん!」
…………。
………………。
尊い。
もう、それ以外の言葉が見つからない。
俺は木の陰で、静かに天を仰いだ。
推しカプが恋人になり、手をつなぎ、ついに初キスまで……。
前世の俺、聞いてくれ。
お前が好きだった物語は、今、最高の瞬間を迎えているぞ……!!
「……アステル」
「ひゃあああああっ!?」
突然、背後から声がした。
飛び上がって振り返ると、そこにはレオンが立っていた。
「レ、レオン!? いつから!?」
「今来たところだ。……何をしている?」
「な、何でもないです!!」
「……そうか」
レオンは俺の視線の先を見た。
その瞬間、木陰にいるアレンとカイルも、こちらに気づいた。
「……ミナト?」
アレンの顔が一瞬で真っ赤になった。
「えっ、もしかして……見てた?」
「…………」
俺はゆっくりと両手で顔を覆った。
「……ごめんなさい」
「い、いや! 謝らなくていいよ!」
アレンは慌てて首を振った。
「でも、その……ちょっと恥ずかしいかな……」
隣でカイルも、耳まで赤くなっている。
「……ミナト。今のことは、できれば内緒にしてくれ」
「もちろん!!」
俺は勢いよくうなずいた。
「絶対に誰にも言わない!! 二人の大切な思い出だから!!」
「……ありがとう」
アレンがほっとしたように笑った。
俺はもう一度、二人を見た。
手をつないで、照れくさそうに笑い合う二人。
昨日までと同じ二人なのに、今は少しだけ違って見える。
恋人として、二人だけの思い出を増やしていくんだ。
……よかった。
本当に、よかった。
「……アステル」
レオンが隣から声をかけた。
「帰るぞ」
「あっ、うん!」
俺は二人に手を振って、レオンの隣に並んだ。
歩きながらも、頭の中はアレンとカイルでいっぱいだった。
「……幸せそうだったな」
レオンがぽつりと言った。
「うん!! すっごく幸せそうだった!!」
俺は笑顔で答えた。
「二人がこれからもずっと幸せでいてくれたらいいな」
レオンは俺を横目で見た。
「……お前は、本当にあの二人が好きだな」
「もちろん!」
即答すると、レオンは小さく笑った。
「……そうか」
そして、ほんの少しだけ声を落とした。
「……お前にも、いつかそういう相手ができるんだろうな」
「えっ?」
俺はきょとんとした。
「俺? いやいや、ないない!!」
「……なぜ言い切れる」
「だって俺、恋愛とか全然分かんないし! 今は二人の幸せを見守るだけで十分だよ!」
レオンは何も言わなかった。
ただ、少しだけ複雑そうな顔をしていた。
俺はそれに気づかず、またアレンとカイルの話を始めた。
けれどレオンの胸には、小さな願いが浮かんでいた。
――いつか、アステルが誰かを好きになるなら。
その相手が、自分だったらいいのに。

