午前中はあんなに晴れてたのに…
放課後、急に雨が降り出した。
周りの生徒たちの色とりどりの傘に紛れて、俺も傘を広げる。
持ってきておいて正解だったな。
絶対来る。勇崎が後から絶対来る。
そろそろサッカー部、内練終わった頃だから。
そして、絶対傘は持ってない。
なんで?
…勇崎だからだ。
一緒に傘に入れるチャンスでしかない。
駅に向かって歩くことしばらく、派手な足音が聞こえてきた。
パシャパシャパシャパシャ!
勇崎だ。分かっててもドキンとする。
走ること、秒で決めたんだろうな。
あいつらしいな。
几帳面な俺とは対照的で。
漢字思い切り笑って、何も考えずに動き回る、人たらし…そんなやつだから、目が離せないんだよな。
勇崎が俺に気がついた。
「おーい、利旺!」
「おぅ。勇崎、傘は?」
見りゃわかる。
「……忘れた。」
「だよな。」
「駅まで入ってけよ。」
「やった!マジでサンキュー! もうズボンの裾とかエグくって!……でも利旺、絶対いると思った。」
俺の口元緩んでないといいんだけど。
勇崎の腕を大胆なくらいに引いて、自分の傘の中に引き寄せた。
こいつの前では俺の身体はバグるんだ。
黒い傘に俺たちは収まった。
肩が…触れている。
「せまい……」
「物理的に仕方ない。」
…から、嬉しい。
勇崎の方へ顔を向ける。
近い…思ったより近すぎる。
勇崎がまっすぐに視線を合わせてくる。
思わず顔を引いて目を伏せた。
あわてて、何かないかと言葉を探す。
「……ここんところサッカー上達したな。」
「え?分かっちゃった?
最近マジ、ファーストタッチがいい感じにハマって嬉しいんだけど!見る目あるな〜!利旺!」
「…勇崎は目が離せない。」
本音がポロリとこぼれた。
雨音がかき消してくれますように。
勇崎は足を止め、傘の中でさらに寄ってきた。
肩と肩がさらに寄る。
…勇崎の…あたたかさだ…。
こいつを守りたい。
強い感情が湧き出た。
いつのまにか傘を勇崎の方に傾けていたらしい。
「そんなにこっちに寄せたら、利旺が濡れるだろ!」
右腕がみるみるうちに濡れていく。
肩にかけたバッグから雨水が滴り落ちて。
制服のシャツが腕にまとわりつく。
そんなのどうでもいいんだよ。
左肩のあたたかさがあればいいんだ。
「元々濡れてたよ。」
「嘘つけ、傘貸せ、俺が持つ!」
勇崎が両手で傘の柄を引っ張る。
「お前を濡らすわけにはいかねーから!」
傘が勇崎の方へ傾き、逆に俺が濡れる。
やっぱりアホだなこいつ。
…俺がお前を濡らしたくないんだよ。
「俺の傘だから。」
「持つったら!」
「大人しく入ってろ。」
俺が傘を引っ張り返す。
傾きすぎて今度は勇崎が濡れる。
二人で押し合いへし合い、奪い合いになった。
結局、傘なんてもうどうでも良くなった。
勇崎は大口を開けて笑っている。
こいつが笑ってるのを見れるんなら、ほんと、どうでもいい。
駅まで猛ダッシュした。
空から、雨。
足元には、たくさんの水たまり。
行きゆく人々の傘をよけながら。
笑いながら、ふざけ合いながら。
髪もカバンもシャツも、靴の中まで濡らしながら走った。
びしょびしょになって駅に着く。
勇崎が自分の頭をわしゃわしゃと手で整えている。拭くものを持っているわけがない。
…勇崎だからだ。
俺がハンドタオルを取り出す。
今度は拭いてやるチャンスだ。
堂々と勇崎に触れる。
緊張しかない。
「勇崎、スポーツタオルとかねぇの?」
「体育館に置いてきちゃった。」
「やっぱね。」
勇崎を引き寄せ、ゴシゴシと拭き始める。
髪が、うなじが指に触れる。
手がうまく動かない。
「なんだよ、やめろよ、自分のこと拭けよ。」
「別に。黙って拭かれとけば?」
改札の電光掲示板が電車の到着を告げる。
「あ、急行来る。それ、貸すから。じゃぁ、また明日な!」
ハンドタオルと傘を押し付けて、ホームに急ぐ。
「あ!待てよ!」
ピンポーン♪
後ろからチャイムが聞こえる。
勇崎が改札で引っかかっている。
アホだな、あいつ。
ハンドタオルと傘で両手ふさがったまま俺のこと追っかけようとしたのか。
「くそ〜、風邪引くなよ!俺はバカだから引かないのに!」
勇崎のクソでかい声。
周りの人々が振り向く。
タタン、タタンと電車が揺れる。
勇崎の頭の形が、うなじの素肌が、指の感触に残っていて、つり革をつかむ気になれなかった。
…お前、バカじゃないよ。 俺を翻弄する天才だよ。
風邪、ひくなよ。
明日も会えるのか。 学校って最高かよ。
放課後、急に雨が降り出した。
周りの生徒たちの色とりどりの傘に紛れて、俺も傘を広げる。
持ってきておいて正解だったな。
絶対来る。勇崎が後から絶対来る。
そろそろサッカー部、内練終わった頃だから。
そして、絶対傘は持ってない。
なんで?
