男たちはそれを「守ってやりたい」と形容し女たちは「無難」と評しそうだ。
だが、それは仮初めの皮にすぎない。
本来の彼女は視線を絡めとられた者が一歩、また一歩と道を踏み外してしまうような艶と妖を孕んだ美しすぎる存在だった。
――ありのままの姿を披露し、誇らしげに恋した男の腕に寄り添う双子の姉。
その光景を目にしたとき、直子の胸に去来した感情はひとつの言葉では言い表せなかった。
羨望でも、嫉妬でも、諦念でもある。
夜会の灯りはガス灯で、淡く、どこか夢の中のように揺れていた。
洋装と和装が入り混じる大正の社交場で、姉は惜しげもなく己の美を晒していた。
「直子。着飾ることに滑稽なんてものはない。ただ俺が大切な花嫁を着飾りたいだけだ。俺のわがままをだと思って、買い物に付き合ってくれ」
影一郎の声に、彼女は足を止めた。
彼は少し困ったように眉を寄せている。
それは取り繕いのない本音だった。
鬼の次期当主としてではなく、一人の男としての不器用な願い。
その後、影一郎は女の簪など本来は何の興味も持たぬくせに市井の店から老舗まで歩き回り、考えうる限りの簪を買い集めた。
