毒餌として捨てられた妖狐は、鬼神様の初恋でした

 ましてや人間との混血など、穢れだと切り捨てる。

 実情は直の語る通り、鬼の一族は他の種族との共存とは程遠く孤立していた。

 影一郎は俯いた。

 蔵の中で、雪の降る音だけが続く。

「雪は明日までは生きてみて。今宵起きる不幸が貴方の幸せになるかもしれないから」

 直は腕を怪我したのか左側の二の腕をギュッと握り締めながら囁く。

(今宵起きる騒ぎの中、絶対に逃げ出すのよ雪⋯⋯)

 影一郎はこれから何が起きるかわからないけれど、その一言が、胸の奥に深く落ちた。

 蔵の扉が、きい、と軋む音を立てた。


 冷たい外気と一緒に背の高い影が差し込んだ。

 妖狐の一族の次期当主、凛介だった。