…勇崎だからだ。
一緒に傘に入れるチャンスでしかない。
駅に向かって歩くことしばらく、派手な足音が聞こえてきた。
パシャパシャパシャパシャ!
勇崎だ。分かっててもドキンとする。
走ること、秒で決めたんだろうな。
あいつらしいな。
几帳面な俺とは対照的で。
漢字思い切り笑って、何も考えずに動き回る、人たらし…そんなやつだから、目が離せないんだよな。
勇崎が俺に気がついた。
「おーい、利旺!」
「おぅ。勇崎、傘は?」
見りゃわかる。
「……忘れた。」
「だよな。」
「駅まで入ってけよ。」
「やった!マジでサンキュー! もうズボンの裾とかエグくって!……でも利旺、絶対いると思った。」
俺の口元緩んでないといいんだけど。
勇崎の腕を大胆なくらいに引いて、自分の傘の中に引き寄せた。
こいつの前では俺の身体はバグるんだ。
黒い傘に俺たちは収まった。
肩が…触れている。
「せまい……」
「物理的に仕方ない。」
…から、嬉しい。
勇崎の方へ顔を向ける。
近い…思ったより近すぎる。
勇崎がまっすぐに視線を合わせてくる。
思わず顔を引いて目を伏せた。
あわてて、何かないかと言葉を探す。
「……ここんところサッカー上達したな。」
「え?分かっちゃった?
最近マジ、ファーストタッチがいい感じにハマって嬉しいんだけど!見る目あるな〜!利旺!」
「…勇崎は目が離せない。」
本音がポロリとこぼれた。
雨音がかき消してくれますように。
勇崎は足を止め、傘の中でさらに寄ってきた。
肩と肩がさらに寄る。
…勇崎の…あたたかさだ…。
こいつを守りたい。
強い感情が湧き出た。
いつのまにか傘を勇崎の方に傾けていたらしい。
「そんなにこっちに寄せたら、利旺が濡れるだろ!」
右腕がみるみるうちに濡れていく。
肩にかけたバッグから雨水が滴り落ちて。
制服のシャツが腕にまとわりつく。
そんなのどうでもいいんだよ。
左肩のあたたかさがあればいいんだ。
「元々濡れてたよ。」
「嘘つけ、傘貸せ、俺が持つ!」
勇崎が両手で傘の柄を引っ張る。
「お前を濡らすわけにはいかねーから!」
傘が勇崎の方へ傾き、逆に俺が濡れる。
やっぱりアホだなこいつ。
…俺がお前を濡らしたくないんだよ。
「俺の傘だから。」
「持つったら!」
「大人しく入ってろ。」
俺が傘を引っ張り返す。
傾きすぎて今度は勇崎が濡れる。
二人で押し合いへし合い、奪い合いになった。
結局、傘なんてもうどうでも良くなった。
勇崎は大口を開けて笑っている。
こいつが笑ってるのを見れるんなら、ほんと、どうでもいい。
駅まで猛ダッシュした。
空から、雨。
足元には、たくさんの水たまり。
行きゆく人々の傘をよけながら。
笑いながら、ふざけ合いながら。
髪もカバンもシャツも、靴の中まで濡らしながら走った。
びしょびしょになって駅に着く。
勇崎が自分の頭をわしゃわしゃと手で整えている。拭くものを持っているわけがない。
…勇崎だからだ。
俺がハンドタオルを取り出す。
今度は拭いてやるチャンスだ。
堂々と勇崎に触れる。
緊張しかない。
「勇崎、スポーツタオルとかねぇの?」
「体育館に置いてきちゃった。」
「やっぱね。」
勇崎を引き寄せ、ゴシゴシと拭き始める。
髪が、うなじが指に触れる。
手がうまく動かない。
「なんだよ、やめろよ、自分のこと拭けよ。」
「別に。黙って拭かれとけば?」
改札の電光掲示板が電車の到着を告げる。
「あ、急行来る。それ、貸すから。じゃぁ、また明日な!」
ハンドタオルと傘を押し付けて、ホームに急ぐ。
「あ!待てよ!」
ピンポーン♪
後ろからチャイムが聞こえる。
勇崎が改札で引っかかっている。
アホだな、あいつ。
ハンドタオルと傘で両手ふさがったまま俺のこと追っかけようとしたのか。
「くそ〜、風邪引くなよ!俺はバカだから引かないのに!」
勇崎のクソでかい声。
周りの人々が振り向く。
タタン、タタンと電車が揺れる。
勇崎の頭の形が、うなじの素肌が、指の感触に残っていて、つり革をつかむ気になれなかった。
…お前、バカじゃないよ。 俺を翻弄する天才だよ。
風邪、ひくなよ。
明日も会えるのか。 学校って最高かよ。